―― 効果のほどは、いかがでしょうか。
田中氏 広告宣伝費で見ても、それほど多くの投資はしていませんが、想定より多いぐらいの勢いで、ユーザーは増えています。
―― 規模感としては、どのくらいを目指しているのでしょうか。
田中氏 今、固定通信のユーザーが30万人ぐらいいて、まずはそこと同程度を目指したいと思っています。固定の方は、比較的年齢が上の方も多いので、格安SIMを別に持っている率は低い。そんな中で、家計の中での通信料を下げるために、格安SIM、格安スマホを選択肢として考える人が増えてきています。そこが浸透してくれば、固定の契約は維持したまま、新しいサービスを使ってもらえます。DTIのユーザー数としては、2倍に増える可能性があるということです。
―― 今はSIMカードの単体販売ですが、端末をセットで売っていくということはありえるのでしょうか。先ほどの広告手法も使えそうですが……。
田中氏 ありえますね。他社さんの売っているハードウェアも、一時期よりは売れるようになっています。ただ、うちが横並びのことをやっても、全部がレッドオーシャンです。ハードウェアは特に差別化要因がないので、ユーザーニーズを見ながらですね。工夫できるところがあればやっていきたいと思います。また、グループとして見れば、垂直統合的に端末とセットで販売しているところもあるので、そちらに誘導するということもできます。
―― 通信速度に関しては、いかがですか。
田中氏 非常に安定していて、昼夜問わず、同じ速度が出るように意識しています。トラフィックの状況を確認できるツールも、フリービット側から提供していますし、どのくらいの速度まで落ちると、体感で使い心地が悪くなるのかというようなことも(DTI側に)教えています。
―― 比率としては、データSIMが多いのでしょうか。
田中氏 まだまだデータですね。ですが、MNPしてくれるユーザーも増やしたいと考えています。MNPのしやすさという点では、他社に劣っているので、そこは早く対応していくようにします。
―― 最後に、DTIとして、使命のようなものがあれば教えてください。フリービットモバイルでは、「スマホを変えるスマホ」のように壮大な目標が掲げられていましたが、お話を聞いていると、非常に現実的で(笑)。何か大きな目標があれば教えてください。
田中氏 DTIとして、レッドオーシャンにあえて突っ込んでいるのは、業界全体として、大手キャリア3社のサービスではなく、もっと割安で、手軽に使えるところがあったらいいと考えているからです。その領域を、とにかく大きくするのが、フリービットとしての使命で、それをやる上で、DTIも重要な戦略を担う会社の1つです。
また、フリービットとしての立ち位置は、freebit mobileがあったころから変わっていません。トーンモバイルでも、DTIでも、(MVNEを利用する)U-mobileでもいいので、ユーザーを増やしてほしいと考えています。
垂直統合を志向したfreebit mobileや、速度を絞ったServersMan SIMを展開していたフリービットグループにとっては、DTI SIMが、ある意味、最初の“正攻法”ともいえる。LTEの速度を抑えず、低価格を訴求するというのは、MVNOの王道だ。後発で新規に始めたDTI SIMだが、現状の競争環境を考えると、この形が正解だった印象を受ける。
もっとも、価格競争には限界もある。現状では最安値を打ち出せているが、追随してくる会社が増えれば、さらなる消耗戦になりかねない。マーケティング手法に独自性があるのは確かだが、今後は、技術的、サービス的に、何らかの差別化を打ち出す必要性が出てくるかもしれない。
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