ネットワークから漁業まで――ドコモ東北支社の震災復興への取り組み

» 2016年03月11日 16時30分 公開

 東日本大震災から丸5年を迎えた。東北地方は甚大な被害を受け、当時は日本国内のみならず、世界中から復興支援が行われた。その結果復興は着実に進んでいるものの、6年目を迎える今、震災の風化が懸念されつつある。

 そのような現状の中、NTTドコモ東北支社は10日、「ドコモ 東北復興支援の会」を開催した。「震災を風化させず、継続的かつ具体的に東北復興支援に取り組む姿勢を新たにすることを目的」として、2012年から継続的に開催している会だ。

ドコモ東北 NTTドコモ東北支社で開催された「ドコモ 東北復興支援の会」

 同会ではあわせて、ドコモとドコモグループ社員による「東北応援社員募金」の寄付先自治体を募集することや、東北の漁業にICTを活用した新たな+d案件について発表された。

東北復興新生支援室による震災5年目までの取り組み

 会を主催する東北復興新生支援室は2011年12月に設置され、継続的な復興支援活動で地域の活性化に貢献してきた。

 震災から5年がたつ2016年、「docomo東北復興・新生支援 笑顔の架け橋 Rainbowプロジェクト」のサイトをリニューアル。さらにポジティブなメッセージで共感してもらい、風化を防ぐためにテーマソング「LIFE!!」が作られた。

ドコモ東北 「LIFE!!」は「笑顔の架け橋 Rainbowプロジェクト」サイト内で視聴できる

 会場では作詞を担当したプリンセス プリンセスの富田京子さんがビデオメッセージで「ずっとPVの映像を見ながら家で作業をしていたので、登場する人たちがみんな親戚のような気持ち。東北の人たちだけでなく、いろいろな人たちに聞いてほしい」とコメントした。また、作詞・歌を担当した天月-あまつき-さんが登壇し、「東北の皆さんの力になれるのであれば全力でやりたいと思い、精いっぱい曲を作った。この曲は聞いた人が前向きになれる、温かいものであってほしい」と思いを語った。

ドコモ東北ドコモ東北 プリンセス プリンセスの富田京子さんはビデオでメッセージを送った(写真=左)。ボーカリストの天月-あまつき-さん(写真=右)

 2011年の震災以降、復興を取り巻く環境に変化が起きている。震災直後から4年間は、建物や公共インフラなどハードウェア面の復旧が重視された。

ドコモ東北 「復旧期」は2011〜2013年の3年間。2014〜2017年は「再生期」にあたり、2018〜2020年の「発展期」に続いていく

 ドコモもLTEネットワークのさらなる強化に取り組んできた。大ゾーン基地局のLTE対応や、中ゾーン基地局の全国展開など、災害時でもつながるネットワークを構築。地震科学探査機構(JESTA)と協力した地震予測検証や、基地局へカメラを設置す津波を監視する取り組みも進めていく。

ドコモ東北 地震予測、津波監視システムは2016年度内に全国16箇所の基地局に機器を設置する予定
ドコモ東北 2016年3月からは世界初となる複数ベンダ構成の運用を始める

 しかし現在は産業・なりわいの再生など、ソフトウェア面での復興も重要視されるようになってきた。そこで東北復興新生支援室が取り組むのが、第一次産業との+dだ。

第一次産業+dの挑戦と、社員参加型の取り組み

 2015年度は産業振興・地方創生を目指し、+dの取り組みを実施。宮城県東松島市の牡蠣・海苔養殖漁場では、モバイルとICTを活用した実証実験を開始したことを発表した。

 養殖業において、海水温は品質を左右する重要な要素だという。そこで海上に浮かべるブイに水温センサーと通信機能を搭載し、データをドコモのクラウドサーバにアップ。水温の情報をスマートフォンのアプリからリアルタイムで把握できる仕組みを地元企業と協力して開発、実験していく。

ドコモ東北 漁業従事者がスマートフォンやタブレット端末からアプリを介して、水温管理できるよう目指す

 これまで漁師の勘や経験に頼ってきた技術を、ICTによって可視化し、収穫量と品質の安定化につなげていく。さらには「漁業における所得を向上させ、“スマートでかっこいい漁師”として、魅力的な職業にしていく」(東北復興新生支援室の佐藤一夫氏)ことを目指すという。

 ドコモ社内の施策としては、ドコモとグループ社員による「東北応援社員募金」で支援してきた。2016年4月1日からは寄付先となる自治体を募集することを発表。募集期間は2016年6月30日までで、1件あたり最大1000万円の寄付を行う予定だ。

ドコモ東北 2015年度には被災地自治体等に対して総額約6480万円の支援を実施した

 東北復興新生支援室は、2014度に2020年までの活動継続が決定している。今後も「さまざまなパートナーの皆さまと協力し、事業活動を通じた被災地の社会的課題解決に向けて取り組んでいく」(東北復興新生支援室長の高木一裕氏)という。

ドコモ東北 東北復興新生支援室の高木室長

青山支社長「5年前の御礼を込め、今後も実践力のある体制を作っていく」

 首都直下型地震や南海トラフ地震など、将来的に巨大地震が他地域で起きる可能性は高い。震災復興支援はもちろん続けていく必要があるが、東日本大震災の経験を「もしも」の際にどのように生かすかについても考えなければならない。

 防災の取り組みについてNTTドコモ東北支社長の青山幸二氏は、「防災に終わりはなく、常日頃から取り組むことに意義がある」とコメント。「今後の巨大地震に備えるためにも、東日本大震災を通じて高まった防災意識は風化させてはならない。ドコモ東北グループは5年前の(さまざまな支援を受けた)御礼を込めて、有事の際に効果的な人道支援が行えるよう実践力のある体制を作っていきたい」と意気込みを語った。

ドコモ東北 ドコモ東北の青山支社長

 具体的には、社員による防災士の資格取得を独自に促進していくという。「ドコモ東北グループだからこそ防災の重要性を理解している。きっと現場でも活躍できるはず」と期待を込めた。

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