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» 2016年03月22日 22時11分 公開

進化と拡大の中でのダウンサイジング――iPhone SEと新型iPad ProにAppleの原点を見た (1/3)

Apple本社の通称“キャンパス”のタウンホールで、同社の新商品発表会が開催された。このタウンホールで開催された最後のイベントで、iPhone SEと9.7型版iPad ProというAppleの原点を感じさせる製品が発表されたことに、同社の変わらぬ哲学を垣間見た気がした。

[神尾寿,ITmedia]

 カリフォルニア州クパチーノにあるApple本社、通称“キャンパス”といえば、誰もが認める「テクノロジーの聖地」の1つである。Appleはここで多くの革新的な製品とサービスを生み出し、控えめにいって世界を変えていった。イノベーションの震源地。それこそがキャンパスなのだ。

 そのキャンパス内にあるタウンホールは、今では歴史的モニュメントと同じ価値を持つ。2001年10月、ここで故スティーブ・ジョブズが「iPod」を発表し、音楽とITの世界を一変させた。このiPod発表は突撃のラッパとなり、2000年代におけるAppleの快進撃に続くものになる。iPodから始まり、iPhone、iPadにつながっていくデジタルライフ革命は、ここから始まったのだ。

Apple
Apple Apple本社キャンパス内にあるタウンホールが、今回のスペシャルイベントの会場。ここはAppleの歴史にとっても、とても重要な場所になっている

 2016年3月16日、そのApple本社“キャンパス”のタウンホールで、同社の新商品発表会が開催された。ここ最近、Appleの新商品発表会は近隣の大きな会場に世界中から主要なメディア関係者やパートナー企業のVIPを集めて大々的に行われることが多いのだが、今回はタウンホールを使うということで招待者はメディア関係者のみ。Apple幹部も近くの席に座る中でのアットホームな開催となった。

社会的責任と真剣に向き合うApple

Apple Apple CEOのティム・クック氏

 Appleの新商品発表会といえば、冒頭に「昨今の成長と好調について話す」のがセオリー。しかし今回は少々、趣が異なっていた。壇上にあがった米Appleのティム・クックCEOは、会場からの拍手と歓声に手を振って応えたところまではいつも通りであったが、その後、真剣な表情になり、「Appleはあなたがプライバシーを守るのを助ける責任がある」と告げた。

 既報の通り、Appleは、2016年2月に米司法当局から求められた「iPhoneのプライバシーロック解除ツールをFBIに提供すること」に対して公式に拒否する姿勢を取っている。これは例え国家の公共安全の確保のためとはいえ、iPhoneの強固なセキュリティにバックドアを設ければ、それが将来的に善良なユーザーにとっての脅威になるリスクは避けられないという主張だ。

 「われわれは、自らの国の政府と対立する立場になるとは思ってもみなかった。しかしAppleは、ユーザー自身がデータとプライバシーを守ることを助けなければならない。その責務から逃げ出すことはしない」(クック氏)

 クック氏の言葉は、これまでの同社の姿勢と何ら変わることなく、その主張を再確認するものだった。しかし、Appleがこれまで通り「ユーザーのプライバシーを最優先にする」と宣言すると、米国メディアを中心とした会場のジャーナリストから力強い拍手が送られた。

 続けてもう2つ、CSR(企業の社会的貢献)関連の話題が続いた。

 1つは環境問題。Appleは単一ブランドとしては世界最大のIT機器メーカーであり、iPhone/iPadなどスマートデバイスからMac製品まで数多くの端末が世界中に普及している。

 「現在、(ユーザーが)利用中の製品だけでも約10億台が稼働している。これらは今ではiCloudに接続されており、さまざまなサービスを受けている」(クック氏)

 Appleの場合、製品を設計・製造して終わり、ではない。同社独自のクラウドサービスであるiCloudは、メール/メッセージの送受信から始まり、写真の保管と共有、音楽・映像などのコンテンツ配信、アプリのライセンス管理やユーザーデータの管理など、高度かつ膨大なサービスを約10億台のApple製品に対して提供しているのだ。無論、それを維持・運用するにはエネルギーが必要になる。

Apple Apple 環境イニシアティブ担当バイスプレジデントのリサ・ジャクソン氏

 クック氏に代わって壇上にあがったApple 環境イニシアティブ担当バイスプレジデントのリサ・ジャクソン氏は、「Appleでは再生可能エネルギーの活用にとても注力している」と話す。

 「最終的にはAppleの使用する施設では、再生可能エネルギーの利用率を100%にしたい。既にワールドワイドでの利用率は93%に達しており、各国のApple Storeやオフィスで使用する電力はもちろん、iCloudのデータセンターでも再生可能エネルギーの活用を進めている」(ジャクソン氏)

 独自に再生可能エネルギーを作る取り組みも行っており、中国の荒野に大規模な太陽光発電の施設を作り、シンガポールではビル屋上に太陽光パネルを設置して発電をしているという。

Apple Appleでは再生可能エネルギーの使用率100%を目指している
Apple 中国ではメガソーラーを敷設して独自に発電も実施
Apple iCloudのデータセンターなどAppleの製品が使用するサービスでも、再生可能エネルギーの活用は進んでいる

 さらにAppleでは、Apple製品のリサイクルをより効果的に進めるため、リサイクルプロジェクト「Renew」を立ち上げる。

 「もともとApple製品はリサイクルを前提にデザインしてたが、Renewでは新たにiPhoneを自動で解体するロボット『Liam』を作った」(ジャクソン氏)

 Liamは不要になったiPhoneを自動で解体し、再利用できる部品を選別して取り出すものだという。これまで人の手が必要だったリサイクルを自動化し、再利用率を向上することが狙いだ。

Apple iPhoneのリサイクルロボット「Liam」。Appleが開発した環境貢献のためのロボット事業だ

 続けて発表されたのが、医療・ヘルスケア分野での取り組みだ。

Apple Apple チーフオペレーティングオフィサーのジェフ・ウィリアムズ氏

 Appleでは2015年、iPhoneやApple Watchが収集するヘルスモニタリングデータを臨床研究に役立てるための「Research Kit」を投入した。これは米国をはじめ世界各国の医療研究の現場で利用されており、「パーキンソン病の研究など先進高度医療の分野で多くの研究医に活用されている」(Apple チーフオペレーティングオフィサーのジェフ・ウィリアムズ氏)のだ。

 「このResearch Kitを提供する中で、iPhoneとApple Watchを活用した医療分野での身体モニタリング機能やデータ分析機能が個人の健康管理やリハビリテーションなどにも有用なことが分かった。そこで自身の健康を管理するためのフレームワークとして新たにCareKitを開発した」(ウィリアムズ氏)

 CareKitでは薬の服用や理学療法の管理を行うほか、日々の治療やリハビリテーションの効果を可視化する機能などが用意されている。これらを病院と患者が活用することで、より効果的な治療を行っていくものだ。CareKit自体はフレームワークなので、今後、さまざまな病院からこれを活用したアプリやサービスが提供される予定だという。

Apple
Apple 医療分野ではResearch Kitに加えて、CareKitを開発。先端医療研究や治療・リハビリに関与している
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