国内で販売されているSIMロックフリースマホの多くは、NTTドコモの回線を借りている格安SIMのほか、ソフトバンクやY!mobileなどLTE+W-CDMAのネットワークを提供している事業者のSIMで利用できるように設計されている。ただし、実際に高速かつ広いエリアで利用するには、SIMロックフリースマホがNTTドコモやソフトバンク、Y!mobileが提供している電波の周波数帯に対応している必要がある。これら各社周波数帯への対応状況について見ていこう。
まず対応通信速度と高音質通話のVoLTE対応、SIMサイズについて比較した。通信速度は端末が処理できる最大速度で、実際の通信速度は電波状況や利用する携帯電話会社のネットワークの混雑次第となる。実際には100Mbps出ること自体がまれだ。
Nexus 6PとNexus 5Xの最大通信速度が300Mbpsなのは、キャリアアグリゲーション対応により、複数の周波数帯の回線を同時に利用できるからだ。実際に300Mbpsで通信できることはまずないが、混雑するイベント会場でも快適に通信できる可能性が高くなる。また、これら2機種は高音質通話のVoLTEにも対応している。
SIMスロットは大半がnanoSIMを採用している。2スロットモデルもあるが、日本では同時に1つのSIMしか利用できない。2つのSIMを同時に利用できるのは、片方に海外のGSMネットワーク対応SIMを入れた場合だけだ。
通信速度(下り/上り) | キャリアアグリゲーション | VoLTE | 対応SIM | |
---|---|---|---|---|
Nexus 6P | 300Mbps/50Mbps | ○ | ○ | nanoSIM |
Nexus 5X | 300Mbps/50Mbps | ○ | ○ | nanoSIM |
ZenFone Zoom(ZX551M) | 150Mbps/50Mbps | − | − | microSIM |
ZenFone 2 Laser(ZE601KL) | 150Mbps/50Mbps | − | − | microSIM×2 |
Mate S | 150Mbps/50Mbps | − | − | nanoSIM |
Desire EYE | 150Mbps/50Mbps | − | − | nanoSIM |
各端末の対応回線と対応周波数帯について見ていこう。周波数帯の表記は日本の総務省のものを用いている。なお、SIMロックフリースマホのカタログでは2.0GHz帯(Band1)ではなく2100MHz(Band1)など、LTEやW-CDMAの規格を定めた3GPPの用いる表記を記載していることが多い。この場合はBandの表記が同じなら同じ周波数帯を指していると判断すればいい。
LTE | W-CDMA | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2.0GHz帯(Band1) | 1.7GHz帯(Band3) | 1.5GHz帯(Band21) | 800MHz帯(Band19) | 700MHz帯(Band28) | 2.0GHz帯(Band1) | 800MHz帯(Band6/19) | |
Nexus 6P | ○ | ○ | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
Nexus 5X | ○ | ○ | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
ZenFone Zoom(ZX551ML) | ○ | ○ | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
ZenFone 2 Laser(ZE601KL) | ○ | ○ | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
Mate S | ○ | ○ | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
Desire EYE | ○ | ○ | − | ○ | ○ | ○ | ○ |
LTE | AXGP(TD-LTE) | W-CDMA | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2.0GHz帯(Band1) | 1.7GHz帯(Band3) | 900MHz帯(Band8) | 2.5GHz帯(Band41) | 2.0GHz帯(Band1) | 1.5GHz帯(Band11) | 900MHz帯(Band8) | |||
Nexus 6P | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | − | ○ | ||
Nexus 5X | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | − | ○ | ||
ZenFone Zoom(ZX551ML) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | − | ○ | ||
ZenFone 2 Laser(ZE601KL) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | − | ○ | ||
Mate S | ○ | ○ | ○ | − | ○ | − | ○ | ||
Desire EYE | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | − | ○ | ||
多くの格安SIMが利用しているNTTドコモのネットワークだが、いずれの端末も多くのエリアをカバーする2.0GHz帯と、郊外や山間部をカバーする800MHz帯に対応している。また、東名阪エリアで利用されている高速150Mbpsの1.7GHz帯にも全機種対応している。ドコモの回線を利用した格安SIMなら、どの端末を使っても困ることはないといっていいだろう。
次にソフトバンク、Y!mobileのネットワークだが、こちらも素ような2.0GHz帯と1.7GHz帯に加えて、同社がプラチナバンドと呼ぶ郊外や山間部の多くをカバーする900MHz帯に対応している。また、3万円台のミドルクラスにはなかったが、Mate S以外の5機種は、下り最大165MbpsのAXGP(TD-LTE)2.5GHz帯に対応しているので、Y!mobileのSIMを利用するときに高速化が期待できる。
今回の比較した6機種で最も性能が高く、スマホとしての品質が高かったのはNexus 6Pだ。やや大きくUSB-C採用や最新OSへの更新が頻繁にあるなど初心者向けではないが、とにかくハイエンドが欲しい人にお勧めしたい。同様に、ZenFone Zoom(ZX551ML)もやや大きく重たいが、それでもとにかく高性能かつカメラ機能にこだわる人にお勧めだ。
手頃で使いやすい機種としては、軽量かつ最新仕様のNeuxs 5X、高級感があり指紋認証にも対応したMate S、防水・防じんや高音質スピーカーなどを搭載したDesire EYEから、利用目的にあった端末を選ぶといいだろう。画面の大きさ重視ならZenFone 2 Laser (ZE601KL)も悪くない。
以前はハイエンドなSIMロックフリースマホが欲しくても選択肢がほとんどなかったが、2015年から2016年にかけて個性的な端末が増えつつある。長く快適に使えるSIMロックフリースマホが欲しいなら、やや高くても安心して使えるハイエンドモデルも選択肢に入れてみてはいかがだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.