iPhone 5s/6sと何が違う? 「iPhone SE」を分解してみたバラして見ずにはいられない(2/2 ページ)

» 2016年04月20日 20時00分 公開
前のページへ 1|2       

技術的に興味深い点

 最近のiPhoneを分解すると、基板上に白いICが多く見られるようになった。こんな見えないところにもAppleが得意とするファッション性が……と思っていたがそうではなく、技術的な意味がある。

「iPhone SE」を分解 白いパッケージのICが増えた。これは銀を使用したもので、ノイズ遮へいシールドとして機能する

 国内の材料メーカーによると白色ICの表面には銀が使われており、電子部品が発する電磁波ノイズを遮断する効果がある。個々の部品がノイズを抑えることで、通信機に広く使われている電磁波シールド用の鉄板が不要になり、端末の薄型化に貢献する。かなり前の機種から“白い部品”になった無線LAN/Bluetoothモジュールを見ると、確かにこのICだけは基板の端に位置しており、鉄板シールドに覆われていない。

「iPhone SE」を分解 一番右端にあるのが無線LANとBluetoothのモジュール

 過去の一部機種では、写真や音楽を保存するフラッシュメモリの表面が銀色になったことがあった。SEでは通信部の信号増幅用IC(パワーアンプ)等に少しずつ採用が進んでいるが、ノイズ遮へいシールドを必要とする従来タイプのICも多く、これらが全て“白く”なるまで鉄板シールドは必要だろう。

 さて、スマートフォンで最も使われている部品はMLCC(積層セラミックコンデンサー)である。その数は500個以上あり、基板に砂をまいたように見える。MLCCは主にノイズ対策のための部品として使用されており、iPhoneのような通信機器で特に多く使用されている。

 iPhoneの特徴の1つは基板が超小型である点だ。SIMカードスロットのサイズが基板の幅を決めていると言っても過言ではなく、基板そのものは板ガムを少し大きくした程度の面積しかない。その分、部品を実装可能な面積も限られている。Appleは開発時点で手に入る最も小さい部品をいち早く使う傾向があり、MLCCも例外ではない。

「iPhone SE」を分解 SEのディスプレイはシャープ、ジャパンディスプレイ、LGの3社が供給しているとされるが、今回調査した端末にはLGの液晶パネルが採用されていた

 iPhone 5s/SEの基板に実装される最小サイズのMLCCは「0402サイズ(0.4×0.2ミリ)」と呼ばれるもの。5sでは572個のMLCCのうち、半分近い235個がこの0402サイズであった。しかしSEは全507個のうち167個に減っている。代わって最も多かったのが、ひと回り大きい「0603サイズ(0.6×0.3ミリ)」のMLCCであった。

 MLCCにはサイズのほかに構造別に種類がある。従来は2端子タイプのMLCC(両端に基板との接続用端子がある)が多かったが、特にノイズ特性に優れた3端子MLCC(なかほどに3個目の端子がある)が普及しており、複数のMLCCが必要だったノイズ除去の仕事を1個でこなせるようになった。

 Appleはサイズだけでなくコストのバランス感覚も得意だ。SEはMLCCの集積化で使う部品数が減り、基板に空きスペースができた。そのため、0402サイズより低コストな0603サイズのMLCCをできるだけ多く使うようにしたのかもしれない。

「iPhone SE」を分解 マイクは2個から3個に増量。iPhone6sでは4個搭載されており、マイク増加はiPhoneの一つの流れ

SEに続く“復刻”モデルは出るか?

 4型とコンパクトで、ほぼ最新のスペックを持つSE。このクラスのiPhoneを必要とする人が多いことはAppleも認めているのだろう。しかし販売価格が従来機種の半分程度となると、あまりヒットすると高級な主力機の売れ筋に影響が出かねない。SEの生産数を予測すると、決して主力と呼べる商品でない事は確かだ。四半期ごとの生産数から推定したSEの月間生産数は120〜150万台で、6/6sの1割程度だ。

 Appleとしては先進国の人々には10万円以上する主力機を買ってもらい、新興国や途上国にはSEを廉価(それでも貧困ラインとされる1日1ドルで生活する人々にとっては年収以上の額だが)で販売し、新しい販路向けの製品として活用すると思われる。

 スマートフォンの主役はディスプレイだ。片手操作には大きすぎて不便かもしれないが、一度大画面に慣れてしまうと、以前の水準には戻れない事を多くの人が認めている。同時に、2年おきに10万円近い新型機を買い、これまた多額の通信料金を費やす事に疑問を感じるユーザーも増えた。

 スマートフォンは日本ではほぼ普及したと言われ、これまでのように新機種が飛ぶように売れる市場ではない。また新しいデザインや革新的な技術よりも、使い慣れたデザインとサイズを使い付けたいというユーザーも増えている。SEに続く復刻モデルが出るとすれば、コストに敏感で必ずしも先進性を求めないユーザーにとって、必要なオプションになるといえるだろう。

番外編:「iPhone 7」(仮)予報

 次期iPhoneと目される「iPhone 7」(仮)についてはさまざまな予想があるが、現時点で、多くの研究者の意見が一致しているものをご紹介する。

 まずラインアップは3モデル構成になる。大画面モデルの「+」に加え、「D」と呼ばれるグレードが誕生し、この「D」は2つのアウトカメラを搭載する。カメラが2つになればきれいに撮れるわけではなく、片方のカメラで今まで通り画像を撮影し、もう1つのカメラでさまざまなセンシングを行うものと予想される。

 カメラが2つになると取り扱うデータ量も増える。大量のデータを滞りなくさばくためのDRAM(メモリ)も増え、現在の2GBから3GBになると予想されている。写真や音楽を収めておくフラッシュメモリ(ストレージ)は6s/6s Plusと同じ最大128GBになるだろう。だが、256GBモデルが2017年に登場すると予想されている。それには、大容量・微細化を進めた3D NAND構造を採用したフラッシュメモリが搭載される公算だ。

 プロセッサの構造も変わる。次期iPhoneのプロセッサでは、台湾の半導体製造大手TSMCが「InFO」(Integrated Fan Out)と呼ぶ、新しい半導体実装方式が用いられる。これはファンアウト型WLP(FOWLP:Fan Out Wafer Level Packaging)とも呼ばれる技術で、プロセッサの小型化と集積化がさらに進む。

 ディスプレイサイズは現在と変わらず、4.7型と5.5型モデルと思われる。次世代有機ELディスプレイは翌2017年の一部モデルで採用になり、2018年に全モデルで一斉に採用と予想される。

 充電については、30分程度の充電で80%満タンになる急速充電に対応する可能性がある。またヘッドフォン端子もなくなり、Lightningコネクター経由で音楽を聴く可能性を示唆する専門家もいる。

 本来なら設計が固まっているこの時期に、これだけの予想情報が乱れ飛ぶのも珍しい。Appleも悩んでいるのかもしれない。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年