帰ってきた防水、新しい放熱機構 「Galaxy S7 edge」の“中身”を分解して知るバラして見ずにはいられない(2/2 ページ)

» 2016年05月31日 00時00分 公開
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 カメラの撮像素子も進化した。同社が「デュアルピクセルセンサー」と呼ぶ新しいセンサーは1つ1つの画素が撮像と位相差AFの2つに分かれており、より高速なピント合わせを実現したという。ライバル各社はメインカメラを2基実装(デュアルカメラ)し、片方を撮像、他方を各種センサーとして利用している。Samsungは1基で両方の機能を持つセンサーを自社で開発し、差別化を図っている。

 S7/S7 edgeはGalaxyシリーズで初めて、銅製のヒートパイプによる放熱機構を採用した。従来機種は炭素黒鉛シートと銅箔を利用して放熱していたが、新機種はさらに銅のパイプも使い、熱をボディー全体に逃がすようになっている。

Galaxy S7 edgeを分解 ついに1個になった水晶デバイス。京セラがニッポン水晶の牙城を死守している
Galaxy S7 edgeを分解 マイクは3個から2個に減った。プロセッサがソフト的にノイズ処理する能力が高まったためと推定する
Galaxy S7 edgeを分解 無線充電とNFCアンテナを兼ねたアンテナシート。無線充電機の親機は別売りでおよそ8000円
Galaxy S7 edgeを分解 センターパネルに設置された銅のヒートパイプ。その上に貼付された炭素黒鉛シートと共に高速で熱を拡散させると思われる。こうした放熱構造はGalaxyシリーズでは初の採用

 スマホに使われているプロセッサとその上にPoP(Package on Package:2階建て)実装されているDRAM(メモリ)、ディスプレイ、バッテリーは性能アップに伴いより大きな熱を発する。防水構造を取れば熱は逃げにくく、内部にこもりやすくなり、この対策として銅パイプを設置したのだろう。

日本発売が2カ月も遅れたのはなぜ?

 これまでのGalaxy Sシリーズに搭載されるチップセットには3つの組み合わせがあった。1つは全てQualcomm製、2つ目が全てSamsung製、3つ目はアプリケーションプロセッサ(AP)のみSamsungで、LTE通信をつかさどるベースバンドプロセッサなどはQualcomm製という組み合わせだ。例えば国内向けのGalaxy S6シリーズは、APがSamsung製の「Exynos 7420」、ベースバンドプロセッサがQualcomm製の「MDM9395」というコンビネーションだ。

 今回分解したGalaxy S7 edgeは、APとベースバンドプロセッサが一体のQualcomm製「MSM8996」を採用していた。ドコモやauがリリースしたGalaxy S7 edgeも、同様にオールQualcommのチップセットを採用する。こうした組み合わせの違いは、国や地域ごとで異なる周波数帯域やマーケティング上の判断、製造時期に合わせた調達計画などに左右される。

 日本での発売はグローバルから2カ月ほど遅れたが、ワンセグやおサイフケータイなど、日本特有の機能を付加したためだろう。いずれも専用ICなどハードウェアを別途搭載する必要があるため、日本専用の設計が必要になり、グローバルモデルよりも出荷に時間を要すると考えられる。ワンセグは、熊本地震のように災害で通信網がダウンしても、スマホやケータイでテレビが見られ情報を得ることができる。万一の備えとして重宝する人は多い。

 海外モデルの日本発売が遅れる理由には、総務省が定める技適マークを受けるための審査機関のリソースと、Qualcomm以外チップセット(プロセッサ、ベースバンドIC、通信IC、電源ICを指す)に対する検証が追い付いていない点も指摘されている。

 また日本は4Gの高速通信環境が高度に整備された国である。国内版のS7 edgeは、ドコモ版が下り最大375Mbps、au版が下り最大370Mbpsに対応した。この高速通信は、4Gのデータ回線を3波束ねて使用するキャリアアグリゲーション(CA)が使われている。国内版S7 edgeの3波CAはソフトウェア無線の技術で実現しており、特別なハードウェアやチップセットが使用されている訳ではない。

3Gはどうなる?

 モバイル機器の契約数は、今や全世界の人口より多い。新規契約のほとんどは3Gや4Gであるが、Ericssonによると意外な事に、総契約数74億回線のうち半分弱の36億回線が2GのGSM規格である。

 中国、インド、アフリカなど人口の多い国々、また自動販売機など機械同士の通信(M2M)で広く使用されている。3G(W-CDMA)は予想ほど普及しておらず、4GのLTEに資源を集中し、5Gの導入後、数年たって世界規模で3Gが終了する見込みだ。

 5Gのサービス開始はすぐそこまで来ている。2016年には米国でVerizonがドラフト版の5Gで世界初の商用サービスを開始する。2017年夏には5Gの標準仕様が決まり、2018年に韓国の冬季オリンピック開催に合わせて大規模な商用サービスが開始される。2019年には日本でもサービスが始まり、翌2020年の東京オリンピックに向けて大規模なネットワークが構築される予定だ。

 冒頭のマーティン博士は、モバイル機器の最適化の恩恵を受ける分野として、ヘルスケア、教育、インターネットの適正な利用を挙げた。そしてこれらの恩恵が行き渡るとき、世界レベルで貧困の改善が見られるだろうと結んだ。皆さんはどう思われるだろうか。

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