玉野社長は、Androidスマートフォンのユーザーインタフェース(UI)は開発の自由度が高い一方、使い勝手がメーカーごとに異なるという「Androidの分断化」にも触れ、それを解消するために「Googleと共にユーザー体験を『リブート(再起動)』するプロジェクトを進めている」と明かした。
これは次期バージョンのAndroid Nから本格的に取り組むもので、具体的には「通話」や「メール」「メディアプレーヤー」など、Googleとメーカー、キャリアから重複して提供されるアプリを削減するというもの。HTC 10ではまず、GoogleとHTCの間で同じ役割のアプリを見直し、UIもグローバルで統一。その結果、タッチレスポンスが50%、アプリの起動速度が2倍になったという。さらにHTC 10は、不要なキャッシュやメモリをクリアする純正のクリーニングアプリもプリセットする。
このほか、Quick Charge 3.0に対応したことで、バッテリー残量0%から約30分で50%まで充電できる点もアピール。「30分かけなくても、わずか10分の充電でまる1日は持つ」という。
そして従来モデルでも定評だったカメラとオーディオも進化した。アウトカメラには、画素サイズを大きくし、より多くの光を取り込める1200万画素センサーを採用。レンズもF1.8と明るいものを組み合わせる。RAWフォーマットの撮影もサポートした。500万画素のインカメラは、世界で初めて光学式の手ブレ補正に対応した。動画撮影時のハイレゾ録音も行える。
スピーカーはスマホの上下に2つあり、上部がツイーター、下部がウーハーという2WAY仕様で、それぞれに独立したアンプを備えた。24bit対応のソフトウェアDACを内蔵し、単体でハイレゾ音源を再生できる。ユーザーの好みに合わせ、イヤフォンごとに音をチューニングできる「パーソナルオーディオプロファイル」という機能も用意した。
HTCのau向けモデルは、「HTC J」「HTC J butterfly」など日本向けにカスタマイズされた製品の投入が続いた。しかしHTC 10は、ほぼグローバル仕様そのままでauに供給する。Androidスマホ1機種ごとの販売数が減り、今までのようなカスタマイズはコスト的に難しい面があったためだという。同時に、グローバルブランドを生かして成長するという、中長期の戦略も影響している。
しかしいわゆる国内向け機能でも、おサイフケータイについてはNFCとの共通部分があるため、後継機で対応する可能性を示唆した。ワンセグ/フルセグは市場が限られているため、「今後も難しいかもしれない」(玉野社長)とのこと。実は防水性については生活防水までは対応しており、充電端子のショートを防止するため防塵(じん)性も持たせた。
玉野社長は今後について、「今回はフラグシップだが、コストパフォーマンスにも力を入れている。HTC 10の技術を駆使した、ミドルクラススマホも頑張っていきたい」と、HTC 10を皮切りに新たなラインアップ展開にも言及した。
SIMロックフリーモデルの登場にも期待が掛かるが、当面の動きはなさそうだ。HTCは2015年10月にSIMフリーの「HTC Desire EYE」「HTC Desire 626」を発売したが、「市場の動きをつかむためのテストマーケティング的な販売だった」(玉野社長)と振り返る。
その格安スマホ市場は「どうしても低価格帯の動きが大きく、われわれが得意とするミドルクラスやハイスペックのレンジでは動きが少ない」(同)のが現状。玉野社長は「買い換えで上のスペックを選ぶニーズは増えるはず。その時に選んでもらえるような製品を用意しておきたい」と意欲を見せた。
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