「AXON 7」の販売目標は200万台、日本を重点市場に――ZTEのグローバル戦略を聞く

» 2016年06月03日 21時59分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 新しいフラグシップモデル「AXON 7」を発表し、攻めの姿勢を見せるZTE。日本ではまだ存在感が小さいZTEだが、今後は日本を中国や欧米に並ぶ重点市場として位置付け、積極的に攻める姿勢を見せている。ZTE副総裁・端末事業部CEOの曽学忠氏へのグループインタビューと、AXON 7の発表会で曽氏が語った内容から、ZTEの今後の戦略をうらなう。

AXON 7はお手頃ながらプレミアムなスマートフォン

 中国・北京で5月26日(現地時間)に発表された、ZTEのフラグシップモデル「AXON 7」。BMWのグループ会社と共同で手掛けた本体デザインと、旭化成エレクトロニクス製のチップセットを2つ搭載することで、サウンド機能を大幅に強化した点が大きな特徴となるが、ZTEはAXON 7の投入で何を狙っているのだろうか。そして、同社はどのようにしてグローバルでの存在感を高めようとしているのだろうか。

ZTE ZTEの新しいフラグシップモデル「AXON 7」。BMWのグループ会社と共同で手掛けたというデザイン性と、サウンド機能の強化が大きな特徴だ

 グループインタビューの冒頭、曽氏はAXON 7に関して、AppleやSamsungのフラグシップと比べ、手頃に購入できるプレミアムな製品であることをアピールした。発表会の会場で打ち出されたAXON 7の価格は、最も安価なモデルで449米ドル(約5万円)、プレミアムモデルでも639米ドル(約7.1万円)からとなっている。

ZTE グループインタビューに答えるZTEの曽氏

 この価格は、他社製品と比べてどれだけ競争力があるのだろうか。筆者が確認した限り、米国ではAppleのiPhone 6sの価格が649米ドルから、SamsungのGalaxy S7(日本未発売)が米Wallmart.com上では630米ドルで販売されており、AXON 7のプレミアムモデルに近い価格設定となっていることが分かる。

ZTE AXON 7は最も高額なプレミアムモデルでも、iPhone 6sの中で最も安い、16GBモデルに近い価格設定がなされている

 つまりAXON 7は、AppleやSamsungのプレミアムモデルにおける下位クラスモデルの料金で、上位機種が購入できる価格設定となっているわけだ。高い性能を備えながら、いかに他社のフラグシップと比べ価格面で優位性があるかを打ち出しているかが理解できるだろう。その分利益率は低くなるとみられるが、手頃な価格で高品質な端末が手に入ることで顧客満足度を高め、市場シェア拡大へとつなげるのが、ZTEの狙いのようだ。

 実際、曽氏は「AppleやSamsungは高いブランドイメージと、豊富な販売チャネルを持っている」と話し、ZTEにとっては端末性能だけでなく、ブランドや販路など、他の要素が重要になってくると話している。AXON 7で顧客満足度を高めることが、その後のブランドイメージの向上や販路拡大につながると考えているようだ。

リサーチと顧客満足度向上で海外でも販売拡大

 だが曽氏によると、AXON 7の販売目標は「200万台」とのことで、世界各国に展開するモデルにしては数が少ないように感じる。しかも200万台の中には、派生モデルの「AXON 7 MAX」と「AXON 7 mini」が含まれるとのことなので、単純に計算すれば1モデルあたり65万台程度となる。

 この点について曽氏は「AXONの初代シリーズの販売数は約80万台で、そのうち50万台は中国での販売だった」と答えている。そうしたことからAXON 7は、欧米など海外での販売を拡大することで、200万台を達成したい考えのようだ。

 中国だけでなく世界的に出荷台数を伸ばす上で、ZTEはAXON 7の開発前に、中国のほか米国、欧州、そして日本の約6000人のサンプルユーザーにリサーチを実施したとのこと。その中で浮かび上がったのが、カメラ機能だけでなく、サウンド機能の重要性であったという。そこでAXON 7では、充実したカメラ機能だけでなく、良質なサウンドをいつでもどこでも体験できる性能を提供するに至ったと、曽氏は話している。

 その上で、ZTEが重視しているのが顧客満足度の向上だという。AXON 7の発表会において、曽氏は同社のこれまでのフラグシップモデルを振り返り、それらがなぜうまくいかなかったのかを詳細に説明。その結果として、顧客満足度がどれだけ低下したかをグラフで示すなど、新製品発表会としてはやや異例ともいえるプレゼンテーションを実施している。

ZTE 「Nexus 6P」に近いデザインの「Grand S」を先んじて投入しながら、その先進性を販売に生かすことができなかったなど、AXON 7の発表会は過去のフラグシップモデルの反省が続く異例の内容となった

 そうした反省を元に、ZTEは現在「AXON」「BLADE」シリーズのほか、別会社で展開しているデザイン性と個性を重視した「Nubia」(日本では未展開)の3シリーズにリソースを集中したとのこと。その結果が、前のAXONシリーズで高い評価を得ることにつながったことから、AXON 7ではより高い顧客満足度を実現し、ZTE全体の評価を高めることを重視しているようだ。

NTTドコモ向けに端末を提供する可能性も

 AXON 7の海外展開積極化を強く打ち出すZTEだが、同社の2015年のスマートフォン出荷台数は約5600万台。2016年は6000万台の出荷を予想しているが、曽氏はさらにそれを超えて、7000万台の出荷を目指したいとしている。

 その中には、AXONシリーズやBLADEシリーズといった、自社が直接手掛けるプロダクトだけでなく、各国のキャリアなどに向けてOEMとして提供される端末も多く含まれている。では、出荷台数を大きく伸ばす上で、ZTEはどのような市場に重点を置き、どういった戦略をもって取り組もうとしているのだろうか。

 曽氏は重点的に力を入れる市場について、中国と米国、欧州、そして日本を挙げている。ZTEのお膝元である中国や、低価格帯の端末を主体に4位のシェアを獲得している米国に注力するのは理解できるが、日本や欧州はZTEがあまり強みを持たないエリアでもあり、やや意外な印象もある。

 だが曽氏は、欧州市場に関しては「開拓を進めている最中だが、ロシアでは大きく伸びているほか、メジャーなスポーツチームのスポンサードを進めている」と話している。実際ZTEは、2月にスペインのセビージャFC、5月にドイツのボルシアMGと、欧州のサッカーチームとのスポンサー契約を相次いで実施。欧州での知名度拡大を急速に進めようとしているのが分かる。

ZTE ZTEは2016年、スペインのサッカーチーム、セビージャFCのスポンサーになるなど、欧州でのブランド向上のため欧州のスポーツチームに向けたスポンサードを強化している

 では、日本に関してはどうだろうか。曽氏は「シャオミも参入しておらず、多くのメーカーが苦戦するなど、難しい市場だ」と話す。その難しい市場を攻略する上で、重要になるのがキャリアとの関係性であると、曽氏は話している。

 確かにZTEは、大手キャリアの一角を占めるソフトバンクとは深いつながりを持っている。実際、子供向け端末やWi-Fiルーターなどのほか、2011年に発売され、7色展開が注目を集めた「STAR7 009Z」や、最近であれば2015年の4月に発売された、LTE対応のプリペイド専用スマートフォン「BLADE Q+」など、スマートフォンもいくつか提供した実績がある。

ZTE ZTEはこれまで、ソフトバンク向けに「STAR 7 009Z」などいくつかのスマートフォンを提供している

 だが他のキャリアに関しては、KDDI(au)向けには2016年、ウェアラブル端末「mamorino Watch」を提供しているのみで、NTTドコモ向けは端末提供の実績自体がない。しかしながら曽氏は「3つのキャリアと協力することで、市場開拓を進めていきたい」と話しており、全てのキャリアと協力関係を敷き、端末を投入していくことを示唆している。それが必ずしもスマートフォンを意味するとは限らないようだが、今後au向けの端末投入が強化されるだけでなく、NTTドコモからも、何かしらのZTE製端末が登場する可能性がありそうだ。

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