スマホシェア世界4位に食い込んだOppo、Xiaomiにない強さとは?山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)

» 2016年06月07日 14時00分 公開
[山根康宏ITmedia]
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Oppoの強さ(2):スペックではなく“特徴”の見える製品作り

 Xiaomiの最新モデル「Mi5」の名前を聞いたことのある人も多いだろう。ではMi5はどんな製品か覚えている人はいるだろうか? 恐らくプロセッサがSnapdragon820であり、価格が中国で1999元と安い、この2点くらいしか記憶に残っていないのではないだろうか?

 OppoはそんなXiaomiのスペック至上主義に対し、毎年特徴ある製品で勝負をかけてきた。2013年秋にはカメラが前後自由に回転する「N1」、2014年春には2Kの高解像度ディスプレイで高精細な写真表示が可能な「Find 7」、同年秋には世界最薄4.85ミリの「R5」と、スペック上の数字だけではなく製品の特徴そのものをアピールする製品を次々に投入してきた。また独自の高速充電技術「VOOC」を早くから開発し上位モデルに搭載、バッテリー切れの心配がないという使いやすさも売りにしている。

 現在のOppoのラインアップはハイエンドの「R」シリーズ、エントリーの「Aシリーズ」の2つがメインで、「Find」など旧シリーズの製品も一部店舗で販売している。

 最新の「R9」「R9 Plus」は高級感ある金属ボディーにセルフィーを強化したモデルで、どちらもインカメラは1600万画素を搭載。アウトカメラはR9が1300万画素で、インカメラのほうが高画質なのだ(R9 Plusはアウトカメラも1600万画素)。それに加えてナローベゼルのスリムなボディー、さらには5分の充電で2時間通話が可能な急速充電と、物欲をそそる特徴が備わっている。価格がいくらで、どんなプロセッサを搭載しているか、といったことを抜きにして「欲しい」と思える製品だ。

Oppoの強さとは? 深センの地下鉄駅構内広告。「5分充電で2時間通話」を大きくアピール
Oppoの強さとは? インカメラに1600万画素カメラを搭載した究極の“セルフィーフォン”「R9」「R9 Plus」

 またエントリーのAシリーズは、競合他社が699元〜799元(約1万1200円〜1万3000円)という激安価格の端末を次々と出す中で、最新モデルの「A37」が1299元(約2万1200円)、「A33」が1399元(約2万2800円)と、他社の低価格合戦にはあえて参入していない。

 本体デザインや金属素材を多用した高質感、そしてカメラの高画質化などで他社の格安品と差別化し、「格安ではない、オシャレなスマートフォン」として1000元超えの値段でも十分競争力のある製品となっているのだ。ちなみにこの価格帯では、Xiaomiがつい先日大画面ファブレットの「Xiaomi Mi Max」を1499元(約2万4500円)で発売した。スペックはMi Maxが勝っているが、中国や新興国ではデザインやブランドイメージでOppoのAシリーズを選ぶ消費者も多いだろう。

Oppoの強さ(3):高価格品でも売れるブランド力

 価格勝負の道を安易に選ばず、コストを下げて利益を上げると言った目先の利益も追求せず、「他社にはない、Oppoらしい製品」を消費者に送り続けてていった結果、Oppoのスマートフォンは新興国の若い世代の消費者に「高品質でスタイリッシュ」というイメージを植え込むことに成功している。

 筆者がミヤンマーの展示会へ行ったとき、某出展企業の大学を卒業したての女性がOppoのスマートフォンを持っている姿を見かけた。購入した理由を聞くと「おしゃれだし、そんなに高くはないから。iPhoneもいいとは聞いているけど、値段が高すぎる」だった。確かにミヤンマーの首都ヤンゴンのOppoの店に行ってみると、冷房の効いた店内にはそろいの制服を着たスタッフがフレンドリーに対応してくれ、ここでならちょっと高い製品を買ってもいいかな、と思えたほどだ。

 またシンガポールでは有名なショッピングモールの一等地にOppoは店を構えている。先日訪問してみたところ、シンガポールでの製品ラインアップはわずか4種類のみと少ないものだった。しかし店内は意外にも来客が多く、展示気も多く広い店内でゆっくりと製品を試すことができた。ある女性客は店員に「セルフィーを撮るのにR9のカメラ性能がとてもいいと聞いてきたし、製品デザインもいい」と話しており、649シンガポールドル(約5万1400円)の値段も気にならないようだった。ちなみにシンガポールでは同じ5.5型のiPhone 6s 64GBが1388シンガポールドル(約11万円)。価格差は倍もある。しかしこの女性客は「iPhoneが買えないからOppoを買う」のではなく、「十分な性能があるから」Oppoを購入しているのだ。

Oppoの強さとは? ミャンマーの首都ヤンゴン。市内にはきれいなOppoストアが並ぶだけではなく、Oppoの看板を掲げる小売店も。こんな店構えでも中にはショーケースを並べ、制服を着た店員が接客する
Oppoの強さとは? シンガポールのSuntec City。入口を入るとすぐに見えるOppoの店。大昔はこの上にNokiaストアがあった

 そもそもOppoとiPhoneでは客層が違うので単純比較はできない。だが5万円を超える価格であっても、Oppoの製品は十分売れるだけのブランド力、あるいは信頼を販売している国々で獲得しているのである。高価格かつ高性能が売れ続ければ、そのメーカーのイメージもより高まっていく。各国でブランド力を高めるための製品展開と販売戦略を地道に続けていった結果、Oppoの製品は価格を抜きにしても売れるようになったのだ。

 ではXiaomiはどうだろうか。Mi5はSnapdragon 820を搭載し1999元(約3万2600円)という安さで大きな話題になっている。だがメモリを増やしバックカバーをセラミックにし、価格を2699元(約4万4000円)に引き上げた上級モデルの話題はあまり聞かれない。

 ちなみにこの上級モデルは6月上旬発売だが、中国のニュースサイトの扱いを見てもMi5の製品発表時ほどの盛り上がりは感じられない。Mi5上級モデルの価格は他社品と比べても十分価格競争力はあるものの、消費者がXiaomiに求めているのは「価格が安いこと」なのだ。メモリを増やしたから価格が高くなった、では消費者は納得してくれないのだろう。

Oppoの強さとは? XiaomiのWebページ。スマートフォンからIoT製品まで多数の商品を扱うが、値引きキャンペーンなど価格を大きくアピール
Oppoの強さとは? OppoのWebページ。若いアイドルを使い、全体のイメージも上品だ

 Oppoの製品はシンガポールでも少しずつ人気が高まっているように、先進国でも十分通用するだけの品質とデザインを兼ねそろえている。価格もそれほど高くはなく、もし日本のSIMロックフリースマートフォン市場に製品を出しても十分戦えるだろう。今後中国外の新興国で一定の力を付ければ、ミッドレンジを中心とした製品展開でOppoが先進国へ参入する日も遠くはないはずだ。

 このあたりの戦略も中国、インド、インドネシアといった人口の多い国を中心に「数」で展開しているXiaomiとの大きな違いである。Oppoの勢いは本物なのか、あるいは今だけなのか。これから出てくる同社の新製品や、その販売戦略からは目が離せないものになるだろう。

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