「データローミング=怖い」を解消したい――KDDIに聞く「世界データ定額」の狙い(2/3 ページ)

» 2016年08月05日 17時17分 公開
[らいらITmedia]

レンタルルーターにはない利点は?

―― 私も海外旅行を予定する友達に相談されたとき、「よく分からないならデータローミングをオフにして、ルーターを借りる方が楽だよ」と返事をすることがよくあります。最近はレンタルルーターの他にも、プリペイドSIMなどの選択肢も増えてきました。それらとの差別化はどうお考えですか?

藤井氏 レンタルルーターは借りて返す手間がありますし、SIMは差し替える必要があります。詳しい方はいいのですが、SIMの差し替えは一般的にはまだハードルが高い。その中で、ワンタッチでそのまま使える点は大きな強みだと思います。

石丸氏 グループでの女子旅で聞いた話では、代表者がルーターを借りると、「お金を割らないといけないかな? ワリカンならいくら?」と、出発前に気持ちに負担が生まれるのだそうです。同じ人が手続きするにしろ、持ち回りにするにしろ毎回大変だし、なんとなく心にもやもやができるという話はありました。

―― 確かに! 私も友達と海外旅行に行くたびに同じ経験をします(笑)。レンタルルーターは友達とシェアできる値ごろさはありますが、24時間980円なら割り切ってそれぞれが接続する形でもよさそうですね。

石丸氏 現地合流のパターンだと、なおさらややこしいですしね。

藤井氏 レンタルルーターだと移動中にも料金が発生するムダがありますよね。米国や欧州など、移動距離が長いと損した気分になります。その点、世界データ定額なら、滞在中の好きな時間から接続を開始できるのもメリットです。

24時間980円の価格を実現できた理由

世界データ定額 KDDIの白井大介氏

―― 世界データ定額が発表される前は、「海外ダブル定額」が24.4MBまで1980円/日、それ以上は2980円/日で提供されていました(現在も162の国と地域をカバー)。データ容量の制限があるとはいえ、今回半額以下の安さを実現できたのはなぜですか?

白井氏 もともと「ローミング料金が高い」と言われていますが、それは海外のネットワークを使っているからです。お客さまが使えば使うほど、海外キャリアのネットワークコストが上がり、弊社は利益率が低くなる。それが今までのデータローミングの構造でしたが、本来であればたくさん使っていただけるほど利益を生む構造にしなければいけません。そこで交渉部隊が現地の通信事業者と交渉し努力した結果、コストを削減できました。

石丸氏 今までは使用量に反比例して価格が下がるビジネスモデルだったので、高いから使わない→ユーザーが減る→価格が上がるという悪循環でした。どこかでこのループをバチッと切らなければいけないと思い、現地の通信事業者に「たくさん使うから、まず安くして」と交渉しました。「ニワトリが先か、卵が先か」論になりますが、ある程度リスクを背負ってお客さまを集めるという気持ちのもと、価格を安くするところから始めました。

白井氏 ユーザーに聞き取りをして、値ごろ感のある価格で、事業者とそれぞれ交渉をしていきました。

石丸氏 また対象国のキャリアなら、どこを使ってもOKというルールにしました。当然キャリアによって価格の違いがありますが、お客さまに「キャリアによって価格が変わりますよ」と言った途端に難しくなってしまうので、それは絶対にやりたくなかったですね。

―― サービスを実現するには海外のそれぞれの事業者と全て交渉したわけですよね。時間も手間もかかりそうですが、プロジェクト自体が走り出したのはいつごろですか?

石丸氏 1年半くらい前です。価格をかなり下げることに対しては、社内でも「本当にできるの?」と半信半疑の声があって難しかったですね。こちらも利益が確保できると断言できず、ある種賭けだったので。いったん走りだすと早かったのですが、社内でのせめぎあいの時間がけっこう長かったですね。

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