Jade Primoは、日本向けのWindows 10 Mobileスマホとしては事実上初めて有線接続のContinuumに対応する。本体のUSB Type-C端子がDisplayPort出力を兼ねており、付属のドッキングステーションか、出力先に合わせた変換アダプターを介して映像出力すると利用できる。今回はドッキングステーションのHDMI出力を経由して利用した。
Miracast(無線)を使ったContinuumの場合、Continuumアプリを自分で起動してセットアップを開始するが、有線接続の場合は映像出力を開始する際に自動的にアプリが起動してセットアップを行える。
MiracastのContinuumでは、環境によっては画面描画の遅延や乱れ(ブロックノイズ)が発生することがある。しかし、有線接続にするとこれらが発生することはめったになくなる。マウスポインターが意の通りに動くのはこんなに快適なのか、と思うほどだ。Microsoft EdgeでのWebブラウジングも、プリインストールの「Microsoft Office」のアプリ群での作業も、PC版に近いユーザーインタフェース(UI)で快適に操作することができる。
非常に心地よく使える有線接続のConinuumだが、見た目がほぼPC版のWindows 10と変わらないゆえに、細かい部分での違いが気になってくる。
まず、複数のウィンドウを同時に表示することができない点だ。イメージ的には常にウィンドウを最大化している感じとなる。ウィンドウを複数同時に開いてアプリを行き来する、という使い方をする人にとっては不便を感じてしまうだろう。また、Alt+Tabキーを使ってタスクの切り替えをする際も、PC版のWindows 10とは画面の遷移エフェクトが若干異なるため、PC版に慣れているほど違和感を強く覚える可能性が高い。
これらの点は、今後の大型アップデートなどでぜひとも改善してもらいたい。
また、標準ブラウザである「Microsoft Edge」においても機能差分がある。Windows 10 Mobile版のEdgeでは「Adobe Flash」に対応していないのだ。最近ではFlashを活用するサイト・サービスもかなり減ったが、ゼロになったわけではない。「同じEdgeだから……」と期待すると若干ガッカリするかもしれない。
Adobeの動向も含めて考えると、この問題についてはサイト・サービス側でFlash(プラグイン)に依存しないように改修を加える方が解決法としては現実的だ。時間が解決してくれるといいのだが……。
今まで日本で発売されてきたWindows 10 Mobileスマホは、全てエントリーモデルかミドルレンジモデルだった。「ハイスペック」をうたうものでも、「ミドルハイ(中の上)」用途のプロセッサを搭載してきた。
プロセッサにハイエンド向けの「Snapdragon 808」を搭載するLiquid Jade Primoは、名実ともに事実上国内初のハイスペックWindows 10 Mobileスマホだ。エントリーモデルでもシステムメモリとストレージ容量さえあれば軽快なWindows 10 Mobileだが、Jade Primoは今までとは“別次元”の快適さを実現している。有機ELディスプレイの発色も良好で、屋外でも輝度さえ上げれば問題なく使える。Miracast経由だと環境によっては動作が不安定だったContinuumも、有線接続であれば非常に安定して使える。
一方で、過去のWindows 10 Mobileスマホのレビュー(参考記事1/参考記事2)でも触れたが、OS自体の使い勝手(特にContinuum回り)とアプリの充実が課題だ。これは日本エイサー、あるいは親会社である台湾Acerの一存では解決できない課題だ。「またこの結びか」と思われるかもしれないが、Microsoft(あるいは日本法人である日本マイクロソフト)のさらなる頑張りを期待したい。
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