―― 今回の050データSIMは基本的には個人ユーザー向けのサービスだと思うのですが、ビジネス(法人)向けのサービス展開についてはどうお考えでしょうか。
大尾嘉氏 個々のサービスを「ビジネス向けである」とは特に定義はしていません。
―― 今後も、ビジネス向けサービスは楽天コミュニケーションズを中心にやっていくのでしょうか。
大尾嘉氏 そのようになると思います。
―― このタイミングでの新サービスの投入は、LINEの「LINEモバイル」を意識したものなのでしょうか。
大尾嘉氏 このサービス自体はかなり前から、本当にかなり前から実現したいと思っていました。他にも優先順位のある中で、さまざまな準備が整ったタイミング(が今)でしたので、(LINEモバイルのティーザー公開と時期が重なったのは)偶然です。
―― (楽天による)Viber買収の発表から2年経過しているわけですが、2年間はずっと「準備」をしていたのでしょうか。
大尾嘉氏 楽天モバイルは、2014年10月にフュージョン・コミュニケーションズ(現・楽天コミュニケーションズ)のサービスとして始まりました。その時から、今回のようなサービスができないかと検討していました。
―― Viberのアクティブユーザー数は現在どれくらいでしょうか。
鈴木氏 直近では約7億6400万UID(ユニークID)です。
―― 国内通話料0円トライアルを始めてからのユーザー数の伸びはどうでしょうか。
鈴木氏 数値は公表していませんが、(トライアル)キャンペーンの効果は確認できています。
―― 「楽天でんわ」などとのすみ分けはどのようにするのでしょうか。
大尾嘉氏 お客さまのニーズを見ながら検討したのですが、今回の050データSIMは「2台目で使いたい」あるいは「ケータイ(フィーチャーフォン)を使っていて、データ通信中心にスマホを使ってみたい」という人がちょっと通話もする、ということを想定しています。通話品質を重視する人、あるいは通話をよく利用する人には「5分かけ放題オプション」を始めとする楽天でんわのサービスを使ってほしいと思っています。
―― 競争が激しいと言われるMVNO市場で1位になっているのは、何が良かったからだと考えていますか。
大尾嘉氏 一言で言えば、お客さまのニーズをどこまで愚直にサービス主体として追求するか(という姿勢)だと思います。どのくらい料金を下げられるのか、どのくらいオンラインでは買えない人に対するタッチポイントを増やすのか、安価なものから高価でハイスペックなものまで、お客さまの求めている端末のラインアップをどれだけそろえられるか――1つ1つのお客さまの声を聞きながら、楽天グループとしてはスピーディーにこれらのことを繰り返しやってきた結果であると思っています。
―― ポイントで通信料金を支払えるようにするサービスはユーザーのニーズとして結構あるものなのですか。
大尾嘉氏 結構ありますね。ポイントがたまるのは当然ですが、ポイントを使って料金を払う人も結構増えています。実は僕、今、携帯電話料金を払ってないんですよ。家族が4人いますが、ポイント(だけ)で払えてしまっている状態です。
―― 他のMVNOサービスとの差別化要素になってはいるのですか。
大尾嘉氏 なっていると思います。現在、楽天では「スーパーポイントアッププログラム(SPU)」をやっていて、サービスの組み合わせによっては最大で通常の7倍のポイントが付きます。
―― ポイントで携帯電話料金を払っているユーザーの比率は把握していますでしょうか。
倉澤氏 数字として持ってはいます。公表はできませんが、比較的高い割合だとは思っています。
―― 先ほどViberが7億6400万UIDであるという話がありましたが、これを楽天モバイルに誘引する「導線」などは検討しているのでしょうか。
大尾嘉氏 今はグローバル市場をどうするかという検討はしていないですが、逆にアイデアを頂いたので考えてみたいと思います(笑)。おっしゃる通り、Viberはグローバルではプラットフォームとして強みがありますから。
―― インバウンド(訪日外国人)向けに何かを提供することはあり得るかな、と。
大尾嘉氏 そうですね。国際電話とか、国際ローミングとかできそうですよね。まだ検討はしていませんが。
―― Viber Outに関して品質の話が出ましたが、アウトバウンド(海外渡航者)向けに品質を訴求するのも有効なのではないでしょうか。
大尾嘉氏 このサービスは海外でもそのままの料金(追加料金なし)で使えますし、国際電話もViberの技術を使って格安で使えるので、確かにViberでグローバル、というのはありだと思います。
―― MVNO事業の損益はいかがでしょうか。
大尾嘉氏 公表は控えさせていただきますが、社内・グループ内では絶好調な状況にあるとは思っています。
―― Y!mobileやUQ mobileなどの「第三極」は、楽天モバイルに影響を与えていますか。
大尾嘉氏 多少は出ていると思います。ソフトバンクはY!mobileでMVNOに近い価格帯のサービスを積極的にやっていますし、KDDIもUQ mobileをむしろ積極的に推していますしね。
―― 2台目以降として使う人と、1台目として使う人の比率はどのくらいになっているでしょうか。
大尾嘉氏 そこは把握できていませんが、6月の段階で公表している通り、音声通話の比率は比較的高いです。端末のバンドル(セット販売)の比率も、MNP(携帯電話・PHS番号ポータビリティ)での契約の比率も、(他社より)とても高いと思います。
倉澤氏 音声プランの比率が高いということは、恐らくは1台目として使われている人も多いのだと思います。
―― その要因として、楽天ブランドがどのくらい効いていると思いますか。
大尾嘉氏 私たちがリーチしたいお客さまがいるという意味では、楽天経済圏の中で楽天モバイルを提供していることは(効果として)大きいと思います。
―― ブランドという意味では強いブランド力を持つLINEがMVNO事業に参入してくるということは、楽天モバイルにとって脅威になると思いますが、どうお考えでしょうか。
大尾嘉氏 MVNO業界そのものが盛り上がってほしいと思っているので、そのプレーヤーとしてLINEが参入してくることは良いことであると思っています。
これは個人的な意見なのですが、LINEもせっかくMVNOに参入するのですから、他のMVNOにも年齢認証機能を開放してもらえれば、もっとMVNOの裾野が広がって良いと思うのですよね。あくまでもいち消費者としての個人的な意見ですが(笑)。
―― LINEがプラットフォーム化を強力に推進していますが、Viberのプラットフォーム化は考えていないのですか。
鈴木氏 「LINEと比較した時にViberをどうしていきたいのか」ということだと思うのですが、日本に関しては(楽天による)買収から2年経過して、これから突き詰めていくべきことだと認識しています。個人的な見解としては、多くのメッセージングアプリがある中で、どこにニーズがあるのかを見定めて、それを踏まえてアプリやサービスを開発していくことが先なのだと考えています。「プラットフォーム化」を詳細に目指しているわけではなく、1つ1つのサービスなどの品質改良をしていかないといけないと思っています。
―― 単刀直入に聞きますが、LINEモバイルは楽天モバイルにとって業績面で「好影響」を与えるのか、それとも「悪影響」を及ぼすのか、どうお考えでしょうか。先ほどはポジティブな話もありましたが。
大尾嘉氏 どうでしょうね。まだ、LINEモバイルのサービスの詳細が公表されていませんから、何ともいえません。
倉澤氏 1ついえるのは、お客さまはブランド認知だけではサービスを選ばないということです。それがどこで申し込めるのか、サポートがどうなっているのかなどを総合的に判断していると考えています。そこを、LINEモバイルがどうするのかによって影響の大きさは変わってくると思います。
大尾嘉氏 私たちは2年近くMVNO事業をやってきましたが、ブランドを認知してもらうために、そのための活動よりも、オペレーション面やサプライチェーンなど、いろいろな面でサービスの拡充をしてきました。もっとお客さまの満足につながるように、企業努力を続けて「ちょっといいモバイル、もっと楽しい毎日」を提供していきたいと考えています。
今回の楽天モバイルの新プラン発表がLINEモバイルの発表会と時期が近くなったのは単なる偶然のようだが、LINEモバイルの動向は楽天として気になるところはあるようだ。
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