―― スマートコミコミを始めて、他社端末の提供も開始するというお話を聞き、キャリア色、MVNO色が強くなったという印象を受けました。実際、MVNOとメーカーでは、どちらの意識が強いですか。
増田氏 もともとケータイ事業は、面白い製品を出したいと日本で始めています。軸足という意味だとウェイトは同じぐらいかけていますが、やっぱりマーケットを作るのは、端末だと思っています。2025年までに世界一になる、日本のモノ作りを復活させるという使命感は強く持っていて、ハードウェアに対する思いもあります。
―― MVNO寄りになったというわけではないということですね。
増田氏 「縛らない」というのがポリシーで、そこから考えると、ニーズがあれば他社の製品でも取り扱うのは当然です。ただ、繰り返しになりますが、彼らには負けないモノ作りをしていきたい。そのためには、うちがいい製品を作らなければなりません。(他社製品が売れるのが)楽しいかと言われれば、それは楽しくないですからね。
KIWAMI2も4万9800円ですが、AnTuTu Benchmarkのスコアは9万7000を超えました。いいモノ作りをして、きちんとチューニングしなければ、あの数値は出ません。
―― MVNOについては、契約者数などの状況はいかがでしょうか。
増田氏 フローでは多いですが、本格的に始めたのが2015年7月なので、ストックベースではまだまだです。野球で例えると、「1回裏」ですね。製品や売り場もなんとなくでき、知る人ぞ知る存在から、少しずつ広がってきたところです。ただ1回裏というのは、(個人ユーザーシェア1位の)IIJさんにしても150万回線で、まだまだ全然少ない。世の中には、1億5000万回線ありますからね。
その中で、販売チャネルであったり、製品やサービスであったりを整えることに、力を入れていきます。よくドコモのミニ版みたいなことを言うMVNOもいますが、それだったらこのビジネスに顔を出さないでほしい。それよりも、5年後、10年後の日本の携帯電話を見つめ直したい。今はそのいいタイミングですし、われわれはそこで価値を出していきたいですね。
―― フリーテルショップに関しては、最終的に、どの程度まで広げるご予定でしょうか(1年後の目標は200店舗)。
増田氏 僕は1000店舗ぐらいまでいきたいと考えています。エンドユーザーのことを考えると、生活圏にあることが大切です。大手キャリアさんのショップを見ると1000店舗以上を構えていますが、やはりそれもそういうことで、エンドユーザーの利便性を考えると1000は必要になってくるのだと思います。自分がケータイを落としたときのことを考えても、やはりすぐ近くにショップがあるのは安心ですからね。
―― なるほど。最後に、海外事業の成果を教えてください。
増田氏 スタートしてちょうど1年ぐらいで、15を超える国で製品も出せました。ただ出すだけではなく、チリでは瞬間風速でしたが、2週間連続で1位も取れました。それも、発売週ではなく、発売してから3、4週たってからで、日本のブランド、日本のメーカーに対する思いが消えていないことを実感しました。
これを世界中でやれば、世界一になれる(笑)。追加発注もいただいていますし、ラインアップも増えました。
―― 難しいことは、何かありますか。
増田氏 言葉が分からないことです(笑)。でも、難しいことよりも、楽しいことの方が多いですね。北米、中南米はキャリアビジネスをメインにしていますが、オープンマーケットよりも技術に対する要求が厳しい。そこを乗り越えたときは、うれしいですね。
―― そこで技術力を培って製品もよくなる、と。
増田氏 はい。アメリカ(中南米)では、America Movilをやっているのが大きいですね。
「知る人ぞ知る存在から、少しずつ広がってきている」というFREETELだが、スマートコミコミは、その拡大に合わせた戦略的な料金プランだ。もくろみ通り、ユーザーの選択比率も高いといい、MVNOの裾野が広がっていることがうかがえる。
一方で、FREETELのもう片方の車輪である端末については、水面下で体制を整える準備をしているようだ。競合他社がハイエンドモデルを複数展開する中、ややおとなしい印象があったことは否めない。特に2016年の下期は、新機種がKIWAMI2とARIAだけで、RAIJINやPriori 4の発売も年明けに持ち越されている。
その準備の成果が現れるのは、2017年の春以降になりそうだ。端末の品質は徐々に上がってきているだけに、FREETELらしい、普通のスマホの枠に収まらない端末も期待したい。
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