とはいえ、MVNOの事業者数はまだまだ増加の一途をたどっている。2016年は、イオンモバイルやLINEモバイルなど、もともと通信事業をなりわいとしていなかった会社の新規参入が相次いだ1年でもあった。イオンモバイルはこれまで、MVNOのSIMカードと端末を販売する流通企業という位置付けだったが、2月に独自サービスを開始。MVNOとして、その販路を生かし、事業を展開している。
これに対し、LINEは9月にサービスを開始した。LINEモバイルの売りは、LINEやFacebook、Twitterの通信量がカウントされないカウントフリー機能で、これは海外で「ゼロレーティング」などと呼ばれるもの。後にInstagramも、その対象に加わっている。LINEモバイルを立ち上げた目的は、スマートフォンユーザーの拡大にあるという。諸外国に比べ、スマートフォン率が低い日本だが、逆に考えればまだ伸びしろがあるということでもある。そのユーザーがLINEを使えば、同社にとってプラスになるというわけだ。
カウントフリー機能は、サービスとしてだけでなく、「通信の秘密」や「ネットワーク中立性」の観点でも話題を集めた。この機能を実現するためには、ユーザーのデータ通信の中身をある程度識別しなければならず、適切に運用しないと、それが「通信の秘密」に抵触する恐れがあるからだ。また、特定のサイトやアプリだけを優遇するのは、「ネットワーク中立性」に反するという見方もある。
これに対し、本連載でも言及したように、LINEモバイルはユーザーに個別、具体的な同意を取る仕組みを導入。契約時に、MVNEがIPアドレス、ポート番号、ヘッダの一部を機械的、自動的に識別していることを明記した。ネットワーク中立性に関しては確定した見解がなく、議論が進んでいないため、決着は今後に先送りされた格好だが、少なくともLINEモバイルがカウントフリーを実施する際の“模範回答”を示せたことは評価できるポイントだ。
一方で、FREETELは後出しでカウントフリーを導入するなど、全てのMVNOが適切にカウントフリーを運用しているとは限らない。MVNOだけでなく、ソフトバンクがキャンペーンで「スポーツナビ」の通信量をカウントから除外するなど、ネットワークを貸す側であるMNOも襟を正すべき状況がある。この点は、2017年以降、MNO、MVNO問わず、業界全体で解決していくべき課題といえる。
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