先述の通り、Y!mobileの603HWは「下り最大612Mbpsが月間容量制限なしで使い放題」という意味で非常に魅力的な選択肢……ですが、カタログスペックでは省電力設定を無効化した場合における連続通信時間は約6時間とされています。これはCAを使っていない場合の数値ですから、CAを利用する下り最大612Mbps通信時は、連続通信時間がこれより短くなることは避けられません。
旧イー・モバイルの「Pocket WiFi D25HW」は連続通信時間が約4時間で、外出して使っているとすぐにバッテリーが無くなってしまうケースが多々ありました。そこから比べると、ここ最近のモバイルルーターは連続通信時間が延び、10時間以上連続して使える機種も珍しくなくなりました。バッテリー持ちの良さが即「ウリ」となることはあまりなくなったのです。
しかしながら、最高通信速度競争が激しくなる中、高速通信に対応するモバイルルーターは、それに対応するがゆえに連続通信時間が短くなる傾向にあります。最新の「超高速」ルーターは、N-01Jを除いてカタログスペック上の連続通信時間が10時間以下となってしまっています。
高速データ通信と連続通信時間の両立は、これからのモバイルルーターにおける共通の課題になるといえるでしょう。
機種 | 発売元 | 発売日 | 最大通信速度(下り) | バッテリー容量 | 連続通信時間 |
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Wi-Fi STATION N-01J | NTTドコモ | 2017年3月 | 682Mbps | 2500mAh | 約11時間 |
Speed Wi-Fi NEXT W04 | KDDI・沖縄セルラー電話 (UQコミュニケーションズ) |
2017年2月 | 440Mbps | 2750mAh | 約6.5時間 |
Speed Wi-Fi NEXT WX03 | KDDI・沖縄セルラー電話 (UQコミュニケーションズ) |
2016年12月 | 440Mbps | 2890mAh | 約7.3時間 |
Pocket WiFi 603HW | ソフトバンク | 2017年2月 | 612Mbps | 2400mAh | 約6時間 |
※通信速度は受信最大速度のみ記載。 ※連続通信時間は最も高速に通信できるモードで記載 |
話は変わりますが、Y!mobileは4月5日からモバイルルーターとタブレット用料金プラン(Pocket WiFiプラン2、Pocket WiFiプラン2 ライト、Pocket WiFiプランSS、Pocket WiFiプランS、Pocket WiFiプランL、データプラン)における通信制限ルールを変更しました。変更点は大きく以下の2つです。
また、通信速度制限中の通信速度は約1Mbps(YouTube動画等の標準画質レベルが見られる程度)とされました。
制限の内容だけを見れば、UQコミュニケーションズ(以下「UQ])が2月からWiMAX 2+サービスで行っているものとほぼ同じで、Y!mobileはそれにある意味で「追いついた」ことになります。
しかし、UQは個別の「お知らせ」で制限ルールの変更内容を伝えるだけではなく、報道関係者に対して丁寧な説明を行い、新製品発表会でも改めてをルール変更の背景や考え方を説明していました。
これに対して、Y!mobileはWebサイトのお知らせに変更内容を載せるのみ、というあっさりとした対応となっています。既存契約者にはメールなどで通知された可能性はありますが、UQの対応と比較すると「サービス改善のための前向きな変更」ではなく、「UQへの対抗上仕方なく行った後ろ向きな変更」という印象がどうしても拭えません。
Y!mobileの前身の1社であるイー・モバイルは、3月31日でサービス開始からちょうど10年を迎えました。当時、イー・モバイルは「高速通信」と「低価格」を武器にモバイルデータ通信サービスをリードしていました。
そのDNAを持つY!mobileは、UQの動きに速やかに対抗するか、3月の「引越しシーズン」に合わせてもっとアグレッシブな改訂をするのではないかと、筆者は密かに期待していました。しかし、UQとほぼ同じ内容で4月5日からルール変更することを、3月に入ってから9日目に“ようやく”発表したのです。
昔のイー・モバイルを思い出した時、現在のY!mobileの姿勢に一抹の「寂しさ」を感じるのは筆者だけなのでしょうか……?
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