もっとも、Tangoはまだまだ対応アプリが少ない。現時点で30種類を超えているとはいえ、厳しい見方をすれば、一般のユーザーが手放せないと感じるキラーアプリは登場していない。ゲームなどはしばらくすれば飽きてしまうし、家具の配置などができるアプリも、毎日使うわけではないだろう。夏までのリードタイムで、どこまでユーザーに刺さるアプリを広げられるかは、ASUSにとっての課題だ。Tango対応アプリの拡大に関しては、プラットフォームを提供するGoogleとの連携も欠かせない。
Daydreamについては、そもそもGoogleからゴーグルが発売になっていない点が、大きな課題だ。ASUSによると、Googleの日本法人とは特に協議は行っておらず、ZenFone ARの投入に合わせてDaydream対応ゴーグルの販売が開始されるかどうかも未定だという。現状ではサードパーティー製ゴーグルも日本では販売されていないため、このままZenFone ARが発売されると、Daydreamの機能が宝の持ち腐れになってしまう恐れもある。Nexus 7などでGoogleと協業してきたASUSだけに、ゴーグルの発売もタイミングを合わせてほしかった。
現時点ではアプリやゴーグルの発売状況次第といったところだが、AR技術のTangoとVRプラットフォームのDaydreamに両対応したことで、ZenFone ARはMR(複合現実)を手軽に楽しめるデバイスになる可能性もある。先に挙げた家具の配置をするアプリも、HMDを通してみれば、よりリアルに部屋の印象をつかむことができる。マイクロソフトがHoloLens発表時に披露した映像のように、部屋の中に、Gmailやマップなどのアプリを表示するといった使い方も可能になるかもしれない。TangoやDaydreamを個別に採用する端末は、今後増加することが確実視されているが、両対応しているのはZenFone ARならではの差別化ポイントにもなる。
ちなみに、ZenFone ARの発表会には、同時にCESで披露された「ZenFone 3 Zoom」も参考展示されていた。発売時期は未定ながら、日本で発売する計画もあるという。ZenFone 3 Zoomは、HOYA製の光学ズームモジュールを搭載した初代ZenFone Zoomとは異なり、焦点距離の異なる2つのカメラを組み合わせて、疑似的にズームを実現しているのが特徴。AppleがiPhone 7 Plusに採用したデュアルカメラに仕組みは近い。
こちらは、ミッドレンジの上位モデルといったスペックで、カメラにフォーカスしたZenFoneだが、以前のZenFone Zoomより、見た目は“普通のスマートフォン”に近くなった。カメラ然としていた先代は、ユーザー層が限定されていた印象もあったが、ZenFone 3 Zoomは、より広いターゲットを設定した端末といえる。発売のタイミングにもよるが、ZenFone ARと合わせて、注目しておきたい1台といえるだろう。
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