「docomo with」「サブブランド」「ラグビー」「顧客対応」――NTTドコモ株主総会一問一答(2/3 ページ)

» 2017年06月21日 09時45分 公開
[井上翔ITmedia]

株主D:ドコモの還元施策とサブブランド・MVNOに対する考え方を質問

―― 顧客還元施策について聞きたい。ドコモでは6月まで「ゴチ4」という還元施策をやっていると思うが、他社と比べるとCMでの告知がなくソーシャルだけ(の訴求)で、対象年齢も狭いように思う。この取り組みに対する評価と、今後の還元施策についてどう考えているのか伺いたい。

辻上広志取締役 今回の(ドコモの)学割は、他社と違ってシンプルで分かりやすい料金プランを出すと同時に、すでに契約済みの人にはポイントで還元したり、毎月おトクを感じてもらえる施策をいくつかの企業とコラボレーションする形でやってきたりした。(学割の提供期間が)終わったばかりで評価はこれからだが、若い人を中心にたくさん使ってもらえたと理解している。引き続き、他社の動向を見つつ、新しいアイディアを実現していきたいと考えている。

―― MVNOについて聞きたい。ソフトバンクは「Y!mobile」、KDDIは「UQ mobile」を(サブブランドとして)持っている中で、ドコモは他のMVNOに任せているような感じがする。高単価のユーザーは自分でやって、そうでもないユーザーはMVNOに任せる方針かな、と思っていたが、docomo withは広告表現上「(1人追加ごとに)280円から」という訴求をしている。

 このような格安プランを出すということは、ドコモ自身がMVNOをやる考えもあるのか、低料金のMVNOとのすみ分けをどのように考えているか、伺いたい。

大松澤取締役 docomo withは先ほど話した通り、1つの端末を長くおトクに使いたい人向けのプランとして出した。また、通話の少ない人、あるいは家族間通話中心の人向けに「シンプルプラン」を出した。これらはお客さまの声を踏まえて、いろいろな利用形態に対応すべく作ったもので、今後も継続的に一番適切なお客さま還元をしていく。

 MVNOに対しての考え方だが、現在のMVNOのほとんどはドコモのネットワークを卸サービスとして使っているものであるという実体がある。そういう意味では、(MVNOサービスのユーザーの多くは)ドコモのネットワークのお客さまともいえる。MVNOは(通信サービス上の)競合関係にあるのは事実だが、ある一面では協業してビジネスに取り組むチャンスもある。

 当社は今までもMVNO市場の活性化に積極的に取り組んできたが、当社だけではできないIoT(モノのインターネット)やM2M(機械間通信)分野など、新たな市場の開拓も実現している。いろいろな連携をして良い面もたくさんある。

 従って、MVNOに関しては「競争」と「連携」の関係であることをビジネスとしてとらえながら、ドコモはドコモで“1つのブランド”として(サブブランドなどに)分けることなく、継続的にお客様還元、アフターサポートの強化などをしっかりやっていくことで、当社を長く使っていただき、さらなるブランド強化につなげることができると考えている。

吉澤社長 私からも補足説明させていただきたい。大松澤(取締役)の話の通り、MVNOには当社の回線をたくさん使っていただいていて、その点で当社は連携させていただいている。今後もどんどん(回線を)使っていただきたいと思っている。

 (Y!mobileやUQ mobileといった)セカンドブランドは、料金は安いがアフターフォローや親身になった相談がなかなかできていないと(考えている)。当社もdocomo with(という安価なプラン)を提供させていただいているが、お客さまに対するサポートは(beyond宣言の)「宣言3」とも関連してしっかりやらせていただく。そういったものをなくして料金だけを安くするようなセカンドブランドは、ドコモとしては出すつもりは今のところ全くない。

beyond宣言その3 ドコモのbeyond宣言では、AIを活用した顧客接点の強化を打ち出している

株主E:ラグビーチーム「レッドハリケーンズ」の活用を提案

―― ドコモの利益剰余金について説明してほしい。現在合計で4.4兆円程度あるかと思うが、昨今の東芝、あるいは少し前の日立製作所の巨額損失でも1兆円程度だったと考えると、「リスク対応」としては2〜3兆円程度あれば十分なように思う。残りを従業員や株主への還元、あるいは既存事業・新事業への投資に充てても良いと考えるが、この4.4兆円に妥当性はあるのか。

佐藤取締役 当社の場合「別途積立金」「繰越利益剰余金」という形でバランスシート上に(法定積立義務のない利益剰余金を)確かに多く持っている。別途積立金については、会社の不測の事態に備えて積み立てているので、毎期の配当の原資とすることは考えていない。

 「剰余金が多すぎではないか?」という点については、東芝さんのように(巨額損失)リスクがあってそれに備えてというものではない。報道されるところによると、東芝さんの場合は買収した海外企業の「のれん」が毀損(きそん)して痛みを受けざるを得なくなった(巨額損失を計上せざるを得なくなった)のではないかと推測している。その面でいえば、当社ののれんは全体として2000数百億円程度しかないため、そういった(のれん毀損による)リスクはない。

 今後、利益剰余金の使い方についてはいろいろ検討したい。

―― ドコモのラグビーチーム「レッドハリケーン」がトップリーグに復帰した。株主総会でレッドハリケーンについて触れられていないのが少しさみしいが、実はこれがビジネスの柱とまでは行かないまでも1つのコンテンツになりうると考えている。

 2019年には日本でラグビーのワールドカップがあり、日本のラグビーチームの実力アップもあり、ラグビー人気も回復しそうである。また「スーパーラグビー」に日本チームが参加するようになって、日本でもその試合を観戦できるようになった。

 レッドハリケーンズを大きく育てれば、「DAZN」のようなソフトウェアの1つとして期待できる。また、本拠地の「ドコモ大阪南港グラウンド」は近隣に空き地も多く、関西国際空港に非常に近い。自前の大きなスタジアムを持って、レッドハリケーンズをスーパーラグビーに参加できる規模に育てれば、ラグビー熱のある大阪周辺からはもちろん、海外からの集客も見込めて、収益も得られると思う。

 これらの点について、どう考えるか。

中山副社長 スポーツはとても大切なビジネスだと考えている。野球やサッカーを含めて、日本人はスポーツをコンテンツとして非常に好んでいる。「DAZN for docomo」はすでに50万、60万のユーザーがいて、サッカーやラグビー、テニスなど世界のさまざまなスポーツコンテンツを楽しんでいる。

 それ以外にも、スポーツに関してはよりビビッドによりワクワクする体感をもって見ていただけるように、スタジアムの内外におけるソリューションをモバイルや通信の技術で実現していきたいと考えている。ラグビーだけではなく、サッカーの「Jリーグ」とも緊密な連携を取りつつ、新しいスポーツ体験の仕掛けを2020年に向けて作っていきたい。

 ご指摘の通り、2019年にはラグビーのワールドカップもある。当社としても、ラグビーの試合をしっかりお届けできるように、これから専門のチームを作って対応していきたい。

 ドコモは幅広くスポーツを支援し、それを幅広く体験いただけるサービスを提供していくので、応援していただきたい。レッドハリケーンズも、より広く知っていただけるように頑張って、今年のシーズンを良い成績で乗り切っていきたい。

株主F:ドコモのインドでの係争と中国事業の見通しを問う

―― 事業報告の「重要な事項」にもある、インドにおけるTata Sons(タタ・サンズ)との係争について、記載の説明では良く分からないのでもう少し詳しく教えてほしい。また、海外事業の重要性がこれから増すと思うが、それを成功させるために社長はどうような考えを持っているのるか。

中山副社長 Tata Sonsはインドの財閥であるTata Groupが所有する持株会社で、その子会社であるTata Teleservicesに、当社も総額2600億円を出資して共同事業を展開していた。しかし、当初の目的が残念ながら達成できず、インド市場の厳しい競争環境の中、つらい判断だったが撤退を決めた。その際に、当社は契約条項にもとづく株式の買い取りを請求したが、そこで係争が発生した。

 2015年1月にロンドン国際仲裁裁判所に仲裁の申し立てを行い、2016年6月に当社が全面勝訴した。命令を執行してもらうためにインドのデリー高等裁判所に別途申し立てをしたところ、2017年4月に執行容認判決を取得した。現在、その支払いに向けたインド国内法上の手続きを進めているところだ。

 今後の海外事業については、私からは基本的な考えを説明し、後で議長(吉澤社長)に補足してもらうことにする。

 当社のグローバル戦略は3つの軸で展開している。1つは通信事業者として「コミュニケーションビジネス」を軸に展開している。当社のお客さまが海外の通信事業者を介して通信したり海外のお客さまが当社のネットワークを通じて通信したりできるサービスを「ローミング」と呼んでいるが、これを使う時の値段を安くしたり、サービスのラインアップを拡充したりしている。

 次に、「グローバルスマートライフビジネス」として、当社が注力している「スマートライフ事業」で展開しているサービスを海外でも使えるように取り組んでいる。6月(28日)からは、その一環としてグアムにおいて「dポイント」サービスの提供を開始する。グアムに行く予定のある人は、ぜひdポイントカードも持って出かけてほしい。

 3番目には、「プラットフォームビジネス」として自動車を支えるIoTビジネスやモバイル決済サービスのグローバル展開を進めている。

吉澤社長 プラットフォーム事業についてはヨーロッパでDOCOMO Digitalを通して展開している。世界中のキャリアに対して課金・認証プラットフォームを提供しているが、(beyond計画の)「宣言6」にもある「パートナーの商流拡大」は海外も視野に入れた上で進めていきたいと考えている。

Tata Sonsとの係争の経緯 質問を想定してか、Tata Sonsとの係争の経緯については説明用スライドが用意されていた
グローバル戦略について グローバル戦略についても、質問が来ると見込んでか説明用スライドが用意されていた

―― お隣の中国は、いろいろな面で大きな動きを見せている。通信事業の分野で中国とどのような取り組みをしているか。あるいは将来、どのような取り組みをしようと考えているか。

中山副社長 中国は人口(の多さ)はもちろん、経済も伸び盛りの国。この巨大市場に、当社としてどうやってアプローチしていけば良いのか日々模索しているところだ。

 通信事業は政府の関与が非常に多く、影響力も大きいので、国内の通信事業にそのまま入っていくのは難しいことが長年の経験から分かってきた。現在は、中国において最大手である中国移動通信(China Mobile)と強力な連携を取ってサービスを共同展開する形で取り組んでいる。

株主G:「女性・若者への投資アピール」や「株主総会のあり方」を提案

―― 携帯電話と同様に株式も多世代な人にもってもらうべきだと考える。例えば女性や若い人に、ドコモ株式をどのようにアピールしているのか。

佐藤取締役 当社では主に個人株主や機関投資家に事業を説明する「IR活動」に普段から取り組んでいる。確かに、当社は「B2C」のビジネスモデルなので、個人株主、例えばご指摘の女性や若い人にも魅力を持って投資してもらおうと考えている。

 例えば、全国の主要都市を回って個人株主向け説明会を定期的に実施して、直接ご質問にお答えして当社のビジネスについて理解していけるように取り組んでいる。また、年に2回発行する「ドコモ通信(株主通信)」で分かりやすくビジネスを紹介したり、WebのIR情報サイトでも情報を提供したりしている。

 最近では、個人株主から施設見学の要望があるので、本社ショールームの見学会やABC Cooking Studioで料理教室を実施するなどして、個人株主に(ドコモを)身近に感じてもらえるような取り組みも行っている。

―― 先ほどの質問と重なる部分もあるが、より多くの株主が参加しやすい日程(土日祝日)での実施や、友達、彼女(彼氏)や家族と来られるような総会の実施を考えてみてはどうか。

中山副社長 素晴らしい意見ありがとうございます。すごく勉強になった。

 現在の会場(ホテルニューオータニ)は、多くの株主の来場を想定して、大人数を収容できること、交通の便が良いこと、災害時発生時の体制がしっかりしていること、バリアフリー施設が充実していることなどを勘案して使わせていただいている。若い人、女性やお子さまがいらっしゃる人が来やすい環境を作れているどうかは、当社としても反省すべき点がたくさんあると思う。

 この意見を真摯(しんし)に参考とさせていただき、今後の株主総会に生かしていきたい。

吉澤社長 総会はたくさんの株主に来てもらうために、どうしても制約が出てしまう。

 先ほど佐藤(取締役)も言っていた通り、個人投資家とコミュニケーションを取る場をさまざまに設けているが、そこでご提案していただいた女性や若い人が来やすい環境の構築を検討していきたい。

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