選考委員が選ぶ「2017年を代表するスマホ」は?(後編)スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2017(2/2 ページ)

» 2017年12月29日 09時30分 公開
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らいら氏:何かをしなくて済む シンプルになっていくiPhone X

らいら氏 らいら氏

らいら氏 「iPhone X」はガラスの上品さ、垢抜け感といったデザインをまず評価しました。先日、初代のiPhoneを見る機会があましたが、iPhone Xは側面のデザインとか丸みがそれとそっくりなんですね。10周年という原点回帰感があると思います。進化しつつも温故知新で昔の良さを採り入れています。

 「Face ID」で実現するスマホ体験も好印象ですね。iPhoneに限らず、今までのスマートフォンは何かを操作することで何かができるようになる、という機能追加、技術の進化をしてきましたが、Face IDは何もしなくてもIDとパスワードが自動的に入力されますし、画面を注視している時は、Safariを操作していなくても「画面を読んでいるよ」と判断し画面が暗くならない。

 機械学習の進化もそうですけど、「何かをしなくてすむ」機能がある。これからのスマホはユーザーのやるべきことがどんどん削ぎ落されてシンプルになっていくのかな、というのが見えた気がします。

 「Galaxy Note8」は手書き機能が良いですね。画面ロックしたままでもペンで書けて、筆圧感知ができるので鉛筆っぽい書き味で心地よく、使いやすい。流行語に「インスタ映え」が選ばれましたが、Instagramでは手書き投稿も増えてきておて、今日(審査会の日)も「手書きツイート」というタグの投稿が28万件くらいありました。私自身も今年じゃ一部記事を手書きで書いて(描いて)みて、デジタル時代だからこそ、手書きの目を引く感じとか、書いた人の個性が見える良さを改めて認識しました。

 Galaxy Note8のように手書きができるデバイスがもっと増えて認知されたら、新しいSNSの使い方を見つける人も増えるかもしれませんね。

 私はApple Watchをきっかけにランニングを始めました。「Apple Watch Series 3」では単体でモバイル通信ができるようになったので、手ぶらで走っていても着信や通知が分かります。これは聞く以上に体感すると衝撃ですよ。他のランナーを見ているとまだ腕にiPhoneをつけたり、ポケットにiPhoneを入れてケーブルをぶらぶらさせながらイヤフォンを使っていたりする人が普通にいます。スマートウォッチだけ身につけて”身ひとつ”で走れる快感を、同じランナーの人たちに知ってほしいですね。

 「TONE m17」は、ハードウェア単体のスペックは高くありません。しかし、「見守り機能」や手書きのシートを撮影すると初期設定を行える機能、購入時の箱に置くだけで不具合を検知してくれる機能など、子を持つ親やシニア層に寄り添った機能が作り込まれていて、そのアプローチが好きですね。

 ターゲットを絞ってきめ細やかなサービスを組み合わせるというのは、日本らしいスマホだなと。本当の「ガラパゴススマートフォン」だと思いました。特殊詐欺防止のあんしん電話機能もあり、社会の課題を解決するためのスマホということもあって取り上げました。

 今回選んだ端末は、「ライフスタイルを変える抜きん出た機能」が1つでもある、という視点で選んでいます。ただ。「HUAWEI Mate 10 Pro」はライフスタイルを変えるというよりも全体的な完成度が高い点を評価しています。AIとLeicaレンズを組み合わせたカメラ体験、はやりの機能を取り込んでハイスペックな1台に仕上げています。Huaweiのカメラというのは、モノクロ撮影、ワイドアパーチャとか撮っていて単純に楽しい、それがスマホのカメラの良さだと思うので引き続き楽しみにしています。

TONE m18 トーンモバイルの「TONE m17」は、富士通コネクテッドテクノロジーズの「arrows M04」とほぼ同スペック。スペックよりもサービスに力を入れた点で特徴的だ

村元氏:スマホ機能の“上げ止まり” 使う楽しさを盛り込めたか?

村元氏 村元正剛氏

村元氏 久しぶりに楽しいiPhoneということで「iPhone X」を候補に入れました。

 「iPhone 6s」と「iPhone 7」は持っていたもののあまり使っていませんでしたが、iPhone Xはカメラの満足度が高いのでは積極的に使っています。スマホが苦手とする暗い場所でも素早くピントが合いますし、前はもうちょっと粗っぽい画質でしたが、iPhone Xは鮮明かつシャープに撮れます。

 操作感も意外と楽しく、ロック解除でふわぁと通知が全部見えてくるのも楽しいです。インカメラもFace IDのために深度を測るだけでなく、ポートレートライティングにも活用していますし、「アニ文字」まで作れて、1つ新しい機能が加わるとさらに広がりがある、使う人がこんなことまでできるんだ、という楽しみがあります。

 「Galaxy Note8」は「Galaxy S8」でできることが全部できる上、(サイズが)大きいとも感じません。3年前までのGalaxy Noteだと「Sペン」がクリエイティブな人向けの印象でしたが、Note8では使いやすくなりました。画面がスリープしたままでもペンを取り出せばメモを書けるし、写真に「ライブメッセージ」を載せる機能など誰でも楽しめるのが好きですね。S8の完成度にそのままペンの楽しさが載り、より多くの人に使えるよう仕上げてきた。プラスアルファの演出がきっちりできています。

 スマートフォンの機能が「上げ止まり」する中、iPhone XとGalaxy Note8は使う楽しさも盛り込んできた端末といえます。

 「HUAWEI P10 lite」は質感が高く、「HUAWEI P8lite」や「HUAWEI P9 lite」にあったモサッとした操作感が無くなり、スマートに使えます。サイズ感も良いですね。今年は「HUAWEI nova lite」「HUAWEI Mate 10 lite」も登場しましたが、P10 liteをHuaweiのlite戦略を代表する機種として挙げてみました。安価なSIMロックフリースマホの売れ行きが伸び悩む中、好調な売れ行きを示していたのも評価できますね。

 「Moto X4」は5万円台として完成度は十分で、インカメラの性能も良いと思います。Motorolaは昔からモバイル端末を作っていて、やっとSIMロックフリー端末市場で頭角を表し、今年は存在感が増したので、その象徴として候補に入れました。

 同じMotorolaでも「Moto Z2 Play」のほうが遊び心があって個人的には好きでしたが、Z2 PlayはZ Playの後継モデルだし、「Moto G5S」も良かったけれども、新しいMoto X4の方がノミネートにはふさわしいでしょう。

 「AQUOS R」はシャープブランド復活の象徴として挙げています。台湾の鴻海(ホンハイ)傘下になって、(2017年は)巻き返しの元年になったかな、と。「ロボクル」も良かったし、最近のAIブームでも、シャープは「ココロエンジン」や「エモパー」もやっていますからね。

Moto X4 「Moto X4」は、手頃な価格とカメラ性能の良さが評価された

ITmedia Mobile編集部:iPhone Xは読者の注目度も明らかに高かった

田中編集長 ITmedia Mobileの田中聡編集長

編集部(編集長・田中聡) メディアの視点から見ると、「iPhone X」が間違いなく一番ページビュー(Webページの閲覧数)を獲得しています。記事の本数が多いということもありますが、読者の注目度も明らかに高かったです。個人的には、新しさがありつつ色物でもなく操作感も伴っているのは高く評価しています。

 皆さんがおっしゃるように、ホームボタンが無くてもちゃんと操作できますし、Face IDもしっかり使えます。サイズ感も良いです。私は「iPhone 7 Plus」を使っていましたが、同じサイズ感のiPhone Xのほうが持ちやすく、側面の丸みも相まって他の端末と比べても手にフィットします。ユーザーインタフェース(UI)やデザインも完成度が高いものをつくったな、と思います。

 「Galaxy Note8」は、ペンがあるのはこのNoteシリーズだけ、というのが強みですね。日本では3年ぶりのNoteということもありましたし、光学手ブレ補正対応のデュアルカメラなど、iPhone対抗でトレンドをしっかりキャッチアップし、総合的にも完成度が高い点を評価しました。

 「HUAWEI Mate 10 Pro」ですが、12月発売ということで異例ではありますが、審査会前の発売ということもあってノミネート対象としました。「HUAWEI P10」よりもカメラの感度が上がり、シーン認識の精度も向上しています。ポートレートモードにしなくてもAIが自動で判別すれば人物の背景をぼかして撮るなど、AIを生かした進化もありました。ただ、AIと言っても「Google Home(Googleアシスタント)」や「Siri」のようなアシスタント的なものではないので、そこが一般ユーザーにどこまで伝わるか、というのは今後の課題でしょう。Leicaのカメラも進化しており、トータルで評価が高い端末です。

 「AQUOS R」は今年のシャープの頑張りを象徴しています。日本国内の販売だけでは規模が小さいのですが、スペックだけでは計れない面があります。例えば、側面の角が絶妙なエッジで持ちやすいとか、ハイスピードIGZOを使った操作とか、日本人に寄り添った細かい気配りで進化をしています。(キャリア間で異なっていた)ブランド統一も行い、ここで仕切りなおして頑張っていくというのが感じられますね。座談会のあとに販売される「AQUOS R Compact」も、EDGESTが復活するということで、この路線が続くなら来年もワクワクするような端末がでるかという期待もあります。

 ITmedia Mobileでは、毎週土曜日にGfK Japanが集計している家電量販店における携帯販売ランキングを掲載しています。iPhone Xの発売後、3キャリアのiPhone Xが総合ランキングをほぼ独占する中、唯一しばらくランクインしていたのが「HUAWEI P10 lite」です。やはり3万円台という価格帯が受けたのでしょう。今年は4〜5万円台のスマホが増えましたが、3万円台というリーズナブルな価格で、iPhoneと対等に渡り合ったといえるでしょう。

AQUOS R シャープの新しいフラグシップスマホ「AQUOS R」。同社の勢いが再び戻るきっかけとなった機種の1つだ

 審査会における選考委員のコメントは以上となります。

 この後、ノミネート機種への投票に移りました。果たしてどの機種が「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2017」に輝いたのでしょうか……?

 次回、ついに発表します!

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