「自転車ながらスマホ」の危険性をVRで体験――KDDIなど3社が啓発活動(3/3 ページ)

» 2018年03月20日 19時20分 公開
[井上翔ITmedia]
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増える「自転車の対人事故」 増える「自転車保険義務化」

京都府の犬井勇司氏 京都府の犬井勇司安心・安全まちづくり推進課長

 冒頭で述べた通り、自転車事故の件数は減少する傾向にあるが、自転車の重過失事故比率や対人事故件数は増加傾向にある。

 この傾向は京都府も例外ではない。京都府で2017年に発生した自転車側に責任のある(自転車運転者が第1当事者となる)事故件数は261件と、2016年比で27件減少したが、自転車事故全般に占める割合は1.1ポイント増の18.3%となった。自転車の対人事故も56件から62件に増加している。

 京都府で自転車側に責任のある事故を起こした運転者を年代別に見ると、30歳未満が52%を占め、その過半が20歳未満だった。この傾向は全国的に見られるという。

自転車が第1当事者の事故件数と割合自転車の対人事故件数と割合 自転車側に責任のある事故の割合は増加傾向にあり(写真=左)、自転車による対人事故は件数も割合も増加傾向にある
年齢層 自転車側に責任のある事故を起こした運転者は、過半数が30歳未満の若年層
au損保の田中営業企画室長 au損保の田中尚営業企画室長

 若年層が自転車事故を起こした場合、問題となるのが民事上の賠償責任だ。

 2008年、当時小学5年生だった少年が自転車を運転中に歩行者と正面衝突を起こす事故が神戸市で発生した。衝突された被害者は寝たきりの状態が続き、その家族が損害賠償を請求する民事訴訟を提起した。結果、2013年に少年の保護者(母親)が9500万円の賠償金を支払うように命じる判決が出た。

 この「9500万円」が現時点における自転車事故に関する損害賠償の最高額だが、他にも数千万円単位の高額賠償に至った自転車事故の事例は複数存在し、中には賠償金を払えないことから事故の加害者が自己破産に至ったケースもある。加害者が自己破産した結果、被害者が治療費や生活費を工面できず、経済的困難に立たされることもあるという。

Lose-Loseな関係 事故加害者が高額賠償に耐えきれず自己破産→被害者が治療費・生活費を捻出できないという「負のスパイラル」に陥ることも

 自動車や原動機付自転車の場合、強制保険である「自動車損害賠償責任保険(自賠責)」がある上、任意の自動車保険も広く普及している。しかし、自転車には法律上の強制保険の仕組みがなく、任意保険としての自転車保険の加入率も高くないために被害者・加害者ともに「救われない」結末になりやすい。

 このような状況を踏まえ、被害者の救済と加害者の経済的負担を軽減する観点から自転車の運転者に対して自転車保険への加入を条例で義務づける自治体が出てきた。2018年3月現在、以下の自治体では自転車保険への加入が義務づけられている。

  • 名古屋市
  • 滋賀県
  • 大阪府
  • 兵庫県
  • 鹿児島県

 さらに、2018年4月からは埼玉県と京都府でも自転車保険への加入が義務化される。また、自転車保険への加入を「努力義務」として定める自治体もある。

義務化状況 自転車保険への加入を義務化、または努力義務としている自治体。今後も増加が見込まれるという

 今後、条例による自転車保険の加入義務化・努力義務化はより進むと思われる。自転車によく乗る人は、お住まいの自治体における自転車保険の義務化状況をまず調べてみると良いだろう。

取材協力:KDDI株式会社

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