auのNetflixセットプラン、「ワクワク感」を出すにはもう一歩工夫が欲しい石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2018年06月09日 09時51分 公開
[石野純也ITmedia]
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課題も残るauのバンドルプラン、ネットワーク中立性も歯止めに

 もっとも、取材を通して、auフラットプラン25 Netflixパックには課題も残されていると感じた。1つは、データ容量が本当に25GBで十分なのかということだ。KDDI側は「25GBには意味があり、月100時間分の再生時間に相当する。2010年を振り返ると、平均世帯の1カ月のテレビ視聴時間に相当する。モバイルだけで1カ月の映像視聴の需要を満たすスタートプランとして設定させていただいた」と説明するが、逆にいえば、Netflixを100時間見ると、他の通信が一切できなくなってしまう。

 auフラットプラン30が上位プランとして存在するため、25GBという数値もややインパクトが弱い。先に挙げたように、細かく計算するとお得感があることは理解できるが、現状のままだと直感的に安いと感じられない。既存のauフラットプラン20に、Netflixを視聴する25GBを足し、45GBにNetflixやauビデオパスをバンドルしていれば、高橋氏がキーワードとして使う「ワクワク感」をもっと出せたかもしれない。

auフラットプラン25 Netflixパック 現状の建付けだとお得感が直感的に理解しづらく、「ワクワク感」を感じるにはあと一歩工夫が必要だと感じた

 ソフトバンクが「ウルトラギガモンスター」として50GBの超大容量プランを提供していることを考えると、45GBに設定しても、インフラがパンクするといった事態にはならかなかったはずだ。auフラットプラン30を統合する形で、「auフラットプラン45 Netflixパック」のようにしてもよかったように感じる。45GBのバンドルプランであれば、ソフトバンクへの対抗策にもなったはずだ。

 KDDIの高橋氏は「20GBをベースに、それ以外のプランについても必要であれば考えていけばいいと思っている。30GB、50GBといろいろなプランがあるが、諸外国を見ると無制限まであり、いろいろなバリエーションが存在する。20GBと5GBにコンテンツをバンドルした初めてのプランで、お客さまを見ながら(プランを)追加していきたい」と、今回のバンドルプランはあくまでスタート地点であることを強調する。5G導入のタイミングで見直しをかけてもいいだろう。

 Netflixを視聴した際の通信量をデータ通信のカウントから除外するゼロレーティングを実施する手もあったが、こちらは「公平性の観点でグレーという話が(総務省から)あった。MNOは厳格にということで、やっていない」(高橋氏)と、ネットワーク中立性に配慮した結果、導入が見送られている。

 特定のサービスやコンテンツとの通信を課金しないゼロレーティングは、「LINEモバイル」や「OCN モバイル ONE」「BIGLOBEモバイル」など、幅広いMVNOに広がっているが、仮に契約者数のケタが1つ、2つ大きいauで導入されると、上位レイヤーに与える影響も大きくなる。Netflixにゼロレーティングを適用すると、他の動画コンテンツを持つサービスとの格差が大きくなりかねないため、議論が巻き起こりそうだ。

auフラットプラン25 Netflixパック LINEモバイルをはじめ、MVNOではカウントフリーが広がっている

 とはいえ、現状では「グレー」と表現されていたことからも分かるように、ゼロレーティングを、ネットワーク中立性の観点で直接的に規制する法律やガイドラインは存在しない。バンドルプランをいち早く導入したKDDIが、ルール作りの音頭を取ってもよかったのではないだろうか。いずれにしても、5G時代にバンドルプランが増えてくる前に、ゼロレーティング的なサービスをどこまでを許容すべきなのかは、総務省などを中心に改めて整理しておいた方がいいと感じた。

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