しかし、楽天に回線を提供しているNTTドコモは、RMNによるMNOサービス開始後の回線貸し出しに否定的だ。「子会社がLTE通信サービスを提供しているのに、親会社がグループ外企業からLTE通信サービスの提供を受ける」という状況は確かに違和感を覚える。
過去の事例をひもとくと、ウィルコム(現・ソフトバンク)の「WILLCOM CORE 3G」が思い浮かぶ。ウィルコムは自前でW-CDMA(3G)通信設備を持っていなかったため、MVNOとしてNTTドコモからFOMA回線を借りてサービスを提供していた。
しかし、同社が会社更生法適用を申請し、その後ソフトバンク(現・ソフトバンクグループ)の下で再建を開始することになった際、WILLCOM CORE 3Gはソフトバンクモバイル(現・ソフトバンク)回線を使うサービスに衣替え(参考記事)。ドコモ回線を使う旧サービスはインターネットイニシアティブ(IIJ)に事業譲渡し、ユーザーサポートや料金関連業務をウィルコムが再受託するという形でサービスを継続した。この旧サービスも、2017年11月30日をもって終息している。
話がわき道にそれたが、この事例を参考にすると、MNO(のグループ会社)がグループ外のMNOから回線を調達してMVNOサービスを提供することは困難であると思われる。
質疑応答や囲み取材でも、この点に関する疑問がぶつけられている。
―― 今回「2年」「3年」という長期契約(を優遇する)プランを提示した。契約期間を拘束するに当たって、3年後も(ユーザーの契約期間が満了するまで)NTTドコモからネットワークを借り続けることを担保できているのか。
大尾嘉執行役員 そうだ。
―― 間違いなく、大丈夫か。NTTグループ(NTTドコモやNTT)には(引き続き楽天に対して回線を貸すことに)否定的な声もあるが。
大尾嘉執行役員 はい。
RMNがMNOサービスを開始した後も、楽天はMVNOとしてNTTドコモから回線を借りられると考えているようだ。
万が一、楽天がNTTドコモからの回線提供を受けられなくなった場合、楽天がRMNから回線を借りて(=元回線を変更して)サービスを継続するという「ウルトラC」も考えられる。この点についても、記者と大尾嘉執行役員とのやりとりがあった。
―― (MVNOサービスとしての)楽天モバイルの回線について、NTTドコモ回線を継続して使うのか、タイミングはさておき、ゆくゆくはグループ(RMN)の回線に切り替えるのか。
大尾嘉執行役員 先々の話はできないが、現状の楽天モバイルのユーザーはドコモ(回線)のまま提供する。
MVNOとしての楽天モバイルを継続利用したいユーザーに対しては、あくまでもドコモ回線のままサービスを提供する意向のようだが、MNOとしてのRMNが回線を貸し出す条件の詳細が出てこないことには分からない点もある。なお、RMNはMVNOへの回線提供を2020年4月から開始する計画となっている。
先述の通り、RMNのMNOサービスは、楽天モバイルの現行料金プランと同じプランを用意する予定。そうなると、同じ料金プランのMNOサービスとMVNOサービスがグループ内で“競合”することになってしまう。この問題はどうするのだろうか。
―― 2019年時点ではMNOサービスとMVNOサービスが併存することになると思うが、どうすみ分けるのか。
大尾嘉執行役員 今はお答えできない。
MNOサービスの詳細を公表する際の「お楽しみ」となるようだ。
あくまでも“MVNOサービス”の楽天モバイルの発表会だったこともあり、MNOサービスについての新たな情報はほとんど出なかった。
今後、楽天は「MVNO」「MNO」をどうするのか。“答え”が見えてくるのは少し先になりそうだ。
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