こうした「リアルさ」を体験するための手段はARだけではない。同じ世界と時間を複数のプレイヤーと共有することで、それがより現実的なものとして認識できるようになる。「それだったら、IngressやポケモンGOもマルチプレイヤーで1つのゲーム世界を複数のユーザーで共有しているが、新しい技術は何が違うのか」と思われるかもしれない。
これらのゲームは確かに世界と時間を他者と共有しているが、正確にいえばリアルタイムではない。現在ゲーム世界で起こっている現象をユーザーが認識した後に、何らかの操作を行ってその情報がクラウド上のサーバに反映され、その結果が再びクラウドから各ユーザーの端末へと通知される。
つまり、実際にゲーム世界(クラウド)で起きた現象に対して、あるユーザーが起こしたアクションが全てのユーザーに通知されるまで、少なくとも通信時間にして1往復以上のラグが発生している。
この反応時間はサーバへの距離の問題もあり、数十ミリ秒から数百ミリ秒程度かかることも多々ある。非常に短い時間に思えるかもしれないが、アクションゲームではかなり致命的な問題だ。ポケモンGOのバトルが完全にリアルタイム処理されていない理由はここにあると考える。
そこでNianticが提案するのが、新しい共有型プラットフォームだ。従来は必ずクラウド上のサーバを経由して行っていた通信を、その場にいる端末同士で直接行ってしまい、反応時間を大幅に圧縮する。
同社によれば、通常では100ミリ秒以上かかるレスポンスが、この仕組みでは10ミリ秒以下に短縮できるため、人間の一般的な反応速度ではほぼ“ラグ”が気にならないレベルだ。「距離的に近いユーザーでないと通信できない」「レスポンスを維持するために同時プレイ人数の制限がある」といったデメリットはあるものの、対人戦あるいは協力プレイを必要とするリアルタイムゲームが比較的容易に実装できるようになる。
これを利用したデモストレーションが2種類公開されており、それぞれ「Neon」「Tonehenge」の開発コード名がつけられている。デモ用とのことでゲーム性は少ないものの、ゲームの構築には数日程度しかかかっていないとのことで、こうした仕組みで比較的簡単にゲームが作成できるようだ。実際にどのようなゲームを作るかはアイデア次第なのだろう。
こうした技術をNianticがアピールするようになった背景には、既にリリース済みのゲーム群での実績と合わせて、Niantic Real World Platformを開発者らにより活用してもらいたいという狙いがある。
Nianticには世界規模で位置情報を使ったARゲームを運営できるだけの基盤があり、もし開発者や潜在的なパートナーがアイデアや(ポケモンやハリポタのような)優れたIPを持っていた場合、これを活用して一緒にゲームやサービスをリリースしてみないか、と訴えているわけだ。つまり、ARゲームのプラットフォーム化であり、今後同社がステップアップするためのビジネスモデルとなる。
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