“予備の予備”大ゾーン基地局を初運用――ドコモが災害対策の近況を報告(1/3 ページ)

» 2018年11月06日 19時30分 公開
[井上翔ITmedia]

 2018年7月から9月にかけて相次いだ自然災害。とりわけ、9月3日から5日にかけて四国や本州に上陸した「台風21号」と、9月6日に発生した「北海道胆振(いぶり)東部地震」は広範囲に大きな爪痕を残した。各キャリアの携帯電話ネットワークも例外ではなく、台風と地震の影響による障害が発生した。

 胆振東部地震からおよそ2カ月経過した11月5日、NTTドコモは報道関係者を対象とする災害対策に関する説明会を開催した。大規模な災害が連続して起こる異例の事態に、ドコモはどのように対処したのだろうか。

タイトル 説明会のタイトルは「近年の激甚化・広域化する災害を踏まえたNTTドコモの災害対策」
小林和則室長 説明を担当した災害対策室の小林和則室長

「東日本大震災」の反省を踏まえた対策

 会社の設立当初から、ドコモでは「災害対策3原則」を定め、災害発生に備えた「システムとしての信頼性向上」、緊急通報番号(110番・118番・119番)などに対する「重要通信の確保」、災害発生後の「通信サービスの早期復旧」の3点について継続的に体制を整えてきたという。

ドコモの災害対策3原則 ドコモ設立当初に定めた「災害対策3原則」。これらの原則は現在に至るまで同社の災害対策の根底にある

 しかし、2011年に発生した「太平洋東北沖地震(東日本大震災)」では、停電の長期化による基地局の予備電源(バッテリー)の枯渇、光ファイバーなどによる伝送路の破断や地震・津波による基地局の損壊・水没など、それまでの取り組みではカバーしきれない問題が発生した。

 その反省を踏まえて、ドコモは従来の3原則に加え「重要エリアにおける通信の確保」「被災エリアへの迅速な対応」「災害時におけるお客様の利便性向上」の大きく3点について追加の取り組みを実施。2012年度までに対策を完了した。

東日本大震災の被害状況対策 東日本大震災で発生した被害(写真=左)を踏まえ、新たな災害対策(写真=左)を実施

 新しい対策として当時打ち出されたものの1つとして「大ゾーン基地局」がある。これは人口密集地や行政機関の集まるエリアに設置される「予備の予備の臨時基地局」(小林和則災害対策室長)で、全国に106箇所設置されている。一部を除き、最大で半径7kmをエリアカバーできる出力を有しており、2016年度末までにXi(LTE)にも対応している。

 「予備の予備の臨時基地局」という言葉からも分かる通り、平常時に大ゾーン基地局は稼働していない。もしも災害が発生してエリアカバーに問題が発生したとしても、安易には稼働しない。「(サービスが)中断した基地局を、周辺の基地局でカバーできる」(小林室長)ことが多いからだ。

大ゾーン基地局 東日本大震災の反省を踏まえて作られた「大ゾーン基地局」。あくまでも臨時基地局という扱いで、災害時にある意味で「最後の手段」として稼働することを想定している

 都道府県庁や市区町村役場をカバーする基地局については、「エンジン(発電機)による無停電化」または「最低24時間(1日)稼働できるバッテリーの設置」を行っている。その他の基地局についても、原則として何らかの予備電源をもっているという。

長時間稼働化 電源を喪失した場合でも稼働できる対策を実施

 2016年度からは、通常の基地局の装備を強化して災害時にカバーするエリアを広げられる「中ゾーン基地局」も展開。2019年度末までに全国に2000局以上を整備する予定だという。

中ゾーン基地局 災害対策の一環で、通常基地局の装備を強化した「中ゾーン基地局」も整備
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