緊急提言案のもう1つの柱が、携帯電話と光インターネット回線(FTTH)における「販売代理店の業務の適正性の確保」だ。
2015年に電気通信事業法が改正され、消費者保護に関するルールが定められて以来、電気通信に関する苦情件数は減少傾向にある。しかし、その減少は緩やかで、とりわけ携帯電話の店舗販売とFTTHの電話勧誘に関する苦情件数は高水準となっている。苦情の多くは不適切な勧誘や説明に起因するものだ。
同法では、キャリアに委託業務に対する指導を義務付けており、一部の違反行為に関しては総務省が販売代理店に対しても業務改善命令を出せるようになっている。しかし、販売代理店は「一次」「二次」「三次」と複層構造になっており、キャリアのよる指導が十分に行き渡りづらいという課題がある。その上、現行の法令では代理店独自の過度な端末購入補助や不適切な勧誘・広告に対して総務省が業務改善命令を直接出せず、実態把握も十分にできていないという問題がある。
そこで、電気通信事業法の改正も視野に、今回の案では以下のような提言を盛り込んでいる。
端的にいえば、総務省が販売代理店に直接的な指導・監督を行えるようにすることを提案している。販売代理店の届出制導入は、一次代理店の傘下に入る二次以降の代理店も対象となる想定だ。
今回の提言案では、「過度」「合理的」といった言葉が何度か登場する。今後、どのような行為・施策が「過度」で、何をもって「合理的」であるのかという“線引き”をどうするのかという点が大きな焦点となる。
線を引くための「物差し」が曖昧では、規制の目をかいくぐって利用者のためにならない「施策」が新たに登場するかもしれない。一方で、「物差し」を厳格にしすぎると、キャリアや販売代理店の自主性がそがれ、回り回って利用者にデメリットを押しつける可能性もある。
冒頭でも触れた通り、総務省は12月18日まで、この提言案に対する意見を募集している。2019年1月中には、パブリックコメントで寄せられた意見を加味した緊急提言が取りまとめられる予定だ。
筆者的には、端末メーカーと経済産業省が“不在”のまま今回の議論が進んでいることに違和感を覚えた。この緊急提言案と、それによってもたらされるであろう変化は、キャリアや通信事業者だけでなく、日本で端末を販売するメーカーにも、プラス・マイナス双方の影響をもたらすはずだからだ。
「通信と端末の分離」を進めるなら、もう「片方」のプレーヤーの考えを知ることも重要だと思うのだが……。
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