―― 御社の基地局設備において、「Massive MIMO」など、Huawei製が(シェアや技術的に)強い機器を使っていると思います。これは据え置くのか、それとも何らかのオルタナティブを検討しているのでしょうか。
宮川副社長 もしも(政府の方針によって)巻き取る必要が生じた場合は、無線機の部分を入れ替えることになると思います。
Massive MIMOの導入開始当時は、正直(商用サービスに耐えうる製品を)中国ベンダーしか提供できませんでした。なので、Huaweiの技術(や機器)を導入しました。
しかし、5Gの本格導入が近づいたこともあり、ヨーロッパのベンダーもMassive MIMOに取り組むようになったので、いつでも(Huaweiの技術や機器から)入れ替えることは可能です。
ただ、Huaweiには世代の先を見通す力がありますので、入れ替えるかどうかは政府の方針を見て検討したいと思います。
―― 5Gの免許割り当て指針案では、現行のネットワークを含めて、事実上中国ベンダーを意識した面があります。
5Gのインフラが4Gインフラからの移行を前提として展開することを考えると、広い範囲で(中国メーカー製のネットワーク機器の)除却を迫られることも想定されますが、どうお考えでしょうか。
宮川副社長 私は以前、米Sprintに出向していました。その際に、今回の件と似た話がありました。
Sprintが買収した(モバイルブロードバンド事業者の)米Clearwireのネットワーク機器が、たまたまHuawei製の機器を中心とするネットワーク構成でした。(買収の際に)米国が「7年間かけてHuawei製の無線機を撤廃してくれ」ということを(条件として)提示してきたので、運用を続けながら入れ替えを進めて、2年前(2016年)に出向から戻る頃には前倒しで(Huawei製無線機の)巻き取りを完了しました。
その際、どのようなものがセキュリティ上問題となるのかという議論を(米国の当局と)たくさんしました。例えば4Gネットワークなら、米国では無線機側はあまり問題にしておらず、先ほどの例のように7年間かけて巻き取れ、としてきました。一方で、インターネットに直接つながる部分や、顧客データベースといったコア側の設備は即時入れ替えを要求してきました。暗号化されたデータがただ行き来するだけということもあり、伝送系についてはあまりうるさく言われませんでした。
同様に、日本政府に対しても、どのレイヤーまで(機器の入れ替えが)必要なのかという話をしているところです。当時の米国の基準通りであれば、現時点で巻き取るべき(中国メーカー製の)機器はほとんどない認識です。
ただ、万が一、政府方針で「まとめて巻き取れ(入れ替えろ)」ということになれば、できる範囲で巻き取りを進める腹はくくっています。
―― 万が一コアも含めて丸ごと中国メーカー以外の機器でリプレースとなった場合、(収益に)どれくらいのネガティブな影響があるのか。
宮川副社長 4GネットワークのコアにはHuaweiを含む中国メーカー製の機器はほぼ入っていませんが、機器増設に当たって部分的に導入しているのものはあります。
これをリプレースする場合、他のメーカーの機器を機能拡充することで対応すると思いますが、数億円台前半程度の投資で済むと考えています。
―― 既存の基地局のうち、HuaweiやZTEといった中国メーカー製のものは全体のどのくらいの割合を占めているのか。
宮川副社長 局数(に占める割合)は非開示とさせていただきたい。
「ヨーロッパ系2社」「中国系2社」という形で累計投資額をもとにざっくりと比較すると、投資額の1割が中国ベンダーということになります。(中国メーカーの機器を除却する場合でも)投資額ベースではそれほど大きなダメージを受けることはありません。
現在、私たちは3Gネットワークと4Gネットワークを運用していて、3Gを4Gに切り替える作業を進めている最中ですが、今度は段階を経て4Gを5Gに切り替えることになっていくと思います。
4Gから5Gへの切り替えに当たっての投資金額は、すでに計画に織り込み済みです。「5Gに入れ替え時にベンダーを変えろ」ということになった場合は、計画の範囲で内々に処理(金額の組み替え)ができると考えていますが、「4G機器を入れ換えてから」となると、場合によっては年間数百億円という規模感で除却コストが発生する可能性もあります。
私としては、4Gから5Gへの入れ替えのタイミングで除却するのが望ましいと考えています。
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