2017年のMobile World Congressで、Qualcommを含む関連各社合同で発表した「5Gローンチを2020年から2019年に1年前倒しする」宣言から2年――。ついにその時が到来したMWC19 Barcelonaは、「5G」を看板に掲げる各社最後のアピールの場となっている。「約束は果たした」というQualcommだが、実際、2019年から2020年にかけての携帯ネットワーク事情はどうなるのだろうか。最新の動きをまとめてみた。
同社はMWC 2019開催初日にあたる2月25日(欧州時間)に報道関係者向けの説明会を開催し、現時点での5Gアップデートを発表している。
基本的には2018年12月に米ハワイ州マウイ島で開催された「Snapdragon Summit」の内容から大きな変化はないが、その際に発表されたSnapdragon 855は既に30以上の製品で採用されたことがアナウンスされている。また、商用製品を含むプロトタイプの数々が計7社から持ち寄られ、MWC展示会場のQualcommブース内でSub-6やミリ波によるライブデモが実施されている。
まだ公式な登場タイミングは明らかにされていないものの、これらの製品の多くは2019年中に市場投入されることになり、当初うたわれていた「2019年内(スマートフォン製品での)商用ローンチ」という公約は果たされることになる。
そういった形で、今回Qualcommから発表された内容の多くは2020年をターゲットにした製品開発に向けた「下準備」といえる製品や技術の数々だ。Snapdragon 855は、同社の「Snapdragon X50 5G modem」と組み合わせることで5G通信に対応するが、2020年前半の商用製品投入を目指した統合型5Gプロセッサが発表されている。詳細スペックが不明なため言及しにくいが、現時点で未発表のSoCコアと組み合わせることで、より少ないチップ点数で、安価により自由な小型軽量デザインでのスマートフォンや関連デバイス開発が可能になる。
同様に、2018年12月のマウイ島で発表されたエンタープライズPC向けプロセッサ「Snapdragon 8cx」についても、当初のLTE対応に加え、5G対応のデザインが公開されている。5Gのローンチ都市の少なさやカバーエリアの問題、そしてSnapdragon搭載Always Connected PCの広がりの少なさを考えればまだ需要は少ないと思われるものの、「全て5G Ready」をアピールする上で同社にとって重要なステップなのだろう。
5G以降に追加される新しい帯域にSub-6(6GHz帯以下)とミリ波(30GHz以上の高周波数帯)があるが、従来とは電波特性が大きく異なるため、当初はカバーエリア拡大に非常に苦慮することが予測されている。ブースのデモンストレーションで紹介されていたのは「Sub-6のみ」「ミリ波とSub-6両対応」の2種類で、(例えば中国向けはSub-6中心など)市場ターゲットに合わせた色づけがなされている。
ライブデモでも「5Gならでは」をアピールすべく、4K動画のストリーミングを行った他、低遅延をアピールすべく「Steam」でストリーミング配信される格闘ゲーム(ソウルキャリバー6)で対戦を楽しめるなど、いろいろ工夫されているようだ。
ただ、展示会場で気になったのはルーター製品の多さだ。今回Qualcommはスマートフォンを主にフィーチャーしている関係で、25日の発表会でも家庭やオフィスなどに設置するためのFixed Wireless向けの据え付け型ルーター(CPE:Customer Premises Equipment)の5G対応レファレンスデザインが紹介されたのみだ。
今回のMWC19 Barcelonaで多方面から聞こえてきたのは「5Gの高速性を生かした固定回線の置き換えで、いわゆるラストワンマイル向けソリューション」を求める声だ。実際、Huaweiなどの通信会社向けソリューションを提供する企業のブースでもCPE向けのルーター製品が展示されており、モバイルが増えると同時に、従来までは光ファイバー施設でまかなわれていたブロードバンド需要の一部が5Gで置き換えられていく可能性を感じた。
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