「端末値引き」から「プラン磨き」へ――ドコモが「Amazonプライム1年無料」を提供する理由

» 2019年11月26日 19時20分 公開
[井上翔ITmedia]

 既報の通り、NTTドコモは12月1日から、料金プラン「ギガホ」ユーザー向けの新しい特典プログラム「ドコモのプランについてくるAmazonプライム」を開始する。当面の間は、キャンペーンで「ギガライト」ユーザーも対象となる。

 立て付け上、このプログラムは「ドコモがAmazonプライムの年会費(税込み4900円)を1年分負担する」という形で提供される。ドコモはなぜ、このようなプログラムを始めようと考えたのだろうか。

吉澤社長とチャン社長 NTTドコモの吉澤和弘社長(左)とアマゾンジャパンのジェスパー・チャン社長(右)

8年弱におよぶAmazonとの関係

吉澤社長 取り組みの狙いを説明する吉澤和弘社長

 ドコモとAmazon(アマゾンジャパン)との関係は、2012年2月に電子書籍リーダー「Kindle」向けにFOMA(3G)回線を提供した所から始まった。その後、ドコモのAndroidスマートフォンへのAmazonアプリのプリインストール、ドコモ払いへの対応d払いへの対応と関係を深めてきた。Amazon.co.jpでの買い物におけるd払いの取扱高も順調に伸びてきているという。

 ドコモとAmazonとの関係は、比較的良好のようだ。

歩み ドコモとAmazonの関係
d払い Amazon.co.jp上でのd払い取扱高も順調に増えているという(縦軸はない)

端末値引きは難しい→プランを磨く方向にシフト

 ドコモが今回、ギガホとギガライト限定ながらAmazonプライムを12カ月間無料で使える特典を提供するのは、Amazonとの良好な関係を背景に「ドコモの料金プランをより魅力的に感じてもらえるようにする」(吉澤和弘社長)ためだ。

 ギガホやギガライトを含む新料金プランは、12月中に1000万契約を突破する見通しだという。新料金プランへの移行をさらに進めるためには、旧プランから乗り換えるためのインセンティブ(動機付け)が重要になる。

 しかし、「以前のように端末(代金の)値引きという競争」という手段は使えない。改正電気通信事業法と関連する総務省令により、端末代金の割り引きに厳しい制限が設けられたからだ。

新料金プラン ギガホとギガライトを含む新料金プランは、12月中に1000万契約を突破する見通し。2019年度内に1700万契約達成を目指す
より魅力的な料金プランを 法改正の影響で端末代金を直接値引くことによる集客は難しい

 そこでドコモは「魅力的なサービスを付加することで料金プランを磨き上げる」という方法をとることにした。

 月間の高速通信容量が比較的大きいギガホのユーザーは、ネットサービスを積極的に使う傾向にある。その特性と親和性の高いAmazonプライムを1年間無料で使える特典を付与することで、既存ギガホユーザーにもっと積極的に使ってもらうことはもちろん、旧プランを含む他プランの契約者に移行してもらおうという狙いだ。

 ただし、「スマホをより便利に使ってもらう」という目的で、終了時期未定のキャンペーンながら、ギガライトユーザーも特典の対象に含めている。データ通信量の少ないユーザーも大切にしているという姿勢を示すためだろう。

ギガホ向け 本来、このプログラムはギガホユーザー向けだが……
ギガライトも キャンペーンでギガライトユーザーも当面は対象に

 さらに、このプログラムを適用しているユーザーを対象に、Amazon.co.jpでd払いを使うと使うと、追加でポイントがもらえるキャンペーンも2020年3月31日まで行う。Amazonとの連携を通して、d払いとdポイントの活性化を図る意図もありそうだ。

d払い Amazon.co.jpでd払いを使うと追加ポイントが付与されるキャンペーンも実施

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