―― 新コースでは、日次コースをやめ、月次コースに絞っています。この理由を改めて教えてください。
木藤氏 他社にない日次コースを一番の強みとして出してきましたが、(日次コースは)使い方が一部、制限されてしまいます。市場の中では「ギガ」が主流で、プロモーションも含め、皆さん「ギガ」という言葉でやられています。ライトな使い方をする方には、MBと言われてもよく分からない現状がありました。確かに月あたりの容量に変換すると、日次コースの110MBは3GB相当になり、他社と比べても金額差はほとんどなかったのですが、分かりにくかった。事業法の改正もあり、今まで以上に格安SIMに乗り換える方が増える中、日次コースより月次コースで勝負した方が、マーケティング的にも分かりやすいと判断しました。
―― 金額面でも、同業他社を意識していることがうかがえました。同容量で、競合になりそうなMVNOと比べると、一段安いですね。
木藤氏 これからは、料金面、品質面の勝負になってきます。横並びにするより、せっかくなので業界最安の水準を目指しました。ある意味、事業法の改正に対応した価格です。
ただし、事業者によっては究極まで月額料金を下げて頑張っているところもありますが、われわれは端末セットなどの強みがあり、お客さまにベネフィットを出しています。その枠の中で安くしたいというバランス感の下で設定した価格です。ですから、端末セットなどのメリットは、引き続き提供していきたいと思います。
―― 確かに、端末に関しては発表会でMMD研究所が出していた満足度調査でも、トップを取っていました。
木藤氏 MVNOの中では、そこを評価していただいていました。逆に言うと、回線品質や料金はなかなかランクインしなかった。端末の豊富さという魅力は生かしつつも、料金面で満足度の底上げをしていきたいと考えています。
―― 電気通信事業法では、割引も2万円までに規制されています。これが何か影響することはありますか。
木藤氏 どちらかと言うと、今までも過度な利益提供はしていませんでしたので、それほど大きな影響はないと思います。ただ、事業法では、2年縛り(最低利用期間も含む)の違約金が1000円になっています。(それを利用して)短期的に解約を繰り返し、端末を持ち逃げされるお客さまが増えてくると、これが成り立たなくなってしまいます。実際、そういった方は今ままでも一定数いましたが、繰り返されると、結果として端末割引をどんどん減らしていかざるをえなくなってしまいます。そういったことを過度にやるお客さまをお断りするということはやっていきます。
―― いわゆる「総合的判断」というやつですね。
―― 次に通信品質のお話を伺えればと思います。新コースでは、200kbpsからもう一段、通信制限を加えることを発表されました。
木藤氏 従来のコースには日次コースがあり、OCN モバイル ONEにはかなりギークな方もいらっしゃいます。低速でも結構速く、バースト機能もあり、一部のお客さまには「低速最強」と言われていました。確かに、低速通信を上手に使われる方にはいいサービスで、それがOCN モバイル ONEを長く使っていただける一因にはなっていました。
一方で、1回あたりのトラフィックはそうでもありませんが、“チリツモ”効果で、常時帯域を占有してしまいます。その分が底上げした結果、帯域を増強しても、特に昼間と夕方に関してはパケットロスが発生するようになったのです。結果として、比較サイトなどでも「OCN モバイル ONEはそんなに速くない」と書かれ、イメージが定着してしまいました。
そういったこともあり、低速通信の一部に制限をかける、新しいコースを別帯域で用意しました。従来のコースと新コースは、帯域自体を完全に分けているので、今までの低速通信を使いたい方は今までのコースを使っていただきつつ、新コースは新コースの中でうまく(帯域を)チューニングしていきます。
―― 低速通信を使っているユーザーの比率が多かったということでしょうか。
木藤氏 多かったですね。低速をうまく使われる方は、全体的にデータ使用量が多いという傾向もありました。(発表会の質疑応答でも)低速通信を使われている10%が総帯域の50%ほどを使っているというお話をしましたが、それぐらい多かった。これは他のMVNOよりも多いと思います。逆に言えば、その他の方はほぼ低速通信を使っていなかったということになります。
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