KDDIは12月16日、「Ponta」を運営するロイヤリティ マーケティング(以下、LM)に20%の出資を行い、資本業務提携を結ぶことを発表した。株式は、LMの筆頭株主である三菱商事から譲渡される。合わせて、LMの株主の1社であるローソンにも2.1%の出資を行う。この提携で、“キャリアのポイント競争”の構図が大きく変わりそうだ。
資本業務提携の短期的な効果として最も大きいのが、2020年5月以降に実施されるというau WALLETポイントのPontaへの統合だ。具体的な統合の方法は改めて発表されるが、現時点では、au IDにPontaの会員番号をひもづける形になることが予定されているという。
KDDIは現在、au IDを持つユーザーに「au WALLETポイント」を発行している。auの携帯電話利用料やau WALLETプリペイド/クレジットカード、au Payなどでの決済に対して、このポイントが付与される仕組みだ。もともとはauユーザー向けのクローズドなポイントプログラムだったau WALLETポイントだが、8月のau IDのオープン化に伴い、他社ユーザーにも開放。2020年には、各種サービスの利用状況に応じて「au Wowma!」や「長期優待特典」のポイント付与額をアップさせるステージ制を導入するなど、ポイントプログラムの強化を図っていた。
一方で、au WALLETポイントはいわゆる共通ポイントではなく、ポイントをためるには、auの回線やサービスを利用する必要がある。ポイントカードを提示するだけでポイントが付与される「dポイント」や「楽天スーパーポイント」「Tポイント」などと決定的に違うのはここだ。結果として、発行するポイントの総額も、他社に比べると少額になっていたことが予想される。
実際、付与したポイントのうち、利用される見込みのあるポイントを負債に計上する「ポイント引当金」は、3月31日時点でドコモが約1353億円なのに対し、KDDIは約562億円と2倍以上の開きがある。2018年のポイント発行額が2500億円と大規模な楽天との差は、それ以上に大きい。ポイントプログラムは囲い込みの強さにもつながるが、共通ポイントを持っていないことはKDDIにとっての課題だった。
Pontaとの統合は、その解決策といえる。KDDIによると、auとPontaを合算したユーザー数は1億人超、年間のポイント発行額は2000億円超になるという。同社の高橋誠社長は「これからは規模感が非常に重要になってくる」と語っていたが、Pontaを採用すれば、一気にドコモや楽天にキャッチアップできるというわけだ。
一方のPontaは、コード決済などの決済機能を持っていないことが弱点の1つだった。dポイントは「d払い」で、楽天スーパーポイントは「楽天Pay」で、支払い時にポイントを充当できるが、Pontaは利用できる場所が加盟店に限られている。LMの長谷川剛社長は、その危機感を次のように語る。
「決済とポイントの垣根は、どんどんなくなってきている。われわれも、キャッシュレス決済にきちんと連携していかないと、ポイントが外されていくことにつながってしまう。そういう意味で、今回のKDDIとの提携で手を打つことができた」
加盟店の店舗数は22万と多いPontaだが、auの決済サービスを利用可能な場所は2019年6月時点で100万カ所を超えており、文字通り桁違いだ。KDDIは楽天との提携で、au PAYと楽天Payの相互利用を実現したが、この効果で早期に利用できる場所を一気に拡大することができた。100万カ所にはQUICPayも含まれるため、コード決済のau PAYだけがここまで広がったわけではない点には注意が必要だが、au PAYと残高を共有するau WALLETプリペイドカードはApple PayのQUICPayとして利用可能。Pontaの使い道が、増えることに変わりはない。
電撃発表に見えたKDDIとLMの資本業務提携だが、関係者によると、実は1年ほどの時間をかけ、協議を重ねてきたという。時間軸でいえば、au PAYの開始や、au WALLETポイントのステージ制を発表する前から、Pontaとの統合を検討していたことになる。逆の見方をすれば、KDDIは、ポイントプログラムの刷新を前提にしつつ、1年かけ、Pontaに足りないピースである決済サービスの構築に集中していたのかもしれない。
ポイントがたまりやすくなれば、決済サービスの利用も加速させることができ、好循環が起りやすい。高橋氏は「今、『なんとかPay』がすごく表に出ているが、これは使うことをやっているだけ。このPayが持っている口座に、いかにお金を流し込むかが大きな課題で、そこにポイントが生きてくる」と語る。経済圏の拡大を狙うKDDIにとって、Pontaへの合流は囲い込み以上の価値もあるといえそうだ。
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