最近、月間の高速データ通信容量が超過した場合の通信速度を引き上げる動きが一部で見受けられます。
例えば、大手キャリア(のメインブランド)よりも手頃な料金となっている「楽天モバイル」「UQ mobile」「Y!mobile」では、「最大128k〜300kbps程度」だった制限時の通信速度を軒並み「最大1Mbps」に引き上げました。一見すると横並びに見えますが、実はよく見てみると条件面で細かい違いがあります。
今回は、これら3キャリアにおける容量制限時の「最大1Mbps」についてチェックしていきます。
(この記事における通信速度は、全て理論値です)
「最大1Mbps」競争の火ぶたを切ったのは、4月8日にキャリア(MNO)としてサービスを始めた楽天モバイルです。
楽天モバイルでは、MNOサービス用のプランとして「Rakuten UN-LIMIT」を3月3日に発表しました。このプランでは、高速データ通信容量を自社エリアでは無制限とした一方、「パートナーエリア」(auへのローミングエリア+海外エリア)では1カ月当たり2GBまでとし、超過後の通信速度は上下最大128kbpsとしていました。
しかし、同社はサービス開始当日、突然「Rakuten UN-LIMIT 2.0」と銘打って、Rakuten UN-LIMITのサービス内容を改定しました。月額料金は据え置きつつ、以下のような変更が加えられています。
このプラン改定は、ユーザーはもちろん、キャリアにとっても驚きを持って迎えられました。ローミングパートナーであるKDDIの高橋誠社長は、この改定について「寝耳に水」と語りました。本当に“突然”の変更だったのです。
改定前のRakuten UN-LIMITの容量設定は、他の大手キャリアはもとよりMVNOと比べても十分とはいえません。とりわけ、楽天モバイルの自社エリア外(パートナーエリア)を生活圏とするユーザーにとっては積極的に選択する理由が皆無といっても良い状況でした。
しかし、改定によって、自社エリアを生活圏とするユーザーはもちろん、自社エリア外を生活圏とするユーザーもRakuten UN-LIMITを選択するメリットが生まれました。
先述の通り、Rakuten UN-LIMITの改定は料金を据え置いて行われました。ここで忘れてはならないのが、Rakuten UN-LIMITユーザーがauエリアで通信した場合、楽天モバイルモバイルはKDDIに通信料を支払わなければならないということです。
契約約款上のデータ通信料金は1GBあたり約500円です。Rakuten UN-LIMITの改定により、高速通信できる容量が3GB増えた上、容量超過後の通信速度もアップしたので、KDDIにとってはローミングで得られる収益が増える「チャンス」ともいえます。高橋社長もそのことは認めつつも「それはそれ、これはこれ」として、楽天モバイルのMVNOサービスのユーザーをau、あるいはUQ mobileを始めとするグループMVNOに引き入れるべく取り組むことを表明しています。
実際、楽天モバイルのMVNOサービスを使っているユーザーから見ると、「自社エリアでは容量無制限」というRakuten UN-LIMITよりも、月間データ容量制限はありつつも割安感のあるUQ mobile、あるいはY!mobileの方が魅力的に映るかもしれません。
だからこそ、Y!mobileやUQ mobileは相次いでプランの新設または改定という形で「制限時1Mbps」を打ち出したのだと思われます。
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