楽天グループ(旧楽天)は5月13日、2021年度第1四半期(2021年1〜3月)の連結決算を発表した。売上高は前年度同期比で18.1%増の3915億円となったが、営業損益は楽天モバイルにおける基地局設置前倒しを始めとする設備投資がかさんで316億円の赤字(※1)となった。
(※1)Non-GAAP指標に基づく計算結果。IFRS(国際会計基準)に基づく計算では373億円の赤字
この記事では、決算説明会における楽天モバイルに関する説明を簡単に紹介する。
楽天モバイルは、4月8日付でキャリアサービスを本格的に始めてから1周年を迎えた。見方を変えると、1名義1回線限定の1年無料キャンペーンを適用して加入した契約における月額課金が本格的に始まるということになる。
無料キャンペーンが終わるタイミングでの離脱(解約)を防ぐ対策として、同社は4月1日から「Rakuten UN-LIMIT VI」を提供している。1名義1回線限定だが、月間のデータ通信量を1GB以下に抑えれば月額料金を無料とした他、その対象外でも月間3GBまで月額1078円(税込み、以下同)、20GBまで月額2178円と、他の大手キャリアよりも手頃な料金を実現している。
Rakuten UN-LIMIT VIの発表後、同社の携帯電話回線の申し込み数(※2)の増加ペースは向上し、5月11日時点で410万件に達したという。新規契約に占めるMNP転入の比率も上昇しているとのことだ。
(※2)契約申し込みの受理件数で、契約実数とは異なる
また同社では4月30日からiPhoneの正規販売を開始した。日本郵政との提携によるオフラインチャンネルの開拓と合わせて、顧客獲得のスピードアップを図る。
2020年度通期の決算説明会でも言及があった通り、楽天モバイルは基地局の設置計画を5年ほど前倒し、2021年夏をめどに4G(LTE)ネットワークの人口カバー率を96%とする方針だ。2021年3月末時点で、4Gネットワークの人口カバー率は80%になったという。1月末時点と比べると5.1ポイントの増加である。
その動きと並行して、Sub-6(3.7GHz帯)とミリ波(28GHz帯)を利用した5Gネットワークの構築にも着手しており、3月末までに1000以上の5G基地局を開設し、47都道府県で5G通信サービスを開始した。
今後、東名阪以外のエリアにおいて追加割り当てを受けた1.7GHz帯を使った5Gエリアの構築を進め、第2四半期(4〜6月)以降にSA(スタンドアロン)構成の5G通信サービスを開始するという。
Rakuten UN-LIMIT VIは、月間データ通信量が1GB以下なら月額無料で利用できる。また、サービス開始当初の「1年間」とは行かないものの、現在も新規契約から3カ月間は自社エリア内では容量制限なく月額無料としている(いずれも1名義1回線限り)。
いずれにしても1名義1回線は、月額0円で維持できることには変わりない。基地局設置の前倒しに伴う先行投資を回収するには、より多くのユーザーがより多くの通信を行い、月額料金を支払ってもらうに越したことはない。“塩漬け”回線が増えるリスクは懸念していないのだろうか。
山田善久社長や楽天グループの河野奈保常務によると、楽天モバイルのキャリアサービスのユーザーは契約から時間がたつにつれて月間のデータ通信容量が増加する傾向にあるという。同社のRakuten UN-LIMIT VIは、月間データ通信容量が20GBを超えた場合でも、税込み料金は3278円と他社の大容量プランよりも手頃な価格設定となっている。
そのためユーザーは「節約のためにデータ通信を控えよう」という気持ちが薄まり、結果として月額料金が無料となるユーザーの比率は低くなる――そう見立てているようだ。
「データ品質は大丈夫なの?」という点については、イギリスOpenSignalの品質調査の結果をもとに、着実に改善していることもアピールした。
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