「月額0円から」でも大丈夫? iPhone効果は?――楽天グループ2021年度第1四半期決算説明会(1/2 ページ)

» 2021年05月14日 12時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 楽天グループ(旧楽天)は5月13日、2021年度第1四半期(2021年1〜3月)の連結決算を発表した。売上高は前年度同期比で18.1%増の3915億円となったが、営業損益は楽天モバイルにおける基地局設置前倒しを始めとする設備投資がかさんで316億円の赤字(※1)となった。

(※1)Non-GAAP指標に基づく計算結果。IFRS(国際会計基準)に基づく計算では373億円の赤字

 この記事では、決算説明会における楽天モバイルに関する説明を簡単に紹介する。

連結決算サマリー 2021年度第1四半期決算の概要。前年度同期比で売上高(営業収益)は確実に伸びているものの、楽天モバイルにおける基地局設置の前倒しを含む先行投資がかさんで営業損益は赤字となった
Non-GAAPあごひげ 1〜3月の3カ月で、モバイル事業において611億円の赤字が発生している(Non-GAAP指標)
山田社長 モバイルセグメントの概況を説明する楽天モバイルの山田善久社長(楽天グループの副社長を兼務)
アミン副社長 技術面の説明を担当した楽天モバイルのタレック・アミン副社長(楽天グループの副社長を兼務)

ユーザー増加のピッチは向上 iPhone取り扱いでさらなる増加を狙う

 楽天モバイルは、4月8日付でキャリアサービスを本格的に始めてから1周年を迎えた。見方を変えると、1名義1回線限定の1年無料キャンペーンを適用して加入した契約における月額課金が本格的に始まるということになる。

 無料キャンペーンが終わるタイミングでの離脱(解約)を防ぐ対策として、同社は4月1日から「Rakuten UN-LIMIT VI」を提供している。1名義1回線限定だが、月間のデータ通信量を1GB以下に抑えれば月額料金を無料とした他、その対象外でも月間3GBまで月額1078円(税込み、以下同)、20GBまで月額2178円と、他の大手キャリアよりも手頃な料金を実現している。

 Rakuten UN-LIMIT VIの発表後、同社の携帯電話回線の申し込み数(※2)の増加ペースは向上し、5月11日時点で410万件に達したという。新規契約に占めるMNP転入の比率も上昇しているとのことだ。

(※2)契約申し込みの受理件数で、契約実数とは異なる

ピッチアップ 5月11日時点における累計申し込み数は410万になったという

 また同社では4月30日からiPhoneの正規販売を開始した。日本郵政との提携によるオフラインチャンネルの開拓と合わせて、顧客獲得のスピードアップを図る。

日本郵政との資本業務提携 親会社である楽天グループが日本郵政と資本業務提携を締結。提携の一環として、郵便局のロケーションを使った基地局設置に加えて、郵便局での申し込み受け付けや配達網を使った広告宣伝を実施する
iPhone 4月30日からはiPhoneの正規販売を開始した。iPhoneのシェアが高い日本の携帯電話市場を考えると、ユーザー獲得には有利に働きそうである

2021年夏の「人口カバー率96%」に向けて投資を前倒し

 2020年度通期の決算説明会でも言及があった通り、楽天モバイルは基地局の設置計画を5年ほど前倒し、2021年夏をめどに4G(LTE)ネットワークの人口カバー率を96%とする方針だ。2021年3月末時点で、4Gネットワークの人口カバー率は80%になったという。1月末時点と比べると5.1ポイントの増加である。

 その動きと並行して、Sub-6(3.7GHz帯)とミリ波(28GHz帯)を利用した5Gネットワークの構築にも着手しており、3月末までに1000以上の5G基地局を開設し、47都道府県で5G通信サービスを開始した。

 今後、東名阪以外のエリアにおいて追加割り当てを受けた1.7GHz帯を使った5Gエリアの構築を進め、第2四半期(4〜6月)以降にSA(スタンドアロン)構成の5G通信サービスを開始するという。

カバー率 2021年3月末時点における人口カバー率は80%を達成。2021年夏までの96%達成に向けて基地局設置を急いでいるという
5Gの基地局 5Gエリアの構築も進めていくという
営業損失 モバイル事業の赤字は基地局設置計画の前倒しが主因だが、ユーザー増加に伴うローミング費用(≒KDDIへの支払い)の増加も影響しているという

「月額無料から」でも収入は得られそう

 Rakuten UN-LIMIT VIは、月間データ通信量が1GB以下なら月額無料で利用できる。また、サービス開始当初の「1年間」とは行かないものの、現在も新規契約から3カ月間は自社エリア内では容量制限なく月額無料としている(いずれも1名義1回線限り)。

 いずれにしても1名義1回線は、月額0円で維持できることには変わりない。基地局設置の前倒しに伴う先行投資を回収するには、より多くのユーザーがより多くの通信を行い、月額料金を支払ってもらうに越したことはない。“塩漬け”回線が増えるリスクは懸念していないのだろうか。

 山田善久社長や楽天グループの河野奈保常務によると、楽天モバイルのキャリアサービスのユーザーは契約から時間がたつにつれて月間のデータ通信容量が増加する傾向にあるという。同社のRakuten UN-LIMIT VIは、月間データ通信容量が20GBを超えた場合でも、税込み料金は3278円と他社の大容量プランよりも手頃な価格設定となっている。

 そのためユーザーは「節約のためにデータ通信を控えよう」という気持ちが薄まり、結果として月額料金が無料となるユーザーの比率は低くなる――そう見立てているようだ。

 「データ品質は大丈夫なの?」という点については、イギリスOpenSignalの品質調査の結果をもとに、着実に改善していることもアピールした。

データ通信量 2020年6〜7月に新規契約をしたユーザーを抽出してデータ通信量の平均値を計測した所、契約から9カ月経過すると月間データ通信量が42%増えたという
OpenSignal OpenSiganlの調査で「アップロード速度に対するユーザー体感」と「音声アプリに対するユーザー体感」で1位となったことをアピール
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