シャープは5月17日、フラグシップモデルの「AQUOS R6」を発表した。最大の特徴は、カメラに高級コンデジと同じ1型の大型センサーを採用したこと。このカメラは、老舗メーカー、ライカ(Leica)と共同で開発したもので、焦点距離19mmのレンズは「Summicron(ズミクロン)」ブランドを冠した。ディスプレイも従来のAQUOS Rシリーズとは異なり、IGZOの特徴を継承した「Pro IGZO OLED」を搭載する。
型番だけを見ると、先代の「AQUOS R5」を正常進化させたモデルに思えるが、開発思想は大きく転換した。それが顕著に表れているのが、上記のカメラだ。複眼化やコンピュータの演算による画質向上といった、従来のスマートフォンのトレンドとも一線を画す。高価格帯のスマートフォンの売れ行きが低迷する中、シャープはよりとがったフラグシップモデルで勝負を仕掛ける。その狙いを読み解いていきたい。
サイズの制約が厳しいスマートフォンは、デジタルカメラと異なるアプローチで画質を向上させてきた。大まかに言えば、チップセットの高い処理能力を生かし、画像処理でセンサーサイズの小ささを補う「コンピューテーショナルフォトグラフィー」が、その代表例だ。レンズ交換の代わりに、画角の異なる複数のカメラを搭載する「複眼化」も、スマートフォンならではの進化といえる。フラグシップモデルではカメラの数が徐々に増え、トリプルカメラやクアッドカメラが当たり前のようになった。
シャープのパーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏が「スマートフォンのカメラの在り方そのものを見直すところから始めた」と語るように、同社がAQUOS R6で取ったアプローチは、この流れと大きく異なる。高画質化のために採用したのが、1型の超大型センサーだ。
1型といえば、いわゆる高級コンデジに搭載されるセンサーと同サイズ。ソニーの「Cyber-shot RX100」シリーズや、パナソニックの「LUMIX TX」シリーズなどに、このサイズのセンサーが搭載される。AQUOS R5のカメラは1/2.55型だったため、サイズは約5倍。これによって、暗所でのノイズが40%も低減した。AIなどの処理ではなく、カメラとしての“正攻法”である大判センサーの採用で、画質の向上を図った格好だ。
スマートフォンのトレンドといえる複眼化も、AQUOS R6では見送られている。代わりに、AQUOR R5G比でゆがみ量を10分の1に抑えたF1.9、焦点距離19mmの広角レンズを採用。2020万画素センサーの一部から画像を切り出すことで、標準では24mmの画角で撮影する。性能のいい広角のレンズを採用して、広角と標準をまとめて撮れるようにしたというわけだ。被写界深度も従来のスマートフォンより浅く、自然なボケが出せるのも、このレンズのメリットになる。
ただし、スマートフォンならではの画像処理を捨て去ったわけではない。暗所の画質を向上させる「スーパーナイトモード」や、ノイズを削減する「マルチフレームノイズリダクション」といった、演算能力を必要とする機能は継承。iToFでのオートフォーカスにも対応する。正攻法の大判センサーで画質を向上させつつ、スマートフォンの処理能力を生かす、「スマートフォンのカメラとデジタルカメラの融合」(同)を目指した1台といえそうだ。
1型のセンサーを搭載したスマートフォンは、世界初となる。2015年1月には、パナソニックが1型センサーを搭載した「LUMIX DCM-CM1」を発売したが、あちらはあくまで通信機能内蔵デジタルカメラという位置付け。通話はでき、スマートフォンとしても使えたが、デザインはカメラ風にまとめられていた。これに対し、AQUOS R6はスマートフォンを主軸にしながら1型のセンサーを搭載しており、コンセプトは別物。Xiaomiが3月に発表した「Mi11 Pro」「Mi11 Ultra」は1/1.12型のセンサーを搭載していたが、サイズはそれを上回る。
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