楽天モバイルがゼロ円プランの値上げを発表した直後から、ユーザーの流出が始まっているようだ。KDDIの高橋誠社長は今週、行われたメディアのインタビューに対して、以前に比べて申込件数が2.5倍に増えたと語っていた。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年5月21日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
povoに関しては1年間で120万契約を獲得している。ザックリした計算でしかないが、1年間で120万件ということは1日あたり3000〜4000件程度の新規契約件数と思われる。この2.5倍となると、直近は1日あたり1万件近い申し込みがあると予想される。つまり、5000〜6000件近い、楽天モバイルユーザーがpovo2.0を契約しているのではないか。
一方、ソフトバンクも、LINEMOのミニプランへの申し込みが2.6倍になっていると明かした。ただし、そもそもpovo 2.0に比べてLINEMOのほうはユーザーが少ないので、母体数が小さいからこそ、povoより多い2.6倍という数値になったと思われる。LINEMOはユーザー数が昨年8月の段階で「50万にも満たない」(宮川潤一社長)ということで、楽天モバイルからの流入は1日数千件がいいところなのではないだろうか。
ただ、ワイモバイルに関しても1.5倍伸びているという。こちらのほうが、おそらくpovo2.0よりも母数は大きいと思われるので、かなりの数が楽天モバイルから流入していそうだ。
MVNOでもIIJmioがユーザーの申し込みが増えて、手続きが遅れていると明かしている。
各社の状況を俯瞰すると、1日あたり数千あるいは1万程度、ユーザーの流出が起きているのではないか。
楽天モバイルでゼロ円だった人だけが流出するのであれば、楽天にとっては大した痛手にはならないが、これまでアクティブに使っていたユーザーが流出するとなれば、結構、厄介な話だ。
povo2.0が「おとな買いキャンペーン」を始め、LINEMOに至っては「半年、実質無料」という楽天モバイルユーザーが飛びつきそうなキャンペーンをぶつけてきた。
その点において、NTTドコモ・ahamoが波に乗れていないのが、なんとも残念だ。一般メディアでは「3GBでいくらか」という比較表を出す中で、楽天モバイル、LINEMO、povo2.0の名前が並ぶのだが、ahamoだけは20GB2970円という数字が記載され、明らかに分が悪い。
NTTドコモとしては「大盛り」でARPUを稼ぐ方向に行きたいのだろうが、業界のトレンドとしては完全に「小盛り」のほうが需要がある。
NTTドコモが小容量ニーズをエコノミーMVNOだけで獲得していけるのか、一方で、楽天モバイルはこのまま指をくわえてユーザーの流出を見過ごすのか。
2022年後半戦は「3GB1000円」の獲得合戦が盛り上がりを見せそうだ。
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