マルチパス【まるちぱす】

【国内記事】 2002年2月18日更新

 マルチパス(multipath)は,多重波伝送路と訳されるとおり,送信された電波が相手に受信されるまでに,複数の経路をたどる現象を指す。これは,直線で最短距離を結ぶ直接波のほかに,反射波や透過波,回折波などの発生で起こるものだ。

 反射波の多くは,高層ビルなどの建造物によって発生する。アンテナから送信された電波が,ビルではね返りながら進むことによって,同時に出た直接波よりもやや遅れて受信機に到着してしまう。直接波と同じ周波数を持つ反射波は,受信機にとってはこの時点でただの雑音になってしまう。また反射波は都会のビルだけで発生するものではない。郊外においては,遠くの山ではね返ってくることがある。

 障害物で電波が反射されずに,そのまま素通りしてくるものを透過波と呼ぶ。障害物の角を通過する電波が,屈折によって方向を変えたものを回折波と呼ぶ。いずれも反射波同様,直接波に対しての障害となる電波であり,マルチパスそのものが「干渉波」となりうる。

 また,マルチパスが直接波より若干遅れて届くことから,「遅延波」と呼ばれることもある。テレビ放送で,映像が二重三重に映るゴースト現象もこのマルチパスが原因である。マルチパスに強い変調方式として,OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex:直交周波数分割多重)があり,これから始まる地上波デジタルテレビ放送に用いられることが決まっている。

 OFDMは,5GHz帯の高速無線LAN(IEEE802.11a)を含むマルチメディア移動アクセス(MMAC)にも利用され,第4世代移動体通信(4G)でもOFDMが採用される可能性がある。

 携帯電話のcdmaOneでは,このマルチパスを積極的に活用する技術「レイク受信」が採用された。同じCDMA方式を使う3GのFOMAにもレイク受信機能がある。

 レイク(Rake)とは,英語で「熊手」のことを指す。日本で熊手といえば縁起物としても扱われることが多いが,実際にはお金をかき集める道具であり,庭の落ち葉などをかき集める清掃用品でもある。そして,レイク受信とは,「電波をかき集めて受信する」ことを指す。

 マルチパスとして直接波や反射波が複数方向から届いた場合,同じ周波数を持つ干渉波として本来の受信に悪影響をおよぼしてしまう。そこで,それぞれの電波を個々に受信し,位相のずれなどを修正したうえで重ね合わせて利用する技術が開発された。

 レイク受信で束ねられた信号は,直接波だけで取り込んだ信号よりも大きくなるため,S/N比が上がることで雑音にも強くなる。複数の基地局と同時に接続するソフトハンドオーバー機能と合わせ,CDMA方式の音のよさに貢献する機能だ。ちなみにソフトハンドオーバーを実際に行っているのもレイク受信機そのものである。

(図版:http://www.soumu.go.jp/ joho_tsusin/pressrelease/japanese/ image/housou/991119j70102.gifより)

(図版:http://joho.densi.kansai-u.ac.jp/ csp/ofdm2.gifより)

[江戸川,ITmedia]

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