CDMA2000 1x EV(HDR)はなぜ安い?──HDRの仕組み(2/3)

データに特化したHDR

 CDMA2000 1xEV-DOは,もともとはQualcommがHDRとして開発していたもの。2000年10月に「1xEV-DO」「IS-856」として承認された。2001年10月にはITUでも正式承認される見込みだ。

 データに特化すると共に,HDRが意識したのは以下の3点だったという。

ある程度のハンドオーバー
これまでのcdmaOneネットワークとシームレスに利用
1つの端末でcdmaOneと両方利用

 HDRでは,これまでのcdmaOneと端末やネットワークの互換性を保つため,RF部はこれまでのcdmaOne端末のものと共通化している。「(HDRでは)その上で流すスキームを効率化する」(前田氏)

 端末側でみれば,ベースバンドチップを交換するだけでHDRに対応できるわけだ(7月23日の記事参照)。端末も基地局も新規に設備を作らなければならないW-CDMAに比べると,大幅なコストダウンが期待できる。

電波状況に応じて回線の太さを変える

 HDRでは,下り方向と上り方向で通信方式を大きく変えている。上り方向ではCDMA2000 1xとほぼ同じ方式を使うが,下り方向は以下のような工夫によってデータ転送速度を高速化している。

一定のデータレートを保証するのではなくベストエフォート
全体のスループットを最大化するスケジューリング
基地局のパワーは常に全開
音声通信だけに必要なオーバーヘッドは切り捨て

 CDMA2000 1xなどでは端末と基地局の間の通信速度を保証するが,HDRでは「電波状況に応じて変調方式を変える」(前田氏)。簡単にいえば,電波状況がいいときは高速で,悪いときは遅くなるということだ。

 さらに,データを送る際には“送りやすい端末から優先して送る”ということをやっている。端末は「1秒間に600回の割合で自分の電波状況を基地局に送信」(前田氏)しており,電波状況のいい端末から優先してデータを送る。電波状態の悪い端末は,“電波が強くなったら送るね。または,電波が強い端末に送り終えたらじっくりと送るね”というわけだ。

 この仕組みをQualcommでは「スケジューリング」と呼んでいる。これによってユーザーが多いほど基地局1つ当たりのスループットも向上し,平均600Kbpsといわれるスループットを実現できる理由の1つとなっている。

 もちろん,電波状況の悪い端末がいつも後回しにされるわけはなく,「これまでのサービスの実績と現在可能な転送レートの比で,次に送信するユーザーを割り当てる」(前田氏)というアルゴリズムの工夫によって,不公平感のない送信を行うようになっている。

 またcdmaOneではユーザーの電波状況によって“電波状況のいいユーザーには送信出力を弱く”するというパワーコントロールを行って,すべてのユーザーの回線品質を保証していた。しかしこれには「パワーコントロールをやるのでマージンを見ておかなくてはいけない」(前田氏)というデメリットもある。

 HDRではパワーコントロールをいっさいやらず,基地局は常にフルパワーで動く。マージン部分がないため,高効率を実現できたという。

 さらに,下り方向はハンドオーバー(用語)を行わず,コントロールのための無駄なパワーを使わないようにしている。また処理に時間がかかるため,遅延が許されない音声通話では使えなかったコーディングも,HDRでは利用している。

Photo
cdmaOne(IS-95)とHDRのパワー(縦軸)と時間(横軸)で見た概念図。実はHDRの下り方向は,PDCなどでも用いられているTDMA(時分割多元接続)を使う。そのためパワーコントロールも必要ない。通常のTDMAと異なるのは,スロットを平均的にではなく,電波状況に応じて割り当てる「スケジューリング」を行っていることだ。HDRの上り方向は,CDMA2000 1xとほぼ同じ方式を使っているという(拡大画像

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