今年後半のノートに搭載されるCPUはTualatin-Mで決まり?

既報の通りIntelは7月末,新しいモバイル用CPUである「モバイルPentiumIII-M」をリリースした。Tualatin-Mとはこの製品の開発コード名だが,死角がほとんど見当たらない。今購入を検討するなら,Tualatin-M搭載製品をイチオシする。

【国内記事】 2001年8月9日更新

 既報の通りインテルは7月末,新しいモバイル用CPUである「モバイルPentiumIII-M」をリリースした(7月31日の記事参照)。「Tualatin-M」とはこの製品の開発コード名だが,あらゆるスペックで旧来のモバイルPentiumIIIシリーズを凌ぎ,あまり死角が見当たらない。今年後半に大きなシェアを占めるようになると予想されるこのTualatin-Mについて簡単に検証してみよう。

プロセス微細化による低消費電力化

 Tualatin-Mは,製造プロセスを微細化(0.13μm,既存のモバイルPentiumIIIは0.18μm)したことで,低消費電力を実現できた。論より証拠で,具体的に示してみよう。Tualatin-Mの場合,動作クロック別の電圧と最大消費電力は,

最高性能モード バッテリパワーモード
周波数 電圧/消費電力 周波数 電圧/消費電力
866MHz 1.40V/19.5W 677MHz 1.15V/8.9W
933MHz 1.40V/20.1W 733MHz 1.15V/9.3W
1000MHz 1.40V/20.5W 733MHz 1.15V/9.3W
1066MHz 1.40V/21.0W 733MHz 1.15V/9.3W
1133MHz 1.40V/21.8W 733MHz 1.15V/9.3W

となっており,一方旧来のモバイルPentiumIIIの場合,

最高性能モード バッテリパワーモード
周波数 電圧/消費電力 周波数 電圧/消費電力
500MHz 1.10V/ 8.1W 300MHz 0.975V/ 4.6W
(ULV)
600MHz 1.15V/ 9.7W 300MHz 0.975V/ 4.6W
(ULV)
600MHz 1.35V/14.4W 500MHz 1.10V/ 8.7W
(LV)
700MHz 1.35V/16.1W 500MHz 1.10V/ 8.7W
(LV)
750MHz 1.35V/17.2W 500MHz 1.10V/ 8.7W
(LV)
700MHz 1.60V/23.0W 550MHz 1.35V/13.9W
750MHz 1.60V/24.6W 600MHz 1.35V/15.1W
800MHz 1.60V/25.9W 650MHz 1.35V/16.2W
850MHz 1.60V/27.5W 700MHz 1.35V/17.3W
900MHz 1.70V/30.7W 700MHz 1.35V/17.3W
1000MHz 1.70V/34.0W 700MHz 1.35V/17.3W

といった具合になる。

 確かに300MHz動作のモバイルPentiumIIIは群を抜いて低消費電力だが,ほぼ同一の周波数(例えばTualatin-Mの866/677MHzをモバイルPentiumIIIの800/650MHz)と比較してみると,確実に消費電力が減っていることが分かる。つまり同一の動作クロックなら,Tualatin-Mは確実にバッテリー寿命が長くなるわけだ。

Deeper Sleepによる,平均消費電力の低減

 先に挙げた数字は,あくまでも“最大”で,通常利用する際の平均消費電力はまた別の議論となる。というのはノートに限らずACPIを搭載したPCの場合,普通に利用している限りはCPUが常に全力稼動することはまずないからだ。これはACPIが細かく処理負荷を見て,不要ならCPUを待機させるからだ。

 AMDの「PowerNow!」やTransmetaの「LongRun」は,このACPIの状態に合わせて動作クロックや電圧を変化させることで,より細かく消費電力を落とす仕組みだ。これに対してIntelは,Deeper Sleepと呼ばれる方式を採用した(3月3日の記事参照)。これはACPIによって待機する際だけ,これまでよりも電圧を落とす(0.85V)という仕組みだ。CPU負荷が軽い場合は待機時間が相対的に長くなり,その際にDeeper Sleepは電圧も下がるため,待機消費電力がより削減されるというわけだ。だから,PowerNow!やLongRunに比べてSpeedStepの消費電力が多いとはもういえないことになる。

 加えて,立ち上がり時間の点でメリットがある。PowerNow!やLongRunの場合,急にCPU負荷が掛かった場合であっても,急速にクロックや電圧を上げることはできない。変化する段数が多いほど,立ち上がりに時間がかかることになる。

 AMDはPowerNow!のデモでよくDVDの再生を行うが,例えばシーンチェンジなどの際に一瞬コマ落ちすることがある。これは,突然のCPU負荷の増大にクロック/電圧の上昇が間に合わないからだ。こうしたことは,Tualatin-Mでは起こりにくい。

SpeedStep2:待望のCPU負荷によるコントロール

 これに加えて,新たにSpeedStep2が採用された。CPU負荷に応じて動作クロックを変化させる,というPowerNow!やLongRunと似た動作だが,そもそも細かな負荷変動にはDeeper Sleepで対応できるので,これはむしろ“より大きな処理能力が必要になった時だけ,フルパワーで動作する”と解釈するのが正しい。つまり消費電力の面でのメリットはないが,動作の柔軟性が増したと考えられる。

 余談だがこのSpeedStep2は,ハードウェアでなくソフトウェアで行われている。つまり,既存のモバイルPentiumIIIでも技術的には利用可能である。ただ実際には検証の手間が掛かる関係で,これを既存のモバイルPentiumIIIに対応させる計画はないようだ。

512KバイトのL2キャッシュによる性能向上

 Tualatin-Mは,L2キャッシュを既存のモバイルPentiumIIIの倍である512Kバイト搭載した。これにより,同一クロックのモバイルPentiumIIIと比較して,平均30%程度性能が向上している。これを逆に考えれば,これまでと同じ処理をより少ない時間で行えるわけで,消費電力もその分少なくて済むわけだ。

 こうしたさまざまな技術を併用することでTualatin-Mは,これまでより高速に動作するにも関わらず,バッテリー寿命にむしろ貢献することにつながる,画期的な製品となっている。もちろん,一般的なノートPCにおいて,消費電力に占めるCPUの割合は1割程度(一番大きいのは液晶のバックライトだ!)だから,これが下がったからといって電池寿命が大幅に伸びるわけではないのだが,少ないに越したことはない。

ネックはチップセットか?

 Tualatin-Mの価格はまだプレミアが付き多少高価だ。ただしダイ面積が縮小(トランジスタ数が増えているのでプロセスルール通りにはいかないが,それでも2割ほど削減)されているから原価は低下しており,もう少しすれば手頃な価格に落ちることも期待できる。いわば良いことづくめの製品なのである。

 強いていえばネックとなりえるのは,チップセットだろう。Tualatin-Mと同時に発表された「Intel 830-MP」は,現在のところ唯一133MHz FSBに対応したチップセットだ(7月31日の記事参照)。機能的には向上しているものの,チップの大きさがこれまでより大幅に増加してしまい実装がやや難しくなっている。

 ただこれはメーカー側が頭を悩ませることではあっても,ユーザーにはあまり関係ない。むしろLANコントローラ内蔵とか,6ポートのUSBサポートなど,メリットの方が大きいはずだ。

 現在のモバイルPentiumIII相手ですら(善戦しているとは言え)苦戦中のAMDのMobile Athlon4やTransmetaのCrusoeは,更にパワーアップした相手と戦わなければならなくなる。今年後半というレンジでみると,今のところ両社にはこれといった打開策は見当たらない。これが,今年後半にTualatin-Mの躍進を予想する筆者の根拠である。

[大原雄介,ITmedia]

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