有機ELかTFTか?──携帯ディスプレイの未来

自己発光ならではの問題

 N2001の有機ELの問題点はそれだけではない。それは有機ELの特徴でもある“自己発光”だ。

 薄く軽く視野角も広く……といいこと尽くめの自己発光だが,逆にいえば液晶のように反射型が作れないということでもある。

 N2001の有機ELは輝度を3段階に調整できるが,最高輝度にしても直射日光下では太陽光に負けて何も見えなくなってしまう。10月12日の記事で山田祥平氏も指摘しているとおり(10月12日の記事参照),見難いというレベルではなく「電池が切れたか?」と思うほど,見事に見えないのだ。

 この“有機ELならでは”の問題の解決法としては2つのアプローチがあるようだ。1つは表面に特殊なコーティングを施して外光をカットするやり方。もう1つは有機ELの輝度を上げて,日光に負けないくらいに光らせる方法だ。

 CEATECの有機ELを展示している各ブースでそれぞれ話を聞いてみたが,コーティングまで気を回しているメーカーは皆無。有機EL自体の色味や寿命など,コーティング以前の問題を解決している最中にある。

 輝度に関しては電圧を上げるという方法もあるが,それでは低消費電力という有機ELのメリットが犠牲になってしまう。よい有機EL材料を開発するのが最善の解決法のようだ。

もちろんこれはN2001の有機ELの話だが……

 もちろん,パッシブ型でちらつき,直射日光に弱いという特性はN2001の有機ELならではだろう。有機ELがすべてこのような弱点を持っているかというと,そんなことはない。

 例えば冒頭に紹介した三洋電機の端末にはアクティブ型の有機ELディスプレイが搭載される予定だ。輝度もかなりある。製品化に当たって気になるのは,バッテリーの持ちと有機EL自体の寿命くらいだ。

 しかしそれでも残る疑問は,「果たして有機ELは携帯に向いているかどうか」という根本的なこと。有機ELの薄さ,軽さなどの特徴は,確かに携帯向きといえるが,“有機ELは大きなサイズが作りにくいので,まずはモバイル機器に……”という意図があるのも確かだ。

 ソニーなどはモバイル機器向けではなく,ポストCRTとして大型の有機ELディスプレイを研究している。携帯電話やPDAについては,低温ポリシリコンTFT液晶で十分だというのがソニーの考え(2月7日の記事参照)。

 携帯やPDAでは,わざわざプライバシーフィルタを貼る人がいるくらいで,広視野角は必要とされていない。また有機ELはコントラストが高いのは確かだが,明るさは現在のところ消費電力とトレードオフの関係にある。そして屋外での視認性を高めようと思ったら,輝度を上げていくのが最も簡単な解決策だ。

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