第3世代携帯電話はなぜ高い?──KDDIの回答

W-CDMA方式を使うFOMAは,システムの成り立ちからいって,安価にはできない。対して,そもそもデータ通信を安価に行うことを目指して作られたCDMA2000 1xEVは,W-CDMAの2.5倍もの通信効率を持っているという。

【国内記事】 2001年10月19日更新

 NTTドコモがスタートさせた第3世代携帯電話サービス「FOMA」では,リッチコンテンツが扱える速度は手に入れたものの,そのコスト体系は第2世代とあまり変わらないものになってしまった(9月5日の記事参照)。「大容量の高速データ通信や携帯テレビ電話が実現」というのがドコモの売り文句。そこにはコストはまったく触れられていない。

 このやり方に真っ向から反対するのがKDDIだ。「求められているサービスを安く支えられるインフラであれば(ほかはどうでも)いい」とコストを強く打ち出すのは,KDDIのau技術本部技術企画部長,沖中秀夫理事だ。

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NTT-AT主催のシンポジウム「モバイル・インターネットの最新動向と今後の展望」にて「EZwebとCDMA2000が目指すモバイル・インターネットの世界」と題した講演を行ったKDDI,au技術本部技術企画部長の沖中秀夫理事

既にケータイは単なる“電話”ではない

 沖中氏は「まだ次世代携帯電話,イコール新しいインフラという捉え方をしている人が多い。もう違うのではないか」と語る。

 「既に携帯電話は単なる電話ではない。マルチメディア化している。しかしできあがったシステムを見れば,必ずしもマルチメディアに向いていない」(沖中氏)

 そもそもFOMAに代表される第3世代携帯電話の研究は,デジタル携帯電話が登場した頃から始まっていた。「第3世代携帯電話は,発想としては7,8年,過去を引きずっている」(沖中氏)。インターネットの隆盛以前に作られたこれらのシステムは,既に時代遅れになっているというのがKDDIの主張だ。

 確かに現在のFOMAサービスを見ても,テレビ電話には向いているが,現在マルチメディアを意味する“安価で高速なインターネット”を実現するには向いていないシステムのようだ。

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「次世代ケータイに世の中は何を求めている?」。KDDIは“低コスト”が最重要だと主張する。コンテンツやアプリケーションが高度化する障害になっているのは料金水準

 沖中氏は「スピード的には100〜300Kbpsで十分。問題はスピードだけじゃない。単価だ」と言い切る。沖中氏がここまで自信を見せるのは,KDDIが導入予定のCDMA2000 1xEVが抜群のコストパフォーマンスを持っているからだ。

FOMAのW-CDMAはインターネット以前のシステム

 なぜドコモなどの第3世代携帯電話サービスが高いかというと,「ひとえにインフラを作るのにお金がかかっているから」(沖中氏)だ。

 沖中氏によると,FOMAのW-CDMAもCDMA2000 1xもインターネットが大ブレイクする前からの構想であるため,速度対称型の回線交換データを指向しており,“速度上下非対称のパケット型”というインターネットの特性には向いていない。

 それぞれISDNに似た“音声もデータも同じシステムで転送する”という統合型のため,データトラフィックが極端に増加すると,音声通話の品質が落ちてしまう。そのため,常に余裕を見ておかなくてはならない。このように多様性,柔軟性が高いシステムは,逆に低効率化につながる。

 対して,CDMA2000 1xEV(HDR)は,高速パケットデータ通信に特化,最適化したシステムだ。音声通話はできず,“インターネット型のデータ通信”に特化するため,高効率化を実現できるという。

 「(両者共にKDDIが提供する)ブロードバンドのDIONと,携帯のauをコンバージョン(転換)する。その道具がCDMA2000 1xEVだ」(沖中氏)

 また沖中氏はCDMA2000 1xEVとW-CDMAを比較して効率性をアピール。「1Hz当たりの利用効率で見ると,CDMA2000 1xとW-CDMAは同程度。しかしCDMA2000 1xEVは2倍以上も効率がいい」(沖中氏)

方式 CDMA2000 1xEV cdmaOne
(IS-95B)
CDMA2000 1x W-CDMA
帯域幅 1.25MHz 5MHz
通信サービス データ 音声+データ
接続タイプ パケット パケット+回線交換
下り最高伝送速度 2.4Mbps 64Kbps 153.6Kbps 384Kbps
上り最高伝送速度 153.6Kbps 14.4Kbps 64Kbps 64Kbps
セクタースループット 600Kbps以上 125Kbps 220Kbps 1000Kbps
効率(bps/Hz) 0.48 0.1 0.18 0.2
*CDMA2000 1xEVとW-CDMAを比べるとき,利用する帯域幅が異なるのに注意。セクタースループットはW-CDMAのほうが上だが,1Hz当たりのデータ転送効率でみるとCDMA2000 1xEVはW-CDMAを遥かに凌ぐ

 「少々乱暴な言い方だが,電波を出すためのコストが同じならば,(CDMA2000 1xEVでは)コストが(W-CDMAの)2.5分の1になる」と沖中氏は語る。

 KDDIは2002年度中にCDMA2000 1xEVを導入し,定額制も考慮すると語っている。最大2.4Mbpsのスピードは果たしていくらで手に入るのだろうか。

[斎藤健二,ITmedia]

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