SH505iS特集

「デジタルカメラライクな携帯」〜横向きに込められた意図

 「SH505iS」の外観を見ると、まさに携帯かデジタルカメラか、という表情を持っている。シャープは「デジタルカメラライクな携帯」と、この形状を表現。これまで、携帯電話としての形にこだわってきた同社だが、202万画素+AFの搭載にあたり、形状面からもデジタルカメラを意識し始めた。

カメラ部の材質に込めたこだわり

 「SH505iS」の裏側──カメラとライト、スピーカーが収められている部分を見ると、「こちら側が表」と言っても構わないほど、造形に気を遣っていることが分かる。

 映像と音の入出力に関する部分は、金属の質感を残した円形のパネルにゾーニングされ、放射線状に光を放つ。

 「通常はこちら(サブ液晶面)が表ですよね。ところがSH505iSでは、ここ(円形部)を業界最高クラスのカメラ機能を持っている象徴としてデザインしたので、こちらを裏にできなくなったんです」と商品企画部の田中主事。


第2技術部の西元良樹係長

 ここに使われているのは、同心円上にヘアライン加工されたアルミ素材だ。しかし「アルミを使う例が増えているが、素材が柔らかいためキズが付きやすく、汗に弱い」(第2技術部の西元良樹係長)という問題があった。

 それでも「アルミの素材感を出したい」ため、「見た目では分からないが、プラスティックのフィルムを上に貼って素材感を生かしている」(西元氏)。スピン状の光り方に大いにこだわったわけだ。

二つの内蔵アンテナと「ケガの功名」

 裏側にカメラを配置し、携帯を閉じたまま横向きにして撮影する。このスタイルを実現する上で、ある意味、邪魔になったのがアンテナだ。

ちょうど、開いたときに先端と後端にアンテナが配置されるようになっている

 「SH505iS」では、ダイバーシティアンテナとして二つのアンテナを内蔵。受信感度を落とさず、スリムな外観を実現した。アンテナは、開いたときの液晶の上部、ちょうど通話用スピーカーの上と、本体下部、マイクの下に入っている。

 このアンテナ配置により、従来先端にあった赤外線通信ポートは、ヒンジ部に移動された。田中氏はこれを「ケガの功名」と表現する。

 ひとつは携帯を閉じたまま、赤外線通信ができるようになったことだ。サブディスプレイにメニューを表示し背面の三つのボタンを使って、505iシリーズの特徴であるテレビやビデオデッキの操作が行える。

 背面の三つのボタンのうち、中央のボタンを押すとメニューが起動。アプリを選ぶと、デフォルトでは家電リモコンソフト「キティDEリモコン2」が起動するようになっている。背面起動アプリは変更することも可能だ。

 もうひとつは、携帯同士の赤外線通信の失敗が減ったことだ。ドコモの504iや505iでは、赤外線を使ってデータのやり取りが行えるが、やり方によっては失敗する場合もある。最も多いのは“近づけ過ぎる”ことだ。最適な距離は、実は20センチ。ある程度離して置くことで、確実に送受信が行える。液晶を開いた「SH505iS」同士を机に置くと、ちょうど距離が20センチ。絶妙な配置となる。


サブ液晶もTFTに。電池寿命も増加

技術部の
山路哲係長

 横向きスタイルへの変更に伴い、背面ディスプレイのグレードアップが図られたことも忘れてはいけない。1.2型と大型のサブ液晶はTFT。「ファインダー画面として使うということで、コスト的に無理をしてTFTにした」と技術部の山路哲係長は話す。

 ちょっと面白いのが、ヨコ撮り時のホールド感を高めるために工夫されている部分だ。折りたたみ型端末を閉じて横に持ち、シャッターを押そうとすると「普通はねじれの遊びが出る。SH505iSは、全然ずれない。これは機構上の工夫」(西元氏)。こうしたところからも、単に横向きにしただけでなく、細かな点まで練り込んで作られていることが分かる。

普通の折りたたみ型でも、突起とゴムの受けがあるが、「SH505iS」では、かみ合うようになっている。ちょっとした工夫だが、この突起により横向き撮影時にも液晶面がずれることがない

 なお「SH505i」に搭載されていた3D液晶機能は、今回は搭載が見送られたが、液晶パネルの構造が簡素化し、液晶の輝度がアップした。

 また前機種「SH505i」の弱点とも言われた電池寿命も、回路の改善により少々時間を上積みし、320時間に。

 さて、ここまでカメラ周りを中心に「SH505iS」を見てきたが、ソフトウェアの完成度がさらに向上したことも見逃せない。前機種「SH505i」でインタフェースを一新、随一ともいえる使い勝手を実現したが、その後登場した「SH252i」では、それに加えてスケジューラ機能の進化、撮影した画像の編集機能などを追加。メガピクセル端末である「SH505i」を選ぶか、ソフト機能がさらに充実した「SH252i」を選ぶか、難しい選択を迫られていた。

 「SH505iS」では、「SH252i」の機能はすべて引き継いでいる。“カメラだけでなくフル機能のソフトウェア”──。202万画素+AFというカメラが最大の特徴ではあるが、そのほかの機能面でも死角のない端末になっている。

 デジタルカメラ代わりにも使える携帯──。ぜひ実機で、使い勝手とカメラ画質を堪能してほしい。