モバイルエージェントって何?〜飛行機と空港の関係〜オムロンの『Jumon』。これはauの携帯電話に搭載されている,ネットワークにエージェントを自由に飛び回らせるシステムなのだそうです。うーんなんだかよく分からないけれど,スゴそう。でも,そもそもエージェントって何? それでどんなことができるの??
こんにちは! もばいるのつくりかた23回です。 前回の最後に出た「モバイルエージェントって何?」という疑問。ケータイ博士は逃げてしまいましたので,今回は開発をしているところに直接聞きに行ってみたいと思います。 ということで,今回はオムロンにてモバイルエージェント『Jumon』(じゅもん)についての勉強です! えーと,その前にちょっと下調べ。 Jumonというのはモバイルエージェントミドルウェアで,これによって,一定時間ごとにサーバから情報をダウンロードできたり,携帯電話でP2Pのサービスが可能になったりする……らしいです。すみません,何のことやらさっぱり。 「モバイルエージェントミドルウェア」? 「P2P」? がーっ,日本語で説明して,日本語でっ! ●●●JumonはJavaでできている!結局下調べの意味もないまま,やって参りましたここオムロン。今回の先生は,事業開発部 Jumonプロジェクト 営業担当係長の西田史朗さんです。よろしくおねがいしまーす! 「はい,よろしくお願いします。そうですね,概念を表す言葉が多いので難しく感じるかもしれませんが……。言葉の意味などは1つずつ確認していきましょう」 はい! では早速ですが,「Jumon」というのは何なのですか? 「まずJumon自体のことを説明すると,これはJavaという技術で作られているプログラムなんです。現在はauの携帯に搭載されていて(6月25日の記事参照),これを利用したコンテンツとしては次世代携帯対応の『ぽけっぱ』などがあります」 Javaというと,連載1回目で勉強したアレですね? いろいろな製品との間で互換性を持たせるために使われるJavaVMとか。 「そうそう,それです。JumonはそのJavaVMの上に乗る形で搭載されているんですよ」 あ,なるほど。だからJumonはプラットフォームに縛られないんですね。携帯電話でも,PDAでも,PCでもゲーム機でも,いろいろな環境で動くんだ! 「それは携帯電話同士,PC同士などに限定されずに,Jumonを通してさまざまなプラットフォーム間でやり取りができるという利点にもつながります。そのあたりのことについては,また後程詳しく話すとして,まずオムロンのJavaを用いた開発の歴史について,少し触れておきましょう。 あまり知られていないことなんですが,Javaという技術がSunMicrosystemsという米国の会社で開発された時に,オムロンが日本ではかなり早い時期にライセンスを受けたんです。もう5年程前のことになりますね」 へえー,それは知りませんでした。パソコンメーカーとかかな,と思っていました。 「実はオムロンとJavaの関係は深いんですよ。たとえばオムロンの大きな仕事の1つに,自動販売機や駅の券売機などのシステム開発もあって,これにJavaを応用した研究をずっと続けているんです」 あ,第1回の取材の時にも,「自動販売機の中に入っている賢いプログラムなども,Javaで書かれていることが多い」という話が出ていましたっけ。 「そう,まさにそれです。で,自動販売機などはパソコンのような汎用的な機械ではなくて,専用の機械でしょう? このような機械のことを『組み込み型機器』と呼びます。パソコンのように,いろいろなプログラムを読み込んでさまざまな用途に使うのとは違って,専用の高度に洗練されたプログラムを組み込むからですね」 ふむふむ,で,その組み込み型機器にJavaを使用して動かす,ということを進化させて「Jumon」になったんですか? 「ええ。組み込み型のJava機器でエージェント機能を実現するという技術として生まれたのが,今のJumonです。最初に発表したのは2年前のCOMDEX(米国の大きなコンピュータ関連の展示会)ですね。その時はABDM(Agent Based Distributed Middlewareの略)という仮称でデビューしました」 それから2年たって,今ではauの携帯電話に搭載されているとのこと。 ではでは,次にそのJumonでどんなことができるようになるのかを教えてください! ●●●飛行機と空港みたいなもの??「Jumonというのは,自律的モバイルエージェントシステムで,エージェントを自由に飛び回らせて,Javaの搭載されているパソコンや携帯電話,PDAなどあらゆる機器上で仕事をすることができるんです」 うーん,エージェントを飛ばせる,ってどういうことなんでしょう? 何が飛ぶの?? 「エージェントというのは,状況認識や価値基準による判断や実行機能を付け加えた,ソフトウェアモジュールのことです。そうですね,『飛ぶ』というと抽象的になってしまうかな。正確に言うとこれは,通信相手に,ある程度インテリジェンスのある小さいプログラムを渡す技術なんですよ」 うーんうーん,難しい……相手にプログラムを渡す,というのは普通の通信とは違うんですか? 「そうですね,じゃあ実際の例を取って考えてみましょうか。例えば携帯電話からサーバの情報を読み込む場合,通常どんなふうにやり取りをしますか?」 えーと,私が一番よく使うパターンを思い出しますね。例えば電車の乗り換えを調べたりするのには,サイトに接続して,検索画面に入って,駅名を探して選択をして,検索して,結果が出る……という感じかな。 「その手順をたどるのに,その都度サーバにアクセスして,いちいち結果を受信していますよね」 うんうん。でもこれって時間がかかってまどろっこしいし,パケット代もかかるんですよね。 「そうそう。そこでJumonを使うと,その手順をなくすこともできるんです。例えば,携帯からサーバにエージェントを飛ばし,『○○駅で検索!』という手順をサーバ内で行い,その結果だけを携帯に戻すことも可能です」 なるほど,1回サーバにアクセスするだけで,あれやこれやの手順はエージェントが自分で考えて,仕事をしてくれるわけですね! かしこい! イメージとしては,携帯からサーバに飛行機が飛んでいって,それに乗っていた仕事人(プログラム)がその場で作業して,結果を持って帰る,そんな感じかな? 「それによって通信量をぐっと削減することができますよね。これがJumonの利用例の1つです」 この例は,携帯からサーバへの通信でしたが,PCと携帯,携帯とPDAなどJumonが搭載できる機械同士なら,自由にやり取りが可能なのだそうです。 そうそう,ここで重要なのは,飛行機が飛ぶには空港が必要だということ! サーバ,PC,携帯,PDAそれぞれにJumon空港があるから,自由に飛行機が発着陸できるわけです。 ちなみに,それぞれのJumon空港の名前は,サーバやPC,PDA用が「Jumon」と「Jumon-Turbo」,携帯電話用が「Jumon-Mini」とのこと。Jumon-Miniの必要メモリサイズは3.5kバイトだそうで,さすが携帯電話組み込み用だけあって,小さいですね。 「携帯機器間,社内ネットワーク間,社内ネットワークと携帯機器間などを自由に移動できるモバイルエージェントを使って,サーバの分散環境を自在に拡張できるのも,Jumonの特長ですね」 ふむふむ。さまざまな機器間でエージェントを飛び回らせることができるとなると,ほかにもいろんな利用法がありそうですね。 「そうですねー,本当に可能性はたくさんありますね。サーバを介さないで,携帯電話同士で直接やり取りができるというのも……」 あっ,それそれ! 携帯電話でP2Pのサービス,っていうのはそれのことですね! 「そうですそうです。Jumonによる分散環境で,サーバの負荷を軽減することができ……」 ちょ,ちょっと待ってください,そろそろ字数も尽きてきてしまいましたので,続きはぜひ次回に! そもそも「P2P」ってどんな意味なのかもよく分からないんですよね,私。来週はそこから教えてください! ということで,来週はJumonを使って携帯電話でP2P!のお話です。お楽しみに〜! [絵本 智,ITmedia] 連載バックナンバー Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
最新スペック搭載ゲームパソコン
FEED BACK |