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つくりかた
 [第25回]

ケータイで伝わる「口コミ」情報〜Jumonの可能性〜

「口コミ」で情報が広がる……それをオンラインで行ったら?? 例えば「Jumon」を使うと,口コミのネットワークで伝わる情報も,配信元で制御できたりするんです。そのほか,ダウンロードも高速化できたり,今回もJumonのスゴイところをいろいろ紹介!

【国内記事】 2001年11月7日更新

 こんにちは! もばいるのつくりかた25回です。

 今回も引き続き,オムロンにてモバイルエージェント『Jumon』(じゅもん)について勉強中です。

 Jumonを使うと,携帯電話同士で直接やり取りをして,ゲームの対戦などもリアルタイムでできてしまう!というのが前回のお話でした。

 例えば発起人Aさんがサーバからゲームをダウンロードし,Bさんと対戦しようとする場合。Aさんは,自分の携帯から直接Bさんの携帯へエージェントを送って,ゲームのプログラムを渡します。この場合,Bさんはサーバからゲームをダウンロードしてくる必要はありません。便利ですよね。

 でも,仕事中や授業中などに,急に「ゲームしよう!」なんて言われたら困るかも……。

着陸はJumon空港に許可をとってから

 さてさて。ということで,今回もオムロン事業開発部Jumonプロジェクト営業担当係長の西田史朗さんにお話を聞かせていただきます。よろしくお願いします!

 「はい,よろしくお願いします。そう,突然プログラムを送りつけられたら,それは困りますよね。いたずらでプログラムを送られてきてしまうこともあるかもしれませんし」

 うーん,電話が鳴って画面を見たら「ゲーム開始!GO!」なんてメッセージがいきなり出ていたりして。それも誰だか分からない人からの挑戦だったりしたら,困るなあ。

 「なので,そういうことがないように,エージェントの移動の前には確認を取るんです。まず移動先のJumonに『送ってもいい?』と聞いて,OKをもらえたら初めてプログラムが送られます」

 なるほど。AさんからBさんにまず「ゲームしない?」という連絡が送られて,BさんがOKをした時だけ,プログラムが移動する仕組みなんですね。

 例えるなら,Aさんの携帯のJumon空港から飛び立った飛行機(エージェント)が,Bさんの携帯のJumon空港と通信して「着陸許可を願います」とやっている感じですね。許可がなくては,BさんのJumon空港には降りられないわけです。

 「これなら,都合の悪いときにゲームを持ちかけられても,断ることができます」

 知らない人からの通信を拒否することもできますね。これで安心!

携帯・PDA・パソコンを通して「口コミ」で広がる情報

 「あと,Jumonを使うとこんなこともできるんですよ。よく『口コミ』で情報が広がる,なんて言いますよね。それと同じことが,オンライン上でも可能なんです」

 え? 口コミって……それは口伝えに噂などが広がることですよね。普通,直接喋ったりして伝わっていくことを指しますよね?

 「そう,テレビや新聞などから情報が発信されて,それを多数の人が受け取るのとは違って,口コミは人から人へ情報が伝達されて,結果的に多くの人に広まる形をいいます。つまり,別に実際に『口』でなくてもいいわけですよね」

 ふむ。そうか,メールなどで友達から友達へ送られて広まっていくのも,口コミなんですね。ネット上でバーゲン情報などを見つけて,それを友達に教えたり。その友達がまた友達に教えて……そうやってどんどん伝わっていくのが,いわゆる口コミの形です。

 「でもこれって,どこまで伝わるのか,どんなふうに広まるのか,把握ができないですよね。情報を発信する側としては,この『口コミ』のネットワークを使いつつ,情報配信の制御もしたいわけです」

 つまり,どこまで伝わるのかを制御したい,ということでしょうか。口コミで人から人へ情報が伝わっていく時に,どこまでも無限に広がっては困るとか。

 「そうですね。そこでJumonを使った情報配信では,『何人までに伝える』という制限がつけられたりもするんです」

 たとえば,3人までと制限した場合,以下の図のようにAさん・Bさん・Cさんと伝わった時点で,それ以上次の人には送れないようにできるとのこと。前回までに説明されたように,Jumonが搭載されている端末同士なら直接自由に情報を送りあえるので,携帯・PDA・パソコンと異なったプラットフォームに情報が伝わっていっても,ちゃんとそれはカウントされていきます。

 この情報は,例の賢いJumon飛行機によって運ばれるので,「AさんからBさんに情報を送ったぞ。今2人目だぞー」とちゃんと記憶され,それがまた次の携帯やPDAに引き継がれます。

 もし「友達3人に伝わったら,プレゼントが当たる!」というようなキャンペーンがあるとしたら,この3人に伝わった時点で,その結果を記憶したJumon飛行機が情報の配信元に飛び帰り,キャンペーンにエントリーするすることもできますね。

Photo

 前回,Jumon飛行機が運んだのはゲームでしたが,今回の場合はそれを情報に置き換えたのだとも考えられます。端末同士が直接やり取りをして情報を伝えていく形は,これも一種のP2Pですね。

 P2Pというのは,ネットワークに接続された複数のコンピュータのうち,任意の1対1が対等な接続状態にあること。処理能力やファイルなどのネットワーク上の情報資源を対等な立場で共有する状態を指します。ちなみに「peer」という言葉には,前回書いたような仲間という意味のほかに,「同等の人」という意味もあるのだそうです。

 Jumonは,携帯でも,PDAでも,パソコンでも,どんな環境でも同等の仕組みとして自由にやり取りができるようにするミドルウェアです。つまり,これはプラットフォーム間の壁や段差を取り払う,バリアフリーの仕組みなのかもしれませんね。

Jumonは「飛行機」の性能も優秀!

 さて,これまでJumonができることをいろいろと聞いてきましたが,そのほかにスゴイところなどはありますか?

 「たとえば,Jumonを使うとダウンロードなども,とても速くできるようになるんですよ」

 ふむ。今まで「プラットフォームを問わない」とか「端末間で自由にやり取りができる」などの利点がありましたが,つまりそのやり取りも高速化されるということでしょうか。

 「そうそう。下の図を見てもらうと分かりやすいかと思うのですが,やり取りする情報のうちの通信部分をぐっと小さくすることができるんです」

Photo
この図に書いてある文字は実際のプログラムらしいのですが……私には解読不可能

 コンテンツをダウンロードする場合,その本体以外に,通信に関するプログラムというのが必要なのだそうです。どうやって送るか,というのを行う部分ですね。

 たとえばゲームコンテンツなら,ゲーム本体と通信プログラムを合わせて1つのコンテンツになるわけです。この場合,通信プログラムの分,容量が大きくなってしまいますよね。

 「その通信のプログラムを,Jumonによって20パーセント以下に小さくすることができるんです。これによってダウンロードを高速化することができます。コンテンツ全体の容量を小さくすることもできますし……。言いかえると,通信部分が小さくなった分,コンテンツ本体にもっと大きな容量をとることができるようにもなります」

 一昔前は,パソコンの世界でもプログラムを小さく作ることはとても大事な技術でした。メモリも高価で,しかも今のように「メガ」などという単位にはほど遠かった頃には,小さく軽くプログラムを作る技術もいろいろと考えられていました。

 今はパソコンが飛躍的な進化を遂げ,容量も大幅に増えたため,そのプログラムも「大きい」ことが容認されてしまっています。しかし携帯やPDAなど,ハードの大きさも小さく,CPUもさほど強力でない世界では,プログラムのコンパクト化は未だとても大切なことなのです。

 特に携帯電話のコンテンツなどは,それぞれのキャリアで容量の上限が制限されていて,その中でぎりぎりにやり繰りしてプログラムを作っている状況です。なので,Jumonによって通信プログラムを小さくでき,コンテンツ本体をさらに充実させる余裕が取れるのは魅力的ですね。

 でも,どうしてJumonを使うと通信部分が小さくなるのでしょう?

 「それは,Jumonがその部分を代行するからですね。コンテンツ自身が行っていた通信の手続きを,Jumonが代わって行うんです」

 Jumonはもともと通信の機能,つまり今までの例で言うところの「飛行機」を持っているので,それを利用してコンテンツを運ぶことができます。なので,コンテンツ自身にわざわざ羽根を付けて,飛行機の機能を持たせる必要がないのです。これが,コンテンツの通信部分を小さくできる理由ですね。

 さてさて,ここまで3回に渡って勉強してきましたオムロンのJumon。エージェントを飛ばして仕事をさせることができたり,異なるプラットフォーム間でP2Pのやり取りができたりと,さまざまな機能があるのですね。今後,Jumonを利用したコンテンツもいろいろ登場の予定とのことなので,乞うご期待!

 お話ししてくださった西田さん,ありがとうございました。

 それでは,来週もまたいろいろな技術の世界に飛び込んでいきたいと思います。以上「もばいるのつくりかた」でした!

[絵本 智,ITmedia]

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