300円のケータイコンテンツなら,必ずそれだけの価値を!ケータイは電話するだけのものではないのはもう常識! iモードにEZweb,J-スカイといろいろな情報満載のコンテンツはとても便利ですよね。今回はこれらのコンテンツを作っているインデックスにお話を聞きました。小さい画面に大きな情報,ケータイコンテンツの秘密に迫ります。
●●●ケータイで電話だけ?……もったいない!こんにちは! 「もばいるのつくりかた」第27回です。もう,すっかり冬の空気ですねー。街にはクリスマスのイルミネーションが灯り,そろそろ年末の雰囲気になってきました。 クリスマスパーティーや忘年会などのことを考え始める今日この頃,お店はどこにしようかなー,と携帯サイトを検索してみたり。うん,このお店,なんかよさそうかな? ……と,こんなふうに,ちょっと思いついた時に,簡単に情報を調べられるのって,すごいことですよね。うーん,便利になったなあ。 そんなふうにすっかり私たちの生活に入り込んでいる携帯電話。そのとても便利なコンテンツに今回は注目してみたいと思います。 ●●●パソコンのWebと携帯コンテンツはどう違うの?さてさて,携帯コンテンツを作っているところにお話を聞きに行きたいのだけれど……。そういえば,第1回「iアプリのつくりかた」でお邪魔したコネクトにも出資している,携帯コンテンツ制作会社のインデックスという会社がありました。「恋愛の神様」や「メルアニメ」など,携帯・PHS向けの公式コンテンツを50以上も提供しているとのこと。うむ,ケータイコンテンツを聞くならここだ! ということで,やって参りましたインデックス。今回お話してくださるのは経営企画室の室長,山田昌宏さんです。
インデックスの設立は1995年のこと。当初は米国から輸入したDM用軽量ビデオの販売などを行っていましたが,1997年にモバイル向けコンテンツのビジネスを始めたのだそうです。その当時はポケベル向けに情報配信を行うサービスが主で,コンテンツの中身はもちろんテキストベースでした。それは,1999年のドコモiモードの登場によりWebベースのものへと変化を遂げることとなります。モバイル向けコンテンツの未来を予測して,ビジネスの拡大を果たした結果が,現在の携帯コンテンツ業界をリードするインデックスの姿なのでした。 さて,現在携帯のコンテンツというのは,ポケベル時代のテキストベースのものとは違い,iモードやEZweb,J-スカイなどのWebベースのものが主流になっていますが,そもそもこれはどのような仕組みのものなのでしょう? 例えばパソコンで見ているWebとはどう異なるのでしょうか。 「確かに,技術としてはパソコンで見ることのできるWebサイトと非常によく似た技術を使用しています。パソコンのWebは,ご存知の通りHTMLという記述言語で書いていきますよね。それを,iモードでは,携帯などパソコンに比べて非力な端末でも快適に使用できるようにチューニングしたCompactHTMLという言語を使います。EZwebはHDML/WMLという,これも別の技術が使われているんですよ」 CompactHTMLもWMLも携帯向けコンテンツを作るための記述言語ですが,CompactHTMLは日本発の仕様だとのこと。WMLはWAPフォーラムで標準化作業が行われている規格で欧州でも多く使われている規格なのだそうです。CompactHTMLはNTTドコモがiモードで採用したことで爆発的に広がりました。 ある意味,当初競合関係にあった技術ですが,最近国内ではWAPを採用しているauのケータイでもCompactHTMLで書かれたサイトが見られるようになるなど(11月1日の記事参照),互換性も高まっているようです。 でも,パソコン用のWebと近い技術で作られているということは,そちらからの流用もあり得るんですか? 「そうですね,見るための環境があまりに違いすぎるので,そのまま流用するまずないですが,パソコン用のWebをチューニングして使うという考え方はあります。ですが,実際はケータイならではのところがありますから,そちらのほうが大きいかな?」 ●●●公式コンテンツの利点お話によると,インターネット上ではなかなかコレというものがなく,今でも標準が特に決まっていない「小額決済システム」(モノを買ったり,使用した分だけの料金をユーザーから徴収するシステムですね)が,携帯では既に実現されていることも大きいとのこと。これは,いわゆる「公式コンテンツ」の利点の1つですね。 「たとえばNTTドコモの公式コンテンツなら,コンテンツで発生した課金を,お客さんに対して通話料金といっしょにNTTドコモが回収代行してくれる。コンテンツを作る側としては,その部分は非常に大きな違いですね」 なるほど,確かに便利です。PCのWeb上では難しかった情報配信に対する課金が,携帯ではかなり自然に行えるようになりましたよね。これでユーザーからは情報料がざっくざく……。いいなー,私も携帯コンテンツ作ろうかなー。 「あはは,作ってみますか? でも,確かに課金システムについては解決されましたが,だから簡単に儲かるというわけではないですよね。300円の情報料ならば,もちろんその分の価値のあるものを用意しなければいけません。お客さんは正直だし,厳しいです。よいものを,きちんと作らないとあっというまにそっぽを向かれてしまいます」 うっ。やっぱりそう簡単にはいかないですよね……。 では,「いいケータイコンテンツ」というのはどういうものなのでしょう? ●●●よいケータイコンテンツのつくりかた「そうですね,第一には市場性。それは基本として,良いコンテンツであるための条件を挙げるなら次の3点ですね」 と,山田さんが話してくれた内容は以下の通りでした。
……ん? なんだか,ちょっと予想していた「見やすい画面作り」とか「選びやすいメニュー」とか,そういう内容ではないんですね。 「はい。そういうことは基本中のキホン。それができていないとまず話になりません。小さな画面の中にデザインするノウハウなどもありますが,それらはあえて特筆すべき部分ではない最も基本的なところです。とはいっても,すべてそのノウハウの蓄積あってのことですから……けっこう大変なんですよー」 っとっと,失礼しました。それはそうですよね。では,それぞれについて説明していただけますか? 「はい。まず最初の信頼性。コンテンツサーバを安定した状態に維持運営していくことです。当たり前ですけれど,使いたい時にいつでも使える,というのは特にケータイのように生活に密着して利用されるコンテンツには当然のこと。iモードでもコンテンツサーバはNTTドコモの外に設置しますので,自社内で厳重に運用されています」 うーん,もし有料コンテンツでいくらかのお金を払っていて,見たいと思った時にサーバが落ちていて見られなかった,なんてことがあったら怒っちゃいますものね。 「そして2.の内容は,そうだなぁ,具体例を挙げるとポンキッキのガチャピンは緑色,ムックは赤ですよね。でも,ケータイは機種によって液晶が違うので,コンテンツは同じものを提供していても,機種によって違った色に見えてしまうことがあるんです」 同じコンテンツでも,見る携帯によって色がバラバラ……ということは,明らかに変な色合いに見えてしまう携帯なども出てくるのかな。それは嫌だなぁ。 「そうするとユーザーも不満,そしてコンテンツの権利を持っているコンテンツホルダーも『こんなのガチャピンじゃない!』ということになりますよね。私たちもそれはクオリティが低い,と判断します」 というと,その問題はどうやって解決するのでしょう? 色調整の方法があるのかな?? 「いえ,もっと地道ですよ。インデックスでは,これまで発売されたコンテンツを使用できる全機種で,できるだけ同条件で再現できるように努めています。だから1機種1機種確認して,コンテンツ自体を各機種ごとにチューニングした形で作るんです。携帯はコンテンツを見る時に『自分がなんという機種か』という情報を送ってきますので,サーバはその都度その機種向けのファイルを送信します。これにより,実際の見え方を調整しているんです」 え? それってつまり,これまでの各機種1つ1つに向けて,作り分けてるということですか? 「はい,そうしないと特にキャラクターを使用する場合など,機種によってはお話にならない表示になったりしますから。例えばムックが『赤』の身体のはずなのに,なぜか『赤茶色』になっていたらムックに見えないでしょう? それは,コンテンツホルダーからすると非常に切実な問題です。だから私たちは機種ごとに作り分けて表示させて検証して,という方法でクオリティを維持しています。また,もちろんそのほかにも隠されたノウハウはありますが……それはここではヒミツです(笑)」 むむ。やはりなにか秘法があるのですね? でもそれについては企業秘密とのことで教えてもらえませんでした(残念)。ともかく,さまざまなノウハウの蓄積があるからこそ,コンテンツのクオリティが維持されているのは間違いないようです。 インデックスの提供しているコンテンツには,「@ガチャピン・ムック」や「i LOVE リカちゃん」「鬼太郎まにあ」など,キャラクターが登場するものがたくさんあります。 以前,トップランドでドラえもんのストラップの作り方を聞いた時にも,キャラクターを使ったものを作る厳しさについての話が出ていました(6月6日の記事参照)。必ずそのキャラクターに見えなければならない,イメージを壊してはならない,という厳密なチェックをクリアして,多数のコンテンツを提供しているのは,まさに「つくる」ということのクオリティの高さの証明なのでしょうね。 それにしても,それぞれの機種用にいちいち画像を作り分けるのかー……。た,大変そうだなぁ。 「もちろん,わけなく全機種分の画像を作る! というわけではありませんけどね。コストとクオリティのバランスも大事なことです。事業ですからね」 コストとの兼ね合いも考えつつ,できるだけいい状態でコンテンツを提供できるようにしているとのこと。すでに販売終了になっている機種から,もちろん新機種が出たらそれに合わせた仕様も追加して……。 「はい,それがよいコンテンツを作るための3番目『継続』という要素ですね。当然,既に運営しているコンテンツも,新機種が出るたびにそれに対応する内容を加えています。サーバの安定運用の話もそうですが,コンテンツ自体に関しても,作って終わりということはありえません。ケータイ自体がまだまだ進化していくハードですから,それらに対応していくのもひとつひとつ地道な作業です」 ハード的な変化に合わせていく調整ももちろんですが,コンテンツ自体の内容の変化も「継続」の重要なポイントとのこと。その時々に合った新しい情報を更新するなど,どのようにコンテンツを成長させていくかが大切なのだそうです。インデックスの自信がある点として,この「育て方」も挙げられると山田さんは言いました。 コンテンツを立ち上げて,継続して情報を更新し,新機種や新しいサービスにも対応すること。またさらに新しいコンテンツも作る,これが現在のコンテンツ運営の流れのようです。もっと華やかな感じの話が出るかとも思っていたのですが,すごく地道で大変で,でも誠実な姿勢で,それらは行われているのでした。 ちなみに,1つのコンテンツは何人くらいの方で製作されているんですか? 「体制としては,1つのコンテンツを3人のチームで担当します。マネージャー・プランナー・デザイナーのチームですが,これに社内のエンジニアリングチームが30名いますので3人を核として協力して製作しています。もちろん,外注している作業もあるので,それだけということはないですが」 お話によると,そのコンテンツ製作の核になる3人のチームも,決して1つのコンテンツにかかりきりになるのではなく,それぞれがまたばらばらに別のコンテンツも担当するのだとのこと。つまり,メンバーがクロスしたチームが複数存在する体制で制作が進められているわけです。これにより,制作のノウハウや情報について「よい競争関係」(山田さん)に基づいた素早い情報共有が行われているのだそうです。 ●●●え? 雑誌も? 謎が深まるインデックスうーん,なるほど。画面が小さいからパソコンのWebより楽かなー,なんて思っていた私は甘かったです。携帯コンテンツをつくるのって大変なのですね。 「ええ,ですが最近はケータイの中に表示するコンテンツだけではなくて,さらに進んでいて『ケータイの中から広がるコンテンツ』なども考えているんですよ」 え? というとそれって具体的には? 「そうですね,たとえば携帯の中のデジタルコンテンツだけではなく,実際のモノを作るようになったり……あ,雑誌も出しているんですよ。ヌーベルグーという関連会社からは『ケラ』とか『スープ』というようなファッション雑誌なども……」 ととと,さらに面白そうなお話なのですが,今回は誌面も尽きてしまいましたのでこのへんで。次回はこの続きからのお話,題して「ケータイコンテンツから広がる『コンテンツ』の未来」についてです。それでは,また来週〜! [絵本 智,ITmedia] 連載バックナンバー Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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