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インタビュー

月額課金でもユーザーは残る――iモード向け「ドコモマーケット」の狙いと成果ノウハウをスマホにも移植する(1/2 ページ)

公式サイトを経由せずに有料コンテンツを購入できる「ドコモマーケット」がiモード向けに提供されている。同マーケットではどんな開発者がアプリを作り、どんなユーザーが購入しているのか。そしてARPUへの影響は――。ドコモの渡辺英樹氏に話を聞いた。

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 「ドコモマーケット」と聞いたら、本誌の読者はドコモのスマートフォン向けポータルサイトをイメージする方が多いかもしれないが、実際に“マーケット”としての性質が強いのは、iモード端末向けに展開しているドコモマーケットだ。

 2010年12月6日から提供されているiモード向けドコモマーケットは、「アプリストア」「MUSICストア」「BOOKストア」の3つのストアで構成されており、iアプリ、音楽コンテンツ、電子書籍をケータイから購入できる。ドコモケータイで有料コンテンツを購入するには、iモードのトップ「iMenu」から公式サイトにアクセスする必要があるが、ドコモマーケットなら公式サイトを経由せずにコンテンツを購入できる。ドコモポイントでコンテンツを購入できるのも特長の1つだ。

 2011年6月末時点におけるドコモマーケットの月間ユニークユーザーは800万人に上る。iモード契約者は5054万3600(2011年5月末時点)なので、単純計算でiモード契約者の6〜7人に1人がドコモマーケットを使っていることになる。さらに、サービス開始から3ストアのダウンロード総数は2900万に上り、5〜6月は3ストアとも過去最高の売上を更新しているという(いずれも2011年6月末時点のデータ、以下同)。

 従来のiMenuとは違った位置付けでコンテンツ購入の導線を提供しているドコモマーケット。その狙いと取り組みを、同社スマートコミュニケーションサービス部 ネットサービス企画担当課長の渡辺英樹氏に聞いた。

photophotophoto 左から「アプリストア」「BOOKストア」「MUSICストア」

20%は個人が開発したアプリ

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NTTドコモの渡辺英樹氏

―― iモード向けドコモマーケットを開始した経緯をお聞かせください。

渡辺氏 これまで、iモードの公式サイトには個人の開発者が参入してアプリを開発することはできませんでした。2011年、iモードを開始してから13年を迎えるにあたって、公式CP(コンテンツプロバイダー)だけでなく個人にもアプリ開発の間口を広げることで、これまでのクローズドなプラットフォームをオープンにしていきたいと考えました。音楽はレコチョクさんと協業し、電子書籍はドコモが主体となって販売しています。サービス提供者としてのノウハウを積み重ねていきながら、スマートフォンを含むいろいろな時代に対応していくという狙いもあります。

―― 開発者はどれくらいいるのでしょうか。

渡辺氏 開発者の登録数は1000くらいで、うち個人が約600人を占めます。開発当初から1000アプリが登録され、現在は4000ほどに増えています。有料ではなく、無料のツール系アプリやGPSを使ったアプリを配信している方も多いです。

―― 無料の場合、どういう目的で配信しているのでしょうか。

渡辺氏 “セミプロ”の開発者の中には、まずは無料から配信して有料化するという方もいますが、大半は興味本位というか、「面白いからやりたい」という方ですね。ドコモのプラットフォームに乗れるのなら、面白いアプリを出して反響を楽しみたい、と。

―― 個人の方が作ったアプリの評判はいかがですか?

渡辺氏 ダウンロード比率は個人のアプリが20%ほどです。スケジューラーやメモ、単位変換、電源管理アプリなどが人気ですね。(3月11日の)震災直後は原発からの距離を測るアプリも出ました。もちろん公式アプリもたくさんありますが、個人じゃないと発想できないスピード感があります。

電子書籍はすべてチェックしている

―― アプリを申請してから審査が終了するまでには、どれくらいの日数がかかるのでしょうか。

渡辺氏 開発者の登録が済んでいる方なら、アプリを審査に出してから通過するまでは1週間もかかりません。4営業日くらいです。弊社はiモード事業を12年間やってきので、コンテンツ受付のノウハウは相当持っています。既存の仕組みを使って、個人アプリもスピーディにチェックできるようにしています。

―― どんなところを審査するのでしょうか。

渡辺氏 公序良俗に反していないかを見ます。公式サイトでは一定のボリュームと中身を見てCPと一緒に作っていますが、ドコモマーケットではスピードを優先し、リスク(公序良俗に反するもの)がなければ全部OKとしています。

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BOOKストアでは、刺激的なタイトルの作品も配信されているが、中身は「それほどでもない」(渡辺氏)

―― 公式サイトよりも審査基準が緩いわけですね。ドコモマーケットの審査で弾かれたコンテンツはあるのでしょうか。

渡辺氏 明らかに著作権を違反しているものや卑猥なものは弾いています。アプリ、音楽、電子書籍の底辺の基準はほぼ一緒なので、安全性はかなり担保しています。

―― ただ、BOOKストアを見ると、やや刺激的なタイトルの作品も配信されているようですが……。

渡辺氏 電子書籍については、書店の店員のように、作品の中身はすべてチェックした上で販売しています。タイトルが刺激的な作品も中にはありますが、(審査に通過したものは)中身はそれほどでもありません。世間的にエッチと言われるコンテンツは入れていません。

新規ユーザーの7割がドコモポイントで購入

―― ドコモマーケットの狙いの1つに、これまであまりiモードを使ってなかった人たちにコンテンツを利用してもらい、ARPUを上げることがあると思います。実際にARPUは向上したのでしょうか。

渡辺氏 上がっていますね。ドコモマーケットでは、パケット定額利用者はもちろん、これまで定額サービスを使ってなかった人たちにコンテンツを使ってもらうことを狙っています。我々が想定していたユーザー層に刺さり、利用促進できました。特に効果的だったのが、ドコモポイントの利用です。実は、コンテンツの新規ユーザーの7割くらいの方がドコモポイント経由で購入いただいているんです。お金を払うのは抵抗があるけど、ポイントならいいかと。公式サイトではドコモポイントは利用できないので、ドコモポイントをコンテンツ購入に利用できるのは、今回の取り組みが初めてです。

 スマートフォンのドコモマーケットは優れたアプリをオススメするものですが、iモード版はすそ野を広げることが目的です。もちろんスマートフォンでもコンテンツの利用は促進していきたいと考えています。コンテンツの販売手法やドコモポイントを使ったノウハウをスマートフォンに移植していくことも検討していきたいですね。

―― 利用できるポイントに上限はあるのでしょうか。

渡辺氏 最大500ポイントです。ポイント経由で購入してもらい。それから定着して購入いただくケースもあります。

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人気アプリランキングには、有名ゲームやAKBのコンテンツが入っている

―― どんなジャンルのアプリが人気ですか?

渡辺氏 有料アプリはゲームが多いですね。ぷよぷよ、テトリス、オセロといった定番ものはもちろん、30〜40代の男性ユーザーが多いので、パチンコやパチスロも人気です。あとはAKBの写真集ですね。写真をアプリに組み込んだビルトインアプリとして販売できるので、電子書籍と違い、1度ダウンロードすれば通信せずに閲覧できます。

―― 電子書籍はどんな作品がよく読まれているのでしょうか。

渡辺氏 こちらは30代女性のユーザーが多いですね。特に少女マンガが人気です。

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