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こてこてのガラスマとは違う、スマホへの障壁をなくす“最高の”Android「Xperia acro」開発陣に聞く「Xperia acro」(1/2 ページ)

「Xperia arc」と同等の機能にワンセグ、FeliCa、赤外線通信という日本向け機能を搭載し、隙のないモデルに仕上がった「Xperia acro」。arcと双璧を成すacroへのこだわりとは。日本市場、そしてスマートフォンに対するソニー・エリクソンの考えとは。

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 最薄部8.7ミリのスリムボディにAndroid 2.3を搭載した先進的なスマートフォン「Xperia arc SO-01C」が発売されてから約3カ月、その派生モデルとなる「Xperia acro」がNTTドコモとKDDIから発売された。Xperia acroは日本市場向けに開発され、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信という日本ならではの機能やサービスに対応しているのが大きな特徴。モバイルブラビアエンジン対応の4.2インチ液晶や裏面照射型CMOSセンサー搭載の810万画素カメラなど、arcの機能もしっかり継承している。

 ドコモ向けには「Xperia acro SO-02C」、au向けには「Xperia acro IS11S」として発売されたXperia acroは、どのようなコンセプトで開発されたのだろうか。ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの開発陣に話を聞いた。

photophoto ドコモとau向けに開発されたソニー・エリクソンのAndroid搭載スマートフォン「Xperia acro」
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左からソフトウェア担当の新田氏、デザイン担当の兼田氏と金田氏、商品企画担当の安達氏

スマホ乗り換えの障壁をなくしたい

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安達氏

 これまで日本で投入してきたXperiaシリーズ「Xperia SO-01B」とXperia arc SO-01Cのベースはグローバルモデル。ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信といった日本向けの機能は搭載しなかったが、「非常に好評いただきました。Xperiaにはスマートフォンという意識はありませんでしたが、スマートフォンのマーケットをけん引できたと自負しています」と商品企画の安達氏は振り返る。ただ、SO-01B発売後に日本向け機能に対する要望も多く挙がっていたので、1年後にユーザー層が拡大することを見据えて、arcと並行してacroの開発にも着手したという。

 「1人でも多くの方にXperiaの世界観、Androidが持つWebとの親和性を体感いただけるよう、日本向けの機能を付加しました。arcとacro、どちらが優れているという考えは根本的にはありません。お客様が求めている機能に応じてacroとarcを選んでいただけたらと思います。今の時点で『arcが一番』と思っていただいてもうれしいです」と安達氏は話す。とはいえ、商品名の「acro」はギリシャ語で「最高の」「頂点」を意味する。「マーケティングとして訴求するときはそういう表現になります。フィーチャーフォン(これまでのケータイ)からスマートフォンへ乗り換える際の障壁を除ければ、その人にとって最高の端末になるのではと思います」(安達氏)

 SO-01BとXperia arcはグローバルモデルから大きく手を加えなかったが、Xperia acroでは、なぜここまで大きなカスタマイズを施したのか。それは日本が開発拠点の1つであることに加え、同社が日本市場を重要視していることにほかならない。「過去の実績や現在の継続性を含めて、日本は重要だと位置付けています。他の地域の効率や共通性、ビジネスのプライオリティやバランスで商品展開は変わってきますが、(HTCやSamsung電子など)他のグローバルメーカーよりは、日本市場への思い入れは強いのではないでしょうか。ただ、商品のカスタマイズに慣れたメーカーなら、(日本向け機能を)今後取り込んでくる可能性があることは意識すべきだと思っています」(安達氏)

 一方で、「日本メーカーがやっている、こてこてのカスタマイズをフルスイングですべきなのかは慎重に考える必要があります」と安達氏が話すように、グローバルと日本のバランスをどのように取っていくかは難しい問題といえそうだ。

SNS連携機能も強化

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ワンタッチで利用できる赤外線通信ウィジェット

 Xperia acroの特徴的な機能についてもみていこう。

 ワンセグは録画機能に対応していないが、ソフトウェア担当の新田氏によると、これは開発スケジュールの問題で実現できなかったという。アップデートで追加してほしいところだが、「今のところそのめどは立っていない」(新田氏)とのこと。電子番組表の「Gガイド番組表」からワンセグを起動、視聴予約をするといった連動機能については検討中で、「録画よりは現実味がある」とのことなので期待したい。

 赤外線通信については、自分の連絡先の送信と、データの受信をワンタッチで行える独自のウィジェットを用意した。連絡先だけでなく、画像、動画、オーディオファイルの送受信も可能だ。「ウィジェットについては、赤外線は自分の連絡先を送る、相手のデータを受け取るといった使い方がほとんどなので搭載しました。(送受信可能なデータは)どこまで仕様を実現するかは迷いましたが、ユーザーが実際に使用するケースはカバーできたのではと思います」(新田氏)

 アドレス帳、カレンダー、ギャラリー、ミュージックプレーヤーなどをFacebookと連携させたり、友人がYouTubeなどからFacebookにおすすめ投稿した動画をまとめた「メディア検索」アプリを利用したりできる「Facebook Inside」も実装した。「SNS連携の強化は訴求ポイントの1つです。弊社は海外メインで展開していることもあり、『Satio』や『Vivaz』など、Symbianを採用したモデルを開発していたときからFacebookとの連携に力を入れてきました。日本でも盛り上がってきましたね」(新田氏)

 メール、Twitter、Facebookなどの更新情報を時系列で一括表示できる「Timescape」については、ソニー・エリクソンがSDKを公開しており、それに基づいて作成されたプラグインアプリを導入することで、Timescapeを拡張できる。日本ユーザーに馴染みがあるところでは、Timescapeでのmixi機能を拡張する「mixi Timescape」や、「Forsquare」の更新情報を閲覧できる「Forsquare Timescape」などが配信されている。

photophotophotophoto 海外のSNS向けを含む、さまざまなTimescapeウィジェットが配信されている(写真=左端)。「Forsquare」もTimescapeで表示可能になった(写真=左中)。Facebookの友人がおすすめしたYouTube動画を閲覧できる「メディア検索」アプリ(写真=右中)。Facebook連携により、Facebookにアップロードしたアルバムがギャラリーに表示される(写真=右端)

実はフラットじゃない(?)ボディ

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兼田氏

 arcとacroはバリエーションモデルではあるが、arcの象徴ともいえる「弓なりのボディ」はacroでは失われている。acroのフラットなボディは、arcユーザーからすると少し物足りないが、デザインの兼田氏によると、今回は「裏面のラウンド感で持ちやすさを追求している」という。acroを手に取ると、arcほどの薄さは感じないが、手になじむ感覚は失われていない。側面にあるシルバーフレームには、あえて幅を均一にせずメリハリをつけて緊張感を与えたという。ソニー・エリクソンが端末デザインのコンセプトに掲げている「Human Curvature(ヒューマンカーバチャー:人間的な曲線)」と「Precision by Tension(プレシジョンバイテンション:緊張感による精密さ)」が今回も受け継がれていることが分かる。

 acroの裏面は一見すると完全にフラットだが、実は中央(Xperiaのロゴ部分)がわずかに突起している。「デザインの意図で、少し張っているほうが造形がきれいに見える」(兼田氏)ためだという。その大きさは1000分の1ミリほどで、肉眼でも分からないほどで、最厚部という数字にも反映されていない。こうしたわずかな味付けからも、デザインへのこだわりが感じられる。ワンセグチューナーやFeliCaチップを搭載したこともあり、厚さはarcの最薄部約8.7ミリから約11.5ミリに増した。「あとコンマ1ミリ小さくしたり、ボディを真っ平らにしたりすることもできたと思いますが、全体の持ち感を重視しました。それでもXperia(厚さ約13.1ミリ)よりは薄くなっています」(安達氏)

photophoto ボディはフラットになったが、裏側は丸みを帯びているので持ちやすい(写真=左)。側面のシルバーフレームは幅を変えてメリハリをつけた(写真=右)
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裏面は中央がわずかに膨らんでいるが、肉眼では分からない

 arcでは、外装フレームとメタルシャーシ(板金)を一体成形することで狭額縁設計ができ、薄型化にも貢献しているが、この手法はacroにも継承されている。「デバイスは基本的に、arcと同じものを使っています」(安達氏)

カラバリ4色のこだわり

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金田氏

 カラーバリエーションについては、ドコモ向けとau向け共通のBlackとWhiteのほか、ドコモオリジナルのAqua、auオリジナルのRubyを用意した。BlackとWhiteはXperiaのSensuous BlackとLuster Whiteと同系色だが、全く同じ色ではない。デザインの金田氏によると、XperiaのSensuous Blackには赤みのある黒、acroのBlackには青みがかかった黒を採用しているという。「初代Xperiaでは温かみを表現しようと赤を加えましたが、acroでは知的でクールな印象を与えようと、青みのあるパールを加えています。

 そんなacroのBlackでイメージしたのは「星空」。空……というと、arcのMidnight Blueは夜中から夜明けをイメージした色。「2011年は自然界の色からインスピレーションを取り入れている」(金田氏)こともあり、arcとacroのカラーはコンセプトが通じている部分もある。

 WhiteもXperiaのLuster Whiteとは手法を変えた。「上質感をさらに出せるよう、上からグラデーションをかけながら繊細な粒子をあしらいました。これは手に取った人だけが分かる美しさです」(金田氏)

 金田氏が「挑戦した色」と話すのが、RubyとAquaだ。ブラック、ホワイト、シルバー系のスマートフォンの中で、こうしたビビッドな色は(文字どおり)異色だ。「地下に眠る宝石が輝く色」をイメージしたというRubyでは蒸着処理を施し、輝度が高くなるようこだわった。「女性に振れすぎず、男性にも合う、強さのあるマゼンタに仕上がりました」と金田氏も自信を見せる。

 鮮やかなブルーが印象的なAquaは、水深によって色が変化する海や水を表現。こちらもグラデーションをかけ、黄みがかった青から赤みがかった青に変化させた。「単純に青色を重ねると、くすんでしまうので、より紫に近い色を重ね、発色が良くなるようにしました」と金田氏は説明する。

photophoto 青みをかけてクールなテイストを出したBlack(写真=左)。「Xperia SO-01B」のSensuous Black(上)とXperia acroのBlack(下)。同じ黒だがテイストが異なる(写真=右)
photophoto グラデーションをかけて鮮やかな色を表現したAqua(写真=左)とRuby(写真=右)

 ケータイのボディカラーというと、キャリアがメーカーに要望を出すケースも珍しくないが、Xperia acroではソニー・エリクソン側が提案をし、そこから大きく変わることなく色が決定したという。「フィーチャーフォンはかなりの数を用意した上で調査して決めることが多いですが、acroの色は弊社の提案ベースです。ソニエリとしての考えを前向きに受け止めていただいて実現しました」(安達氏)

 acroのデザインは日本で行われたが、「形や色も含めてスウェーデンや中国のメンバーとディズカッションしました。開発拠点がたまたま日本だったということです」(兼田氏)。acroは日本発でありながら、グローバルのテイストを色濃く反映したモデルでもあるわけだ。

 「ソニー・エリクソンでは、世界的なトレンドを絶えずウォッチしてデザインに取り入れています。3月11日の東日本大震災後はコミュニケーションのあり方が変わつつあります。こうした世界的なムーブメントをすべて見た上で、次のトレンドをどのように取り入れるかを社内で議論しています」(金田氏)

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