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インタビュー

ウェザーニュースタッチ 「空でつながる」コンセプトの真相(後編)ソーシャルがインフラとなる日(1/2 ページ)

手軽で詳細な気象情報が入手できることで人気だった「ウェザーニュースタッチ」がリニューアルし、新たに無料会員でもウェザーリポートが送信可能になった。これによって、これまでの数倍のリポートが届くようになり、気象予報はさらに精度が上がるという。ウェザーニューズはこうして集めたデータをどう使うのか。石橋知博氏と西祐一郎氏に聞いた。

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新しくなったウェザーニュースタッチ

 ウェザーニューズが7月30日に実施した、iPhone・Android向けの天気アプリ「ウェザーニュースタッチ」の大幅なリニューアルでは、空の写真を投稿する機能を強化し、大きく前面に押し出した。従来通りの詳細な気象情報も各チャンネルで確認できるが、アプリ立ち上げ時の画面が大きく変わっている。

 この変更の意図については、前編で詳しく聞いた。その狙いは、ウェザーニューズへの情報投稿のハードルを下げることにあった。ウェザーリポートの投稿は、これまで有料会員に限られていたが、無料会員でも投稿できるようにしたことで、リポートを送る人の数は3倍の100万人以上、投稿数は10倍の1日3万件と飛躍的な伸びを見せた。

 だが、こうして集めたデータを、ウェザーニューズはどうしようとしているのか。後編では、アプリをリニューアルしてから、「第2章」と位置づけるウェザーニューズのモバイル戦略はどこへ向かおうとしているのかを、ウェザーニューズ 取締役の石橋知博氏と、システム開発本部長の西祐一郎氏に話を聞いた。

PhotoPhoto ウェザーニューズ 取締役の石橋知博氏と、システム開発本部長の西祐一郎氏

「ざわざわ感」が鍵――8年間の経験を生かすコミュニケーション

 満月、ペルセウス座流星群など、新しいウェザーニュースタッチには、「空」に関するイベントがプッシュ通知で送られてくる。これに答える形で、ユーザーは空の写真やリポートを、アプリを通じてウェザーニューズに返す。そんなコミュニケーションはスマートフォンになってから始まったものではなく、2004年のカメラ付きケータイ向けにスタートしたウェザーリポートに遡ることができる。

 石橋氏は天気、気象というコンテンツの特徴について、次のように語る。

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 「空は、万人に共通しているものです。天気というコンテンツは、知れば知るほど損しない対象であり、広く、浅く展開しているものでもあります。もともと、テレビの前にいなくても、いつでもケータイで見られるという点で、天気はモバイルとの特性が高いコンテンツでした。そして同時に、天気予報アプリは世の中に星の数ほどあります。天気がいつでも手軽に見られればいいという、モバイルでの根本的なニーズに応えつつ、ウェザーニューズとして、どのように特徴付けていくのか、考えていく必要があります」(石橋氏)

 そのキーワードとなるのが、コミュニケーションとビッグデータだ。

 ウェザーリポーターによって気象情報を双方向化する取り組みは、ゲリラ雷雨の分析や桜前線の実測など、これまで気象庁が出してきた情報よりも高い精度での観測を可能にしつつある。これは、気象予報士とサービス運営を行うスタッフが一体となって、8年間に渡ってコミュニティ運営をしてきたノウハウによって支えられている。

 特に、レーダーなどでは捕捉しきれない局地予報については、ウェザーリポートを分析することで可能になっているという。例えばウェザーリポートでは雨を「ぱらぱら」「ぽつぽつ」「ゴー」といった雨音で報告することができる。レーダーによるデータや実測値が上がってきていなくても、同じようなエリア、例えば山の北側斜面といった局地的な場所で同じリポートがいくつか挙がってくると、周辺のエリアに注意を促すことができるようになる。

 こうしたトレンドを経験しながら情報をユーザーからもらい、その情報をユーザーにフィードバックするプロセスを重ねていくことで、トレンドから気象の予測に結びつけることができるようになる。これを石橋氏は「ざわざわしている場所に、必ず気象イベントがある」と表現する。「ざわざわする」というのは、前述の“ウェザーリポートが増える状況”を表現したもの。必ずしも何か異変を感じたというリポートでなくても、いつもと違うことが起きている、あるいは起きつつあるエリアでは、リポートが増える傾向があるという。そうしたざわざわしている場所にさらにリポートを促すことで、よりたくさんの分析に役立つ情報が集まるようになる。

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