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スペックだけじゃない――“ひと目惚れ”スマホ「HTC J butterfly」で目指すもの海外から嫉妬の嵐?(1/2 ページ)

「米国や欧州でも発売してほしい」――そんな声が聞こえるほど注目を集めているHTCの新型スマートフォン「HTC J butterfly」。5インチフルHD液晶やクアッドコアCPUなどスペックの高さが注目されやすいが、HTCが訴求したいのはスペックだけではないという。

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 HTC Nipponが11月20日、12月上旬の発売を予定しているauスマートフォン「HTC J butterfly HTL21」のプレスイベントを開催。HTC CEOのピーター・チョウ(Peter Chou)氏、HTC CPO(最高商品責任者)の小寺康司氏、HTC Nippon代表取締役社長の村井良二氏が、KDDIとの協業やHTC J butterflyの魅力について語った。

photophoto 「HTC J butterfly HTL21」。ボディカラーはブラック、レッド、ホワイトの3色

KDDIとのパートナーシップは今後も継続していく――チョウ氏

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ピーター・チョウ氏

 「ひとめ惚れの予感です。気持ちよすぎるHTC」というキャッチコピーが印象的なHTC J butterflyは、最先端の技術を結集させたスマートフォンと言える。フルHD(1080×1920ピクセル)表示対応の5インチTFT液晶、クアッドコアCPU、2GバイトRAM、Android 4.1、2020mAhバッテリーを備え、下り最大75Mbpsの4G LTEにも対応。おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線通信、防水(IPX5)といった日本仕様もきっちり押さえ、隙のないモデルに仕上がっている。

 HTC J butterflyの前モデルである「HTC J ISW13HT」は、HTCが1カ国のために初めて開発し、日本で求められるデザインや機能を盛り込んだ。その結果、日本では「au端末における顧客満足度調査で1位を獲得した」(チョウ氏)ほどの人気機種となった。チョウ氏も「田中さんが日本人デザイナーを派遣してくれ、グローバルのチームで一緒になってHTC Jを開発した。(HTC Jの)パフォーマンスははるかに期待を上回るものだった。HTC Jが日本でここまでヒットしたことにはとても驚いた。本当に報われたと思った」と喜びを話す。日本での好調を受け、HTC Jは台湾と香港へ“逆輸入”する形で発売され、「発売日には2カ国あわせて約1万台が売れた」(HTC関係者)など、海外でも人気を博した。2代目の“J”であるHTC J butterflyは、HTC JのDNAを継承しながら、機能や使い勝手にさらに磨きをかけ、「これこそが私の欲しいスマートフォンだ」とチョウ氏が言うほどの自信作となった。

photophoto HTC Jはワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信を除いた形で台湾と香港でも9月に発売された。写真は9月下旬に台湾、台北市の携帯ショップで販売されていたHTC Jの様子。とある店舗ではすでに売り切れだった。HTC Jアンバサダーの乃木坂46のポスターや販促グッズも多数見られた

 HTC Jの開発は、KDDIの田中孝司社長がチョウ氏に話を持ちかけてスタートしたことで知られるが、今回のHTC J butterflyもKDDIとHTCの協業で生まれたものだ。イベントでは田中社長を招いてのトークセッションを実施し、チョウ氏と田中氏が両社のパートナーシップについて語った。まず台湾や香港でもHTC Jが成功した理由を聞かれると、チョウ氏は「素晴らしいカメラやBeats Audioなど、最先端の技術を提供していること」だと答える。加えて、HTC Nipponの村井社長やKDDIのサポートがあったからこそ、魅力ある製品を作れたとした。

 田中氏は「お客さんの“ウォンツ”を届けることが我々の使命だと思っている」と力を込める。「少し前まではマーケットを横に切って、ハイエンド、ミドルエンド、ローエンドのお客さんで分けて製品を作ってきたが、だんだん変わってきているんじゃないかと。いかにお客さんが次に欲しい物を届けるか。ウォンツの話だと思っている。ジョイントベンチャーでHTC Jを作って成功した。成功の秘訣は私がオネスト(正直)で、それにピーターが応えてくれたこと」と田中氏は話し、KDDIとHTCの相乗効果が発揮されたことを強調した。

photophoto HTC J butterflyを手にするチョウ氏(写真=左)。KDDIの田中孝司氏(写真=右)
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チョウ氏のことを「ピーター」と呼ぶ田中氏。「ピーターは日本にいるときしかネクタイをしないそう。ちょっとネクタイの締め方をよく分かってませんけど(笑)」と話し、仲睦まじい様子だった。確かにMobile World Congress 2012の発表会ではチョウ氏はネクタイを着用していなかった

 HTCはスマートフォン専業メーカーであり、「LTEやWiMAXスマートフォンの初号機を発売し、通信業界をけん引してきたスマートフォンのイノベーター(革新者)」(チョウ氏)との自負がある。その一方で、KDDIとパートナーシップを組むことで、さらにワンランク上の製品を開発できると考えるようになったという。「お客様がさらに何を欲しているのかを考えていく。日本は期待値や品質基準の高い特殊な市場といえるので、それを達成したい」とチョウ氏は意気込む。そのためにも「KDDIとのパートナーシップを今後も継続していく」考えだ。

 田中氏は「(HTCとKDDIが)手を握ってこのプロダクトが出ましたというのではダメだと思っている」と話す。「一歩一歩、階段を上るように、お客さんのニーズに合わせて両社が歩んでいかないと、真の意味での成功はやってこないと思っている。HTC Jは確かに成功したが、HTC J butterflyではさらに大きな成功をしたい。でも(成功しても)絶対満足してはいけないと常に思っている。HTC J butterflyは本当にすごい製品だけど、これがゴールじゃない。KDDIはワンタイムでは商売せず、長い期間をかけてパートナーシップを続けていきたい」と今後の展望を話した。「でもピーターは全然信じないで、日本は特殊な市場だと言ってきた。けれどいつのまにか(HTC Jを)台湾や香港でも売っていて、商売がうまいなと(笑)」(田中氏)

 HTC J butterflyの特長についてチョウ氏は「今市場にあるものでは最新で最高のAndroidスマートフォン」だと自信を見せる。「最新のQualcomm製プロセッサーを搭載していてLTEにも対応している。フルHDディスプレイが本当に美しい。薄くて軽く、ディスプレイのエッジは5ミリしかない。手にすると心地よく、ぴったり吸いつく。インカメラには広角レンズを使っており、革新的な体験を提供できる」とアピールした。また、HTC Jから引き続きBeats Audioの高音質エンジンを採用していることにも触れ、「音響効果はこれまでのHTC端末の中でベストだ」とした。田中氏は「もっとシンプルに言うと、日本仕様の入った世界で一番進んだAndroid 4.1スマートフォンだ」と説明。田中氏イチオシの機能がカメラだ。「昨日から(カメラで)遊びまくっているけど、きれいに写りすぎて若い人を撮った方がいいんじゃないかと思うくらい(笑)。このカメラはぜひ使ってほしい」と太鼓判を押した。

アジアの他国にもHTC J butterflyを投入する

 HTC J butterflyは海外からも反響が多いようで、「アメリカやヨーロッパから、HTC J butterflyが欲しいというメールをたくさんもらったが、『これは日本でしか販売しない』と言ったら嫉妬された」(チョウ氏)というほどだ。海外では米Verizon Wirelessが、HTC J butterflyとハードウェアが一部共通している「DROID DNA」というスマートフォンを取り扱っているが、防水など日本向けの機能には対応しない。またカラーバリエーションもDROID DNAとbutterflyでは異なる。小寺氏によると「HTC J butterflyもアジアでの引きが非常に強いので、順次投入していくことを考えている」とのこと。HTCが日本からアジアの他国へ、スマホのトレンドを発信していく流れは今後も続きそうだ。

ディスプレイとインカメラが大きく進化

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HTC CPOの小寺康司氏

 続いて小寺氏が、HTC J butterflyの主な特長を説明した。HTC J butterflyは多彩な機能を搭載しながら厚さ約9.2ミリとスリムだが、これは従来の製品から部品の構造を見直すことで実現した。「通常は液晶、基板、バッテリーの順で積み重ねていくが、HTC J butterflyでは液晶、バッテリー、基板の順にして根本的な商品の設計を変えた」(小寺氏)という。バッテリーは面積を拡張して内蔵型にしたことも、薄型化に貢献している。バッテリーを内蔵させることで利便性が損なわれる部分もあるが、「内蔵型の方が消費電力を抑えられる」(HTC関係者)ようだ。フルHD、440ppiで「パッと見でピクセルが見えない」(小寺氏)ほどの高解像度に加え、IPS液晶を採用することで、上下左右で160度の視野角を持つのも特長。さらに、光の反射を抑え、太陽光の当たる屋外でも見やすくなるよう「光学ラミネーション」で画面をコーティングしている。Corning Gorilla Glassを採用しているので耐久性も高い。

photophoto HTC J butterfly開発チームのキーパーソンが登場するビデオも上映。サイズやデザインへのこだわりが語られた。プロダクトデザイン担当のJohnson氏によると、5インチのフルHDディスプレイを搭載するにあたり、「絶対にサイズを大きくしてはならない」と決めたという(写真=左)。「今回5インチディスプレイを搭載できたのは、画面(タッチパネル)の操作性の向上と携帯性のバランスを徹底的に追求した結果だと思う。特に今回のデザインは、中心ラインから左右にかけて滑らかなラインが形成されているので、女性が片手で持った際に親指がひっかからず、しっかり全体を持つことができる」と語るHTCバイスプレジデントの伊藤泰氏(写真=右)
photophoto 基板やバッテリーの位置を従来から変えることで薄型化に成功した(写真=左)。レッドは角度によって異なる色を見せる。ブラックは“純正ブラック”を目指し、手触りの良いツヤ消し塗装にした。ホワイトには真珠の質感を加え、「パールネックレスのように豪華になった」とシニアCMFデザイナーのYin氏は話す(写真=右)

 HTC Jで“Amazing Camera”と銘打ったカメラ機能は、HTC J butterflyではさらに進化した。画面のどの部分に触れてもシャッターを切れる「全面シャッター」に新たに対応。特に強化したのがインカメラで、約210万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用したことに加え、88度の広角レンズによって複数人での撮影もインカメラで快適に行える。「(インカメラでの撮影は)今までは1人か2人だったが、広角レンズを使うことで4、5人撮れる」(小寺氏)。F2.0の明るいレンズ、最大99枚の連写、動画撮影中に静止画を同時に保存する機能などは継承している。撮影した写真を閲覧できる「ギャラリー」は、イベントや撮影地ごとに写真を表示できるようになった。

photophoto 最大99枚の高速連写や動画撮影中の静止画キャプチャが可能(写真=左)。美肌効果を得られる「ポートレートモード」を搭載(写真=右)
photophoto 撮影中に画面のどの部分を押してもシャッターが切れる(写真=左)。F2.0、88度の広角レンズをインカメラに採用。タイマーで撮れるので、シャッターを切るのに画面をタップして手ブレが起こるのも防げる(写真=右)
photophoto 撮影場所やイベントごとに写真を閲覧できる「ギャラリー」(写真=左)。ワンセグはHTC Jではアンテナが外付けだったが、HTC J butterflyでは内蔵させた(写真=右)
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