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「iPhone 5sも5cも怖くない」──XiaomiがAppleを超える理由山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)

中国「小米科技」の新製品に世界中のユーザーが注目している。中国ではiPhoneのシェアを抜いた(!)小米。え、知らない? 「Xiaomi」というと分かるかな。

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中国を熱くする「紅米」とは?

 ここ数年、中国では多数のメーカーがスマートフォン市場に参入している。中でも2011年から「小米」シリーズを販売する「小米科技」(英語表記の“Xiaomi”というと分かるユーザーも多いだろう)は最も勢いのあるメーカーだ。ハイスペック、かつ、低価格なモデルを毎年発表し、中国のメーカーはもとより、海外のメーカーにとってもその存在は脅威となっている。

 その、Xiaomiが2013年8月1日に発表した新製品「紅米」(Red Rice)が、発表当日の予約販売受付開始からわずか90秒で10万台を売り切った。初日の予約受付台数は合計で350万台。第1ロットの出荷は8月12日から開始して、即日、中国のオークションサイトで2倍以上の値段で取引されている。

中国で最も勢いのあるスマートフォンメーカーの「小米」ことXiaomiが、“1000元以下級”モデルとして投入したのが「紅米」だ

 「紅米」の価格はわずか799元(約1万2600円)。ここ1〜2年、中国のスマートフォンは1000元台で買える低価格品、いわゆる「1000元スマホ」が主流となっている。低価格志向の動きはさらに進んでいて、この半年ほどで1000元以下のモデルも急増している。

 「紅米」はその1000元以下の低価格品市場にXiaomiが参入した“戦略的”モデルだ。プロセッサーは1.5GHzクアッドコアで、ディスプレイはサイズが4.7インチで解像度は720×1280ピクセルのIPSパネル。メインカメラも有効800万画素とスペックは低くない。ボディカラーはモデルの名前が表すように“真紅”と中国人が最も好む色彩を取り入れている。

 紅米は、中国で最大の移動体通信事業者「中国移動」(チャイナモバイル)が独自に採用する3G方式TD-SCDMAに対応するので、実質的に中国移動の専用端末といえる。2013年7月末時点における中国移動の総加入者数は7億45000万で、3Gユーザー数は1億4700万と全体の“まだ”2割弱に過ぎない。残りの約6億人は2Gユーザーで、現在、毎月数百万人規模で次々と3Gに乗り換えている。このような2Gからの乗り換えユーザーにとって、4.7インチの紅米は「大画面なのに持ちやすい」を両立させた手ごろな大きさの製品だ。しかも、799元であれば端末買い取りでも無理せず買うことができる。

 「紅米」は、Xiaomiで初めてTD-SCDMAに対応したモデルだ。Xiaomiはこれまで中国聯通(チャイナユニコム)のW-CDMAや中国電信(チャイナテレコム)のCDMA2000に対応したモデルをリリースしている。2012年の販売台数は約720万台だったが、このうち約7割の500万台が中国移動の回線で利用されている。これは、TD-SCDMAを利用できなくとも、2GのGSM/EDGEとWi-Fi接続だけでXiaomiのスマートフォンを利用しているユーザーが多数いることを示している。また、AppleのiPhoneシリーズがTD-SCDMAに対応していないにも関わらず、多くの中国移動ユーザーが使っているのと同じ状況といえる。

 TD-SCDMA対応スマートフォンが1000元前後のモデルを多数登場しているにもかかわらず、あえてGSMしか利用できず、そして、高額なXiaomiのモデルを使うユーザーが多いということは、それだけXiaomiのブランド力が強力で、しかも、デバイスとしての完成度も高くて使いやすいというユーザーの評価を表している。

わずか2年で「Xiaomi」ブランドが浸透した

 今や中国では多くのユーザーが“小米”を知っている。ユーザーのXiaomiにたいする評価は「先進性」「おしゃれ」「なのに価格が手ごろ」とポジティブな言葉が目立つ。とはいえ、Xiaomiのスマートフォン参入は2011年夏と、わずか2年に過ぎない。この短期間でユーザーへの認知度をここまで高めたのは、製品の高い完成度はもちろんのこと、ブランドのイメージを高めるために大きく注力してきた結果だ。明るい色と大きい文字を多用したXiaomiのWEBページや、シンプルな製品のデザインテイストは、どことなくAppleをイメージさせる。

 だが、AppleとXiaomiには決定的に異なる点がある。それは、製品の販売戦略だ。Xiaomiが最初に投入したスマートフォン「Xiaomi M1」のスペックは、プロセッサーがQualcommの1.5GHzデュアルコアで、ディスプレイがサイズ4インチの解像度480×854、メインカメラは有効800万画素だ。ディスプレイでは、“シャープの高性能品”を採用したことを特にアピールしていた。2011年夏に発表したXiaomi M1の初期ロットは実売価格が1999元(約3万2700円)で、これは、海外大手メーカーの同等スペックモデルと比べて半分だった。そればかりではなく、中国メーカーでもこの価格で同じ性能のモデルは存在しなかった。

Xiaomi M1はカラーバリエーションを増やした「青春版」も登場した(写真=左)。XiaomiのプロモーションセンスはWebページのシンプルなデザインでも分かるようにAppleをほうふつさせる(写真=右)

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