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イー・アクセス版「Nexus 5」の狙い/LG「isai」の開発経緯/シャープスマホの強み石野純也のMobile Eye(10月28日〜11月8日)(1/3 ページ)

今回の連載では端末に焦点を当て、11月1日に発表された「Nexus 5」のイー・アクセス版、KDDIとLGエレクトロニクスが共同開発した「isai」、そしてシャープ冬モデルの狙いについて、解説していきたい。

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 新製品の話題に事欠かなかった10月28日から11月8日の2週間。日本時間の11月1日には、GoogleがAndroid 4.4(KitKat)を搭載したリードデバイス「Nexus 5」を発表。そのわずか数時間後にイー・アクセスが開催した記者会見で、同社がこのモデルを取り扱うことが表明された。端末価格や料金プランについても、発表されている。また、KDDIから発売が予定されている共同開発モデル「isai」についての開発秘話を語るプレスイベントが、11月5日、LGエレクトロニクスによって開催された。ここでは、KDDIの担当者とLGの担当者が、それぞれisaiの魅力を語っている。

 11月7日には、ドコモからシャープ製端末の「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」が発売された。同日、シャープは冬春モデルの発表会を開催。国内ナンバー1のAndroid端末メーカーになる方針も明かされた。今回の連載は、「Nexus 5」「isai」「AQUOS PHONE」の3モデルについて、各社の狙いを解説していく。

イー・アクセスから発売される「Nexus 5」の狙い

 Googleは11月1日(日本時間)に、Nexusシリーズの最新モデル「Nexus 5」を発表した。同日から、Google Playで購入が可能になっている。この発表に合わせ、イー・アクセスも同日記者会見を開き、Nexus 5を取り扱うことを明らかにした。同会見には代表取締役社長のエリック・ガン氏が登壇。Nexus 5を「自分でカスタマイズできる、本当にクールな端末」と絶賛した。

photophotophoto Googleが発売した「Nexus 5」。カラーはブラックとホワイトで、ホワイトはさらっとした質感なのに対し、ブラックはマットな処理が施される。イー・アクセスは15日に発売する
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「Nexus 5」の発表会に“西海岸風”のスタイルで登場したイー・アクセスのエリック・ガン社長

 Nexusシリーズは、Googleが「リードデバイス」として販売する端末のブランドだ。元々は開発者やメーカー向けのリファレンスモデルに近い位置づけだったが、2012年に発売されたNexus 7でブランディングを一新。「Googleのベストな体験をお届けする端末」(Google関係者)という役割を担うようになった。Androidは幅広いメーカーに採用されているが、カスタマイズが自由にでき、OSのユーザーエクスペリエンスが統一されていない。Androidとしてアプリの基本的な互換性は保たれているものの、メーカーの色が濃い端末に仕上げられている。

 また、アップデートもキャリアやメーカーの裁量に委ねられているため、Googleが最新のOSやその上でサービスを提供しようと思っても自由にできない部分がある。一方のNexusシリーズには原則として最新のAndroidがいち早く適用され、UI(ユーザーインタフェース)もOS標準のものが搭載されている。Googleのベストな体験とは、このようなことを指す。

photophotophoto OSには最新のAndroid 4.4が搭載される。現時点で、このバージョンのOSを利用できるのは「Nexus 5」だけだ。4.4から、ウィジェットの配置方法など、UIの一部も変わっている。また、アプリのアイコンもAndroid 4.3以前と比べ、やや大きくなった

 Nexus 5は、このシリーズの最新モデルで、OSにはAndroid 4.4(KitKat)を採用。端末に「Ok Google」と話しかけるだけで起動する音声検索(日本では未対応)や、より最適化されたタスクの切り替え、ネット検索機能を統合したアドレス帳といった各種新機能に対応する。ディスプレイは4.95インチのフルHDで、チップセットも2.26GHz駆動の「Snapdragon 800シリーズ」とベースとなるスペックも高い。Google関係者が「端末で莫大な利益を上げることは考えてない」と言うように、端末の価格は赤字ギリギリの設定で、ハイスペックな端末なのにも関わらず、比較的価格は安い。日本では、16Gバイト版が3万9800円、32Gバイト版が4万4800円となっている。

 イー・アクセスが取り扱うNexus 5も、「端末の仕様はGoogle Playで売られるものと同じで、SIMロックもかけられていない」(ガン氏)。OSのアップデートも、「Googleが主導で行う」(同)方針だ。こうした点をガン氏は「ほかのメーカーの端末は、OSがリリースされてから6〜9カ月カスタマイズの時間がかかる。今、KitKatを使えるのはこの機種だけ」とアピールする。

 特徴の1つである価格の安さも、「赤字に近い」(ガン氏)覚悟でGoogle Playに近づけた。イー・アクセスが販売するNexus 5は、16Gバイト版のみで5万400円。ここに、毎月1680円の割引が付き、通信料から割り引かれる格好だ。いわゆる実質価格は、1万80円となる。また、「一括で購入する人が増えている」(同)という実情を見越して、一括購入時にはキャンペーンを用意。1万600円が店頭で割り引かれ、端末価格は3万9800円となる。これは、キャンペーンながらGoogle Playで販売される16Gバイト版と同額だ。さらに、ドコモとKDDIからMNPでイー・アクセスに移ると、端末価格が2万4800円に割り引かれる。通信料への割引が毎月1680円つくことを考えれば、Google Playで端末だけを購入するよりおトクな価格設定といえるだろう。ガン氏もこの点を強調して、次のように語っている。

 「一番大切なところは料金。大きな問題は端末料金で、(他社は)かなり高くて買いにくい。(中略)一括で端末を購入すると、後からの負担が軽くなる。月々の料金は2515円」

photophoto 端末価格は5万400円で、Google Playで直接Googleよりやや高めだが、一括で購入すると同額の3万9800円に下がる。ドコモやKDDIからのMNPだと、さらに安くなる

 Nexus 5は、ソフトバンク網を利用する「EMOBILE 4G-S」という仕組みで提供され、専用の料金プランを契約できる。料金は2年間適用される「4G-Sスマホ割」と「データ定額特割」に加入すれば月々3880円。ここに、ネット接続料にあたる「EMベーシックパック-S」の315円が加わり、4195円が毎月の支払い額になる。先に3万9800円の端末代を支払ってしまえば、2年間毎月1680円の割引が適用され、2515円で5Gバイトまで通信が使い放題になるというわけだ。

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端末価格と通信費をきっちり分けて、一括の場合と分割の場合、それぞれのトータルコストをきちんと提示した。24カ月使うことを考えると、先に端末を買ってしまう方がおトクだ

 こうした値付けのうまさは、イー・アクセスが得意とするところ。同社が販売するHuawei製スマートフォン「STREAM X(GL07S)」は、端末代と通信費が込みで、月3880円という安価な価格設定が受け、一躍ヒット商品になった。関係者によると、イー・アクセスはこうした料金設定を重視して、価格の安い端末を探していたという。Googleという強いブランドを持ち、ハイスペックながら販売価格は赤字ギリギリのNexusシリーズは、イー・アクセスにとってうってつけの端末だったというわけだ。「GALAXY Nexus」や「Nexus 4」といったかつてのNexusスマートフォンは、価格設定や発売時期のミスもあって十分な存在感を示せていなかった。その意味で、Googleにとっても、イー・アクセスがNexus 5を販売することは大きな前進になりそうだ。

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イー・モバイルショップや家電量販店などに加え、ウィルコムプラザでも販売される。ソフトバンクグループのシナジー効果といえるだろう
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