スマートフォンとモノのつながりが加速する――2015 CESで見えた新しいトレンド:石野純也のMobile Eye(1月5日〜16日)(1/2 ページ)
2015年最初の「Mobile Eye」では、米・ラスベガスで開催された2015 International CESで見えてきたモバイル関連の新しい動向をリポートしたい。スマートフォンの発表は控えめだったが、IoT関連の製品が多く見られた。
毎年恒例の年頭行事ともいえる、世界最大の見本市「2015 International CES」が、米・ラスベガスで開催された。ここでは、1年間のトレンドを占う新製品、新サービスが多数発表される。3月に「Mobile World Congress」を控えているため、モバイル関連はやや体力温存ムードなところもあるが、それでも注目の発表が相次いだ。2015年最初の連載となる今回は、CESから見えてきたスマートフォンの最新動向と、スマートフォンを取り巻くトレンドを解説していきたい。
LG、ASUS、ZTEなどが相次いでスマートフォンを発表
CESでは、韓国のLGエレクトロニクスや、台湾のASUS、中国のZTEが相次いでスマートフォンを発表した。LGエレクトロニクスが披露したのが、湾曲したディスプレイが特徴の「G Flex 2」。日本では、KDDIから発売された「G Flex」の後継機だ。6型の“ファブレット”として位置づけられていた同製品だが、G Flex 2はディスプレイが5.5型とコンパクトになり、代わりに解像度がフルHDに上がった。64ビットのチップセットである「Snapdragon 810」をいち早く搭載したのも、この機種の注目ポイントといえるだろう。
ASUSは、日本でSIMフリー端末として話題を集めている「ZenFone 5」の後継機を発表した。その名は「ZenFone 2」。こちらは、Intelの64ビットCPU「Atom Z3580」などを搭載し、上位モデルはメモリが4Gバイトとなるなど、高いスペックが特徴だ。3Gバイトより上のメモリを扱える、64ビットCPUの特性を生かしたモデルに仕上がっている。価格を抑えた同社の戦略は健在で、ZenFone 2は199ドル(約2万3000円)からと安価に抑えられている。
ただし、ZenFone 2は同一型番にいくつものバリエーションが存在しており、CPU、ディスプレイ、メモリなどのスペックがまちまち。会場で取材した限りでは、説明員によって価格の説明も食い違っていたため、どの構成が199ドルなのかは明確になっていない。ZenFone 5の人気を考えると、後継機も発売される可能性は高そうだが、どのようなスペックになるのかは注意しておいた方がよさそうだ。また、ASUSはZenFone 2の派生モデルである「ZenFone Zoom」も発表した。ZenFone Zoomは光学3倍ズームに対応したカメラ強化型モデル。ベースとなるスペックは、ZenFone 2に近い。
ZTEは米国向けのミッドレンジモデルである「ZTE GRAND X MAX+」を発表している。こちらは、米国のプリペイド市場をターゲットにしたモデル。6型のHDディスプレイを搭載し、1300万画素カメラ、3200mAhのバッテリーとミッドレンジにプラスαのプレミア感を加えたスペックだが、価格は199.99ドル(約2万3000円)に抑えた。コンセプト的には、ZenFoneに近いモデルといえるだろう。
こうしたミッドレンジで価格を200ドル程度に抑えたモデルは、グローバルでのボリュームゾーンになりつつある。ASUSもZTEも、ここにフォーカスした新製品を発表した格好だ。ほかにも、64ビットCPUの採用や、それに伴うメモリの増加など、2015年のスマートフォンの進化を占う傾向を垣間見ることができた。一方で、Samsung Electronicsやソニーは新製品の発表を行わなかった。グローバルで存在感を増しつつあるHuaweiも、CESに合わせたスマートフォンの発表はなく、この分野では巨人が不在だった。
もちろん、冒頭で述べたように、モバイル関連では3月に世界最大のイベントである「Mobile World Congress」が控えている。業績不振を受け、モデル数を絞り込むSamsung Electronicsやソニーが、あえてCESで発表をしなかったのも納得できる話だ。発表があったとはいえ、LGエレクトロニクスのG Flex 2も、「G3」などの本流とは路線が異なる商品。グローバルの大手メーカーは、Mobile World Congressに向け“体力温存”をしている状況だと考えられる。
CESが、フラッグシップモデルを発表するのにふさわしい場ではなくなりつつあるともいえるだろう。成熟化しつつあるスマートフォンは、持っていて当たり前の商品になりつつある。家電やITの次のトレンドを見せる場であるCESでは、そのスマートフォンが控えめになるのも自然な成り行きだ。
「IoT」が大きなテーマに、標準化を目指す動きも加速
例年以上に、CESで大きなテーマとして取り上げられていたのが、IoT(Internet of Things)だ。IoTとは、さまざまな製品がインターネットにつながり、付加価値を生むことで、「モノのインターネット」とも訳される。冷蔵庫、洗濯機、掃除機などの白物家電にはじまり、家の鍵などのホームセキュリティ、果ては電球などまで、幅広い製品がネットに接続することで、今までにない利便性をもたらすというのがIoTだ。広い意味では、スマートフォンと連携するウェアラブル製品もここに含まれる。
こうした製品のハブとなるのが、肌身離さず持ち運ぶスマートフォンというわけだ。実際、CESでは、スマートフォンで各種家電をコントロールするデモを至るところで見かけた。CESはラスベガス中の複数の会場で行われているが、既存の枠組みに収まらない製品を展示する「Sands Expo」の展示会場が拡大していたのも、IoTやウェアラブルの存在感が増した結果の1つだ。こうした動きには、大手メーカーも呼応しており、Samsung Electronicsはブースの中央でIoTを訴求。LGエレクトロニクスもプレスカンファレンスで、IoTに関する取り組みを説明するのに、長い時間を割いた。
とはいえ、1つ1つの製品を個別に制御していくのは、数が増えるほど手間がかかる。その都度アプリをダウンロードして、電球をつけるのはこれ、エアコンの制御はこれとやっていては、かえって不便になり、今までのようにスイッチを押した方が手っ取り早いということにもなりかねない。こうした状況を見越し、IoTの標準をめぐる戦いも表面化している。CESでは、IoTの団体を主導する各社が、自社の存在感をアピールしていた。
早くからこのジャンルに取り組んでいるのが、SnapdragonシリーズでおなじみのQualcomm。同社は「AllJoyn」という規格をオープン化し、「AllSeen Alliance」に幅広いメーカーを取り込んでいる。日本からは、ソニーやシャープ、パナソニックといった大手メーカーが参画。韓国LGエレクトロニクスや、中国TCL、ハイアールなど、幅広いメーカーが加わっている。特徴は、端末同士がWi-FiやBluetoothといった通信レイヤーを問わず、P2Pで通信を行えること。サーバのようなものを設置する必要がなく、手軽に家電を制御できる。最近では、Microsoftもメンバーに加わり、Windows 10でAllJoynをサポートする予定だ。
実際、CESのQualcommブースではタブレットで電球をコントロールしたり、スピーカーから音楽を鳴らしたりといったことを一元的に管理する様子を見られた。同様に、このアライアンスに参画しているLGも、AllJoynでさまざまな製品がつながるデモを行っていた。例えば、テレビに洗濯が終わったことを表示したり、スマートフォンで家の鍵をかけたりといったことが、同じメーカーの製品でなくても容易に行える。
これに対して、Samsung Electronicsは2014年、「SmartThings」というプラットフォームを買収しており、CESではこれをベースにしたデモを行っていた。ほかにも、Intelが主導する「OIC」や、Appleの「ホームキット」などが、IoTの主導権を争う規格といえるだろう。CESでのデモを見る限り、現状では、家電メーカーを多く取り込んでいるAllSeen Allianceが一歩リードしているように見えた。とはいえ、IoTはまだまだ本格的に幕が明けたばかりの分野。製品が増えるに従い、主導権争いも激化しそうだ。
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