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インタビュー

“ガラケー”ではなく“ガラホ”もちょっと違う、新しい携帯電話です――シャープが「AQUOS K」を開発した理由開発陣に聞く(1/3 ページ)

シャープの「AQUOS K SHF31」は、Androidを搭載したことが大きくクローズアップされているが、スマホではなく純然たるケータイ。メーカーとしてはどんなところにこだわって開発したのか。シャープの担当者に聞いた。

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 シャープが「新世代ケータイ」とうたう「AQUOS K SHF31」が、KDDIから発売された。“ガラホ”という言葉も生まれ、発表時から注目を集めてきた端末だが、メーカーとしては、どのような意図で開発したのか。シャープ 通信システム事業本部 マーケティングセンター 副所長兼プロモーション推進部長の河内厳氏、通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 第二商品企画部の濱田実氏、シャープ 通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 第二商品企画部の西郷光輝氏に話を聞いた。

photophoto 「AQUOS K SHF31」。カラーはレッド、ホワイト、ブラック

新しい日本の携帯電話を作りたかった

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シャープの河内氏

―― Android OSを採用したフィーチャーフォンということで非常に注目されているAQUOS Kですが、開発に至った背景はどういったものだったのでしょうか。

河内氏 MM総研の調査によると、2014年12月末の時点でフィーチャーフォンユーザーが6000万件を若干、下回るくらいです。スマートフォンが6500万件くらいなので、約半数の方がまだフィーチャーフォンを使っています。それだけたくさんの利用者がいるにも関わらず、テクノロジー的なイノベーションを進めてきているかと振り返ると、やっていません。必死にスマホの競争をしている面もありますし、ユーザーさんの中にも、今のフィーチャーフォンで十分という方が当然いらっしゃるんですね。我々はそういう方々を「携帯フォロワー層」と認識しています。

 このまま使い続けるのがいいという方と、一方で不満だとおっしゃる方もいます。周りはLINEを使っているけれど自分は仲間に入れなかったり、集合場所の連絡がきたけれど地図を見られなかったりする。本来、携帯電話はネットコミュニケーションをするべきツールなのに、周りの環境が変わったことで、フィーチャーフォンユーザーは置いてきぼりにされています。

 だけど、スマホは怖いとか、使い方をいちいち勉強していられないという年配の方、若い人でもフィーチャーフォンを使っている方がいらっしゃいます。自分の生活スタイルに合ったツールとして安定しているものに対して、それ以上の欲求がなかなか生まれてこないのだと思います。そういった方たちに向けて、仲間はずれにならず、円滑なコニュニケーションが取れるようなものを、フィーチャーフォンの範囲の中で作っていく必要があるだろうと考えました。

 ご存知の通り、今回のAQUOS KはAndroid OSを使っているので、いわゆる“ガラパゴス”ではないんですが、進化の停滞を終わらせる、ガラケー時代を終わらせて、新しいケータイを生み出したい、というくらい思い切った取り組みをしました。新しいフィーチャーフォンの時代を作っていく。大上段に構えると、こういうことです。

 そういう考え方でユーザーの声を拾っていくと、LINEの問題だけではありません。そういったフィーチャーフォンユーザーの端末はぼろぼろなんですね。塗装が剥げて、バッテリーの劣化もひどくなっている。ショップに行くと店員がみんなスマホを勧める。「違う違う、スマホを買いにきたわけじゃない、欲しいのはケータイだ」という話なんです。でもフィーチャーフォンはショップの隅っこに追いやられて、今使っている端末のスペックより劣っているか、まったく変わっていない。いくらなんでもひどいんじゃないか、と。

 また、とにかく片手で使うことに慣れています。スマホでも片手で使えるコンパクトなモデルはありますが、ホールド感が悪くて落とす心配があるので、本当の意味で片手操作ができるのはフィーチャーフォンです。やっぱりテンキーがすごくいいんですね。キーを非常に心地よく使っていて、メールは机の下でキーを見ずに打てます。仕事中でも(笑)。タッチタイプが必須だからという切実な理由でフィーチャーフォンを使っている人もいらっしゃいます。そういう方たちに、店頭で「それだったらこれですよ」と勧められる端末を考えました。彼らが欲しいと思う機種にするためには、新しい時代に対応した機能、特徴を持ったものにしなくてはならないと思った次第です。そうして開発に着手したのが約1年半前です。お待たせしましたという感じなんですが。

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AQUOS Kの幅は約51ミリ。70ミリ前後が多いスマートフォンと比べて格段に細く、片手でも容易に操作できる

―― KDDIの春モデル発表会、御社の商品説明会でメディアにお披露目されましたが、反響はいかがでしたか。

河内氏 大きな反響がありました。それは予想以上だったんですが、伝わり方で少し残念な部分もありました。“ガラケー型スマートフォン”という紹介をされているところが散見されますが、スマートフォンと言ってはダメでしょうと。だって、Google Playに未対応でアプリを勝手にダウンロードできない。スマホの要件としては不完全です。スマホとしてはマイナス面しか見えてこないんです。

 スマホユーザーの方に「新しい折りたたみタイプのスマホ、どうですか」と言っているつもりはまったくありません。AQUOS Kはフィーチャーフォンユーザーさんのために作っているものです。フィーチャーフォンユーザーさんからみたら、液晶がきれい、カメラがすごい、電池も長持ちする、これもできる、あれもできると、プラスなんです。こういう風にみていただきたいのに、立ち位置を変えるとマイナスになる。これには非常に困ったなと思っています。

 今回、モデル名にアルファベットの「K」を使ったのには、カタカタの「ケータイ」から、新しい日本の携帯電話にしていきたいという強い思いを込めています。間違っても“ガラケー”と呼ばれたくはないし、“ガラホ”というのも、ちょっと違うなと思っているんですが、呼び方は最終的にユーザーさんが決めることです。ただ、いずれにしても間違った情報で、そういう呼ばれ方をされたくないな、と正直、思っています。

―― シャープさんは、2011年頃に3キャリアから、折りたたみやスライド型のテンキー付きスマートフォンを開発されています。

河内氏 あれは間違いなくスマホとして作りました。ガラケー型スマホとは、あれらの端末のことをいっています。ユーザーがケータイからスマートフォンに乗り換えていく時期で、乗り換えにいろいろな障害がありました。その中で、キー操作が必要だという声が高かったんですね。そこで、キー操作をするとなると、折りたたみ、あるいはスライダーだろうと。QWERTYキー付きの端末も出しました。当時はああいうアプローチをしました。

―― ただ、大ヒットには至りませんでしたね。

河内氏 あの時代の端末の欠点は、UI(ユーザーインタフェース)を完全一致させることがOS的に難しかったということと、バッテリーの持ちですね。当時のCPU、通信の仕方も含めて、省エネに対する意識がなかったので、実装した瞬間にバッテリーが持たないことが分かっちゃうくらいでした。1日持てばいいという考え方でやりましたが、不満は高かったです。

 要するに、2011年はスマホのアプローチ、今回は新しいケータイのアプローチです。「また同じことになるんじゃないの?」という声もありますが、今は時代が変わっています。一番変わったのはネットの環境です。LINEも含めて、コミュニケーションする上でフィーチャーフォンでは不便になりました。また、フィーチャーフォン向けサイトが、ことごとく停止しています。新しい環境に入ってもらうためには、こういう商品が必要ですし、もちろん、AQUOS Kを買っていただいた方が、次は大画面端末を購入する可能性もあります。しかし、むしろこの形に留まってもらうためにはどうしたらいいか? というスタンスでいます。

3色のカラーバリエごとにディテールを変更

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シャープの濱田氏

―― 端末の特徴や進化点を教えていただけますか。

濱田氏 AQUOS Kは新しいケータイということで、3Gケータイではなく、4G LTEケータイとして商品化しました。

 ポイントは大きく3つあります。1つ目は、4G LTE対応とクアッドコアCPUの搭載で、ネットサービスに親和性が高い環境です。2つ目は、AQUOSとしてのこだわりですが、使用頻度の高いカメラやディスプレイに最新技術を採用しています。3つ目は、Wi-Fiテザリングの対応です。フィーチャーフォンユーザーにも新しい体験を、ということで、Wi-FiテザリングやLINEに対応させました。

 本体は、レッド、ホワイト、ブラックの3色展開です。スポーティなレッド、エレガントなホワイト、フォーマルなブラックというように、色ごとにコンセプトがあり、それに合った柄を付けています。レッドはストライプ柄、ホワイトはメッシュ柄、ブラックはカーボン柄で、普通の塗装ではなかなかできない柄をインモールド成型によって実現しました。サブディスプレイの窓もグラデーションがかかっていますが、これも塗装では難しいものです。

photophotophoto レッド、ホワイト、ブラックの背面はカラーごとに柄を変えている

 フレームの蒸着やカメラのシャッターキーも、カラーごとに色調が異なっていますし、端末を開いたときの見え方にもデザイナーのこだわりがあり、キーのフォントがカラーごとに違います。

photophoto サイドキーの色やテンキーのフォントもカラーごとに変えている

西郷氏 買い替えサイクルがスマホより長いだろうなど、ユーザーの利用シーンを想定して、こだわりを持ってデザインしました。飽きずに長く使っていただけるデザインになっていると思います。

―― 裏面もそれぞれ違うんですね。

濱田氏 金型を変えています。レッドとブラックはディンプル加工を施しましたが、ホワイトは女性寄りのデザインでディンプル加工はしていません。

河内氏 背面にはガラスを使ったりしてデザインを重視する端末もありますが、最近は落とさないようにすることも重視されています。ディンプル加工はすべり止めの効果がけっこうありますね。

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裏面の加工も変えている

―― ところで、ダイヤルキー長押しのショートカットはあるのでしょうか。

西郷氏 キー面には表示できていませんが、「4」がWi-Fi、「6」がBluetooth、「7」がおサイフケータイロック、「9」が赤外線通信を呼び出せます。

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